自動車関連物流の大手・バンテックは、子会社を強化して収益力の向上を目指している。そのためのツールとしてTKCの『連結会計システム(CA―DRIVER)』を導入・活用している。東証への上場を視野に入れている同社の財務戦略を、山田敏晴社長(59)と小田順理執行役員に聞いた。
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■自動車部品物流をメーンに業容を拡大
――バンテックさんといえば、MBO(マネジメント・バイ・アウト/経営陣による買収)で成功した企業として知られていますね。
山田: バンテックは、もともと日産自動車の物流子会社としてやってきました。が、例のカルロス・ゴーン社長による「リバイバルプラン」が打ち出されたことで重大な岐路に立たされました。それは日産さんが保有する子会社(約1400社)の株式のうち、4社を除きすべて売却するというものでした。当時、日産は当社の約70%の株式を保有していましたので、それが国内外の物流会社、あるいは投資会社などに売却されたら一大事です。当社のアイデンティティが失われ、雇用の問題も起こります。そこで2001年に奥野信亮会長(当時社長)が旗振り役になり、経営陣が日産から株式を買い取り、独立することにしたのです。
――役員の方は1人当たり平均3000万円を出したそうですね。
山田: ええ(笑)。MBOに必要な買収資金は全部で約150億円でしたので、当然、我々の拠出額だけでは足りませんから、イギリスの「スリーアイ」(昨年8月同社はバンテック保有株をみずほキャピタルパートナーズに売却)という投資会社に協力をお願いするとともに、銀行借入も行いました。
――MBO後も日産さんとは取引されているのですか。
山田: もちろん取引しています。2004年3月期の連結ベースの売上高は840億円で、うち自動車部品物流が70%で、残りをノンオート部門が占めています。自動車関連の比率は以前と変わらないのですが、日産以外の仕事が若干増えてきています。 日産の物流のやり方は独特で、部品メーカーにデリバリーを任せず、自分たちが取りに行く「ミルクラン」という方法をとっています。これは乳業メーカーが酪農家を順番に回って牛乳を集めていく方法に似ていることから、この名前がつけられたといわれます。海外(GMやフォード等)ではミルクラン方式をとる企業はかなりあるのですが、日本で定着させたのは日産です。例えばバンテックが日産に代わって、A、B、C社にミルクランして部品を調達し、日産の生産ラインに供給したとします。この場合、商流(部品代)はA、B、C社が日産に請求し、物流費は当社が日産に請求します。これに対し従来型の、部品メーカーが配送する場合は物流費込みで部品代を請求するのが普通なので、輸送コストがいくらなのか見えにくいわけです。また、ミルクランの方が複数の部品メーカーを効率よく回ることができるため、自動車メーカーにとって全体の輸送コストを削減できるという利点もあります。
今でも、このミルクランをやらさせていただいているわけですが、当然、そこには同業他社との厳しい受注競争があります。常に相見積を取られ、「バンテックのは高いか安いか」などと比べられています。
このように当社が得意としている領域はどちらかといえば、小口配送より、工場から物流センター、もしくは工場間の長距離輸送です。現在の保有車両(10トン車)は1200台、庸車は2300台で毎日3500台のクルマを動かしています。
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■企業価値を高めるため連結経営に乗り出す
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――昨年3月にTKCの『CA―DRIVER』を導入されたと聞いています。
小田: MBOを行ったあと企業価値を高めていくにあたり、営業力強化や原価低減などの“手”を繰り出しましたが、その一つに「連結会計」の導入があります。経済のグローバル化に対応する、あるいは今後株式を上場するには連結会計が必要不可欠だからです。本体だけでなく、子会社を含めた形で「今期いくら利益を上げたのか」を正確に把握できなければ次の一手もみえてきません。
そこで、まず2002年4月に管理連結の『ハイペリオン』というシステムを導入し、今回制度連結システムとして『CA―DRIVER』を導入したわけです。制度連結とは簡単にいえば、証券取引法などに準拠した有価証券報告書を作成することです。この分野では、TKCさんの『CA―DRIVER』が最も優れているといわれていますし、また公認会計士の森木隆裕先生の推薦もありましたので導入を決めました。
――子会社は現在どれくらいあるのですか。
山田: 連結子会社は16社です(うち3社は池田運輸の連結子会社/バンテックの孫会社にあたる)。子会社を機能別に分けると、(1)陸運、(2)梱包、(3)輸出入、(4)その他、の4つで、それらが『CA―DRIVER』における「セグメント」にもなっています。(1)は「バンテック首都圏ロジ」「バンテック東日本ロジ」「池田運輸」など、(2)は倉庫内の作業等を行う「バンテックテクノサービス」です。海外子会社は米国、欧州、中国に四社あります。MBOを行う前の連結ベースの営業利益は2億円だったのですが、それが5億円、10億円、20億円と伸びていき、前期は30億円に達しました。30億円のうち、6億円強が子会社によるものです。
――連結決算業務の流れを教えてください。
小田: 月次ベースでは『ハイペリオン』を使っていて、中間決算と本決算のとき『CA―DRIVER』を活用しています。制度連結する際、まず勘定科目に関しては親会社のバンテックの科目を「連結統一科目」にしています。次に、子会社の財務データを集めるにあたっては〈レポーティング・パッケージ〉で行っています。つまり、子会社ごとに〈レポーティング・パッケージ〉に売上高や営業利益などの数値を入力して親会社にメールで送り、それをバンテックがとりまとめ、親子間の取引を相殺したうえで連結損益計算書、連結貸借対照表、連結キャッシュ・フロー計算書などを作成しています。『CA―DRIVER』のよさは、取引データさえ入力すれば、この煩雑な連結修正仕訳を自動生成してくれることです。連結決算業務の効率化をはかることができ、非常に役立っていますね。
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■ 「フリーキャッシュフロー」をチェックして戦略的に使う
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――御社のように未上場企業でありながら、連結決算を行い、投資会社などにディスクローズしているケースはまだ少ないとみられますが……。
山田: 当社の最終的な「出口戦略」は東証に上場することです。だから今のうちに証券取引法に準拠した制度連結ができる体制にしておこうと考えたわけです。ただ最近では中小企業でも中国などに海外子会社を持つケースが増えてきていますので、未上場企業でもグループ全体で業績を正確に把握できる仕組みにしておいた方がいいと思いますね。そうすれば、海外の取引先やメーンバンクなどに対しグループ全体の現状と方針を具体的に、数字で説明することができますからね。
小田: 連結決算のデータは、グループ各社にも公開しています。国内の子会社に対しては毎月1回「グループ社長会」を開いており、海外の場合はテレビ電話会議を用いてヒアリングしています。どの子会社が営業利益を伸ばしているかなどがわかれば、互いに刺激を受けます。実は、ここ二年間は海外子会社の収益拡大がめざましいんですよ(笑)。
――とくにどういう帳表をみておられますか。
小田: 連結キャッシュ・フロー計算書ですね。いわゆる「フリーキャッシュフロー」をチェックしています。これは「営業活動によるキャッシュフロー」と「投資活動によるキャッシュフロー」の合計額で、会社の価値を表しています。バンテックグループが半期および一年間事業活動して獲得したキャッシュのうち、自由に使うことができるお金です。この動きをチェックして戦略的に投資したり、借入金の返済にあててきました。MBOを行う際、約80億円の借り入れを行ったのですが、この9月でゼロになりました。
――最後に今後の事業方針をお聞かせください。
山田: 物流業界は周知のとおり過当競争の時代を迎えており、その数は約6万社あるといわれています。そのなかで勝ち残り、エクセレントカンパニーになっていくには、トップ10に入らなければダメだと考えています。それは売上高(連結)ベースでいえば2000億円、営業利益率は7〜8%の達成を指します。そのためには、何よりもヒトに投資して、付加価値の高いビジネススタイルに常に革新していかなければならないと思っています。
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(「戦略経営者」 2004年11月号より転載) |