
「戦略経営者」2007年6月号記事より
靴下や婦人服、子供服などの製造・販売を手がけるナイガイグループ。アパレル界の老舗として、その品質、技術の高さには定評がある。そんな同グループが昨年度から導入したのがTKC連結会計システム『eCA-DRIVER』。その活用法を、同グループの現状、経営戦略などと併せて油利隆文取締役、畑野正志経理部係長に聞いた。
■ビジネスプロセスの見直しで“反転攻勢”へ準備万端――1920(大正9)年の創業以来、永らくアパレル業界で第一線をキープしてこられました。 油利 そもそも当社は、日本人の服装が和装から洋装に切り替わる際、創業者が洋装アイテムのひとつである靴下に目をつけ製造に乗り出したのがスタートです。 靴下は糸を編み込むニットが基本。その技術を利用しながら女性の肌着やセーターなどに業容を拡大していき、現在では子供外衣、婦人外衣、紳士外衣なども手がけています。 今後も「ニット」の技術を生かして商品展開していく姿勢は変わりませんが、ただ現状は厳しいですね。原因のひとつは主力販路である百貨店が低迷傾向であること。そのため現在、販路の見直しも含めビジネスプロセスや商品政策の変革に向けて取り 組んでいる最中です。 ――ここのところ、派手な「打ち手」が続いているようですが。 油利 会社分割や合併、買収、あるいは大規模な組織変革なども行いましたが、これらは従来の当社のおっとりしたイメージとは相容れないかもしれません。 当社の社是には「誠実をもって信頼の輪を広げる」という一節があります。外部の方からは「いい人が多い」とお誉めの言葉をいただくこともあり、それが信頼感を広げる助けになってきたのは事実です。しかし、ややもするとそれは弱点にもなる。おっとりし過ぎて競り負けてしまうわけです。そこをぬぐい去るためにも、全社的な変革への意思が必要です。昨年度で「ナイガイ・リバイバル・プラン」(NRP)が終了し、今年度から新たな中期経営計画をスタートさせましたが、これはその決意表明でもあるのです。 ――実際、NRPでは婦人服事業に改善が見られたようですが。 油利 従来型の百貨店に納めるだけのスタイルから、消費者に販売して初めて売上を立てる「消化取引」のスタイルに変更しました。これによって、売場の商品を当社が自由に動かせるようになり、機動的な在庫活用が可能になった。加えて、商品ブランドも従来の3分の1、5ブランドに縮小し、不採算な売場からは撤退しました。 ――大胆なリストラですね。 油利 まず、膿を出し切り筋肉質にすること。そしてその後はもちろん反転攻勢を目指します。すでに子供服分野で『ダックスリトル』という新ブランドを販売していますし、今年度中には婦人服の新ブランドも立ち上げる予定です。それから、無店舗販売、つまりウェブやテレビなどでの通販にも力を入れていきたい。そのため「ナイガイ・イム」という通販専門会社を会社分割で新規に設立しました。また、3月にウェブショッピングサイト運営の「センティーレワン」を買収したのも、そんな流れの一環です。 ――直営店販売にも力を入れておられるとか。 油利 いわゆるSPAですね。駅ビルへの出店を中心に展開していますが、今後は郊外出店も考えていきます。それから、量販店との取引も今後増やしていきたい。要は、これまでメーンの取引先だった百貨店が頭打ちの状況のなか、他の販路を開拓していくしか、成長の道はないということです。 ■ASPの効率性・機動性を最大限に生かす会計――さて、そのような変革の流れのなかに、TKCの『eCA-DRIVER』導入も位置づけられるのだと思いますが…。 畑野 金融商品取引法による連結グループの4半期決算の義務化(45日以内)が平成20年に迫り、連結会計の効率化・システム化は喫緊の課題でした。そのため、導入に当たっては5社くらいの連結会計システムを並行して検討してたのですが、実は当初、TKCさんのシステムは、その俎上にまったく上っていなかったんですよ(笑)。 ――それがどうして一転して導入の運びに? 畑野 決め手は『eCA-DRIVER』はASP(アプリケーションサービスプロバイダ)サービスが可能であるということでした。 当初ASPは、「決算期になると回線が混んで繋がらない」などの悪いイメージがあって、まったく眼中にありませんでした。ところが、TKC本社でその速さを経験させていただいたらまったく問題がないので驚きましたね。一気に有力候補に浮上です。なにしろASPが可能なのはTKCの製品だけでしたから…。 で、細かく検討してみたのですが、初期費用は他社の3分の1以下だし、2年目以降の管理料を勘案しても、ソフトを購入した場合と比べてトータルでもそう差は出ない。であれば、維持管理の手間がほとんどかからないASPの方がいい。管理部門は人が減ってますので、手間はなるべくかけたくありませんからね。 ――それ以外の理由は? 畑野 重視したのは他社システムとのデータ連携です。どの製品も、この部分はオプションとなっており、TKCの場合はそのオプション料が比較的安かった。それから機能面でいえば、クリックひとつでドリルダウンして仕訳明細などの詳細データが確認できるのも好印象でした。 ――導入時に苦労した点は。 畑野 当社の連結子会社は、昨年度までは14社(現在は10社)ありましたから、その子会社への指導が大変でした。最低限これだけはできるようにとのマニュアルを工夫しながらつくり、我々担当者3人が全国の販社などを回ったわけです。たとえば、連結会計では子会社が決算などの情報が入ったレポーティングパッケージ(RP)を本社に送信する形になりますが、その際の画面上のボタンは、必要ないものはロックし、必要なボタンだけを押せるように工夫しました。結局、押せるボタンは全体の3分の1、10個もなかった。そんな工夫もあって子会社もわりとすんなり理解することができたのだと思います。 ――『eCA-DRIVER』のウリのひとつは、専門のコンサルタントが立ち上げをサポートさせていただくことですが、いかがでしたか。 畑野 原田政利先生には親切にサポートいただき「当社のやり方に合わせたスタイルで」との無理な要望にも十分に応えていただきました。公認会計士という会計の専門家についてもらえれば安心だし、分からないことをメールをしてもすぐに返事がもらえる。この仕組みがあるとないとでは格段の違いだと思います。 ■将来的には連結予実管理、連結月次決算も…――連結会計の具体的手順を教えてください。 畑野 まず、子会社からRPを回収して、決算書や債権債務の情報を確認します。そこに自動修正仕訳を入れ、整合性をチェックした上で精算表をつくります。以前は、そこから改めて連結キャッシュフロー計算書をつくっていたのですが、『eCA-DRIVER』では、精算表が上がった時点でほぼ連結キャッシュフロー計算書ができてしまう。おかげで、まるまる1週間作業が早くなりました。来年には、4半期報告書の45日以内開示が義務化されますが、十分に対応できるという感じがしてます。少なくとも前のままだったら対応できなかったでしょう。 それから、『eCA-DRIVER』には子会社の入力状況がオンラインで確認できる機能があるのですが、これは便利ですね。「入力中」とか「報告中」という状況が一目で分かる。強制回収もできますからね。これもASPのメリットでしょう。 ――子会社とのデータ連携での苦労はありましたか。 畑野 子会社は科目が会社ごとに違いますから、連結上の科目にヒモ付けしてもらうことで、科目を変更せずにデータ連携ができました。ここが子会社の負荷がかなり少なかった大きな理由です。以前は、連結上に必要なデータを別のエクセルファイルで送ってもらっていましたが、それらすべてがRPのなかに含まれている。いまでは、RP提出の期限を過ぎる子会社は皆無です。 ――ところで、今期からTKCの『eConsoliTax』(連結納税システム)『eTaxEffect』(税効果会計システム)も採用されるということですが。 畑野 実は、もともと連結納税システムはTKCさんかなと思っていました。それと、連結納税と連結会計両方のシステムを持っているのはTKCだけなので、「同じ会社にすれば何らかのメリットがあるのでは」という感覚があったのは事実です。 いずれにしても、今後はこれらシステム活用の習熟度を上げていき、決算のさらなる早期化を実現したいと思っています。そして、将来的には連結の予実管理、もっと先には連結月次決算が行える体制を作り上げたい。我々の努力が前提条件ですが、TKCのシステムやサポート体制には、それだけのポテンシャルがあるものと期待しています。 (「戦略経営者」 |