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一昔前に比べて、確かに女性の元気さが目立つようになった。積極的に社会参画を試みる意欲ある女性が増えたことが理由の一つだが、まだまだ、企業側が女性の能力を十分に活用しきれていないのも事実。日興フィナンシャル・インテリジェンスのCSR調査室で企業の女性活用について研究する高村静、佐々木隆文両シニアアナリストに話を聞いた。
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■女性管理職比率と利益率に見られる 正の相関関係
――久しく「女性の時代」といわれ続けていますが、働く女性の状況を細かく見ると意外にも実態は違うようですね。
高村 就職四季報女性版(東洋経済新報社)のデータで見ると、一般事業会社全体では、女性従業員比率が18.3%、女性管理職比率は3.0%に過ぎません。とくに製造業においては女性の活用度が低いという結果が出ています。
――なぜでしょう。
高村 ひとつは「男性は仕事、女性は家庭」という日本人的価値観がやはり大きいと思います。それから仕事の質の問題。いわゆる「一般職」のようにそれほどスキルが必要とされない仕事を、いずれ退職するであろう女性にやらせるというある種の役割分担がなされてきた。さらに三つめは、税制や社会保障制度が上の二つに沿う形で設計されてきたこと。配偶者控除や健康保険・年金の「扶養」に留まるための上限などですね。
佐々木 それと、女性を活用する効果が企業に理解されてなかったことも挙げられると思います。女性の場合、出産・育児支援など付加的な費用がかかる。それをコストととらえるのか人的資本への投資ととらえるのかで対応は大きく違ってきます。とりわけ、アイデアや問題解決能力が必要な業務であればあるほど、経営側は「投資」としての意味合いを強く持つ必要があると思いますね。実際に海外の研究でも、このような業務では男女のバランスが大切であることが示唆されています。
――つまり、女性はコストをかけてでも活用する価値があると。
佐々木 単純な例でいえば、冷蔵庫や洗濯機などの白もの家電なんかは、実際に使うのは女性である場合が多いわけですから、男性よりも女性の方が企画・開発により関わるべきですよね。でも実際には男性の方が多かったりする。
高村 日産自動車が車の購入者にアンケートしたところ、最終的に意思決定するのは6割が女性という結果がでた。これを見てカルロス・ゴーン社長は、女性管理職増加の数値目標をすかさず打ち出しました。また、家を購入する際にも決定権を持っているのは女性の方が多いといわれています。なのに対応するのはなぜか男性ばかり。 私もよく経験するのですが、夫婦で何かを購入する際、相手の営業マンが男性だと、夫の方ばかり見て話すんですね。決定権は私にあるのに…(笑)。
――致命的な勘違いですね。
高村 高度経済成長には画一的な商品を安く供給することが企業の命運を左右しました。ところがいまは付加価値の高いものを少量生産する時代。しかもハードだけではだめで、そこに何らかのソリューションをつけないと差別化ができない。とくに、利益につながりやすいその部分に女性の視点が求められている現実はあると思います。実際、企業の女性従業員比率・女性管理職比率と利益率の間には一定の正の相関関係があるというデータも出ています。
――冒頭の数字に戻りますが、女性管理職の比率が3%というのは極端に低いですね。
佐々木 管理職のなかでも経営陣までいくとこの傾向はより大きくなります。ほとんど女性の取締役はいないといっても過言ではないかもしれないですね。
高村 経営者の意識の低さといいましょうか…。ただ、細かく見ていくと女性の勤続年数は延びてきていて、管理職の数も少しずつではありますが上がってきている。あと、非正規社員を含めて女性のプレゼンスという意味では、必ずしも下がってきているわけではありません。
佐々木 それと、企業内で先駆的なロールモデル(見本)がないというのも、女性を活用し切れない大きな理由の一つではないでしょうか。
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■短期的にはコスト高だが長期的には利益を生む |
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――さて、中小企業の場合、女性をうまく活用するもしないも経営者にかかっています。男性と女性では異なった扱いが必要なのでしょうか。
高村 おそらく「違わなくてはいけない」という考え方を捨てることが最も重要なんだと思います。つまり、同じ教育、平等な昇進機会を与え、評価を公平にするということですね。 日興グループの女性社員を対象に行ったアンケートによると、「女性が働きやすくなるために何が大事か」という意味の設問に対して約9割とダントツの支持を集めたのが「公平な評価」でした。産休や育休などほかの有力な項目があったにもかかわらずです。これは、他の企業をヒアリングした際にも同様の結果になりました。
佐々木 その背景にあるのが、採用段階での「総合職」「一般職」の区分けです。90年代、企業は女性の総合職の採用を抑制しましたが、そこがある意味、現在働いている女性の不満になっている部分がある。 あと、結婚で辞める女性は減ってきていますが、出産で辞めるという例はいまだに多い。これは、出産が女性のみのものか男性や企業もシェアするのかという問題と深く関わってきます。シェアすることが当たり前になるなら、育児休暇が男女半々ということも考えられる。そうすれば結果として、女性が働きやすい職場にもなるのでは…。
高村 妊娠して子供ができたら勤めにくくなる職場では、女性の有効活用は期待薄です。繰り返しになりますが、女性を特別に扱うということではなく、男性も女性も同じ土俵で「子供を持ちやすく育てやすい環境」を提供することが、今後の企業の役割になってくるのだと思います。
佐々木 長期的に見れば、女性活用は企業にとってのベネフィットになることを認識すべきです。出産や育児で女性が辞めていくことは、それまで蓄積してきた人的資源が失われていくこと。女性がよく辞めていく会社は、人的資本の開発に積極的でない会社という見方ができるかもしれません。
――つまり、女性を登用すれば利益が上がると…。
高村 そう単純ではありませんが(笑)、少なくとも最近よく言われるダイバーシティ(多様性の受容)による社内活性化は効果として挙げられると思います。外見・内面の違いにとらわれないで、違う視点を持った人たちが意見を言い合うことから、新たな発想や考え方は生まれやすいんですね。ただ、ここで欠かせないのがコミュニケーションです。違う考え方の社員たちがただ漫然と在籍するだけでは生産性は下がってしまう。 いま、女性活用に関して何をすればよいのか分からない中小企業の経営者の方がいるとしたら、なんといってもまずコミュニケーションです。社員の望むことを素直に聞いて反応し、そしてそれを積み上げていけば、おのずと道は開けてくる。大企業より濃密なコミュニケーションが可能な中小企業の方がダイバーシティ効果は得られやすいと思いますよ。
――やはり、トップの役割は大きいですか。
高村 大きいですね。伊藤忠の会長で厚生労働省の「ポジティブアクション推進協議会」のメンバーでもある丹羽宇一郎さんは、女性活用に必要なのは「リーダーシップと男性社員の教育だ」とおっしゃってます。 一例を挙げますと、イトーヨーカ堂はある時代まで女性店長がいませんでした。ところがトップの「鶴の一声」で女性店長をつくった。最初は危惧する向きもあったようですが、その店舗は他と遜色ない実績を上げ、以来、女性店長が続けて登用されるようになったようです。また、松下電器の中村邦夫社長(当時)が就任時、取締役会を開くとグローバル企業であるにもかかわらず日本人、しかも男性ばかりが目について非常に奇妙に感じられたそうです。そこで『女性かがやき本部』(現・女性躍進本部)をつくられ、女性管理職の比率を上げた。いま松下はAV機器や白もの家電が好調ですが、そこには女性の感性が生かされているといわれています。 要するに、経営者がメッセージを発すれば現場の雰囲気は変わるということ。また、成功例をひとつ作れば、それがロールモデル(見本)となって、後が続いていくのです。 その意味では、ロールモデルを外部から持ってくることも有力な手法のひとつでしょう。見本がない状態で自力で育てるのは大変ですからね。外部の有能な人を取締役などに登用すれば、手っ取り早く女性社員にとっての目標をつくることができ、結果的にモチベーションも上がります。
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■カギは労働環境の整備とコミュニケーション
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――そのほか、女性活用に成功した事例を教えてください。
高村 教育・介護関連事業を手広く行っているA社は、女性従業員比率(57%)、女性役職者比率(32.3%)が高く男女間の勤続年数の差も小さい企業。積極的に女性活用を進め、また成功している会社といえます。 A社が、まだ地方の中小企業で知名度もなかった時代に、労働力のかなりの部分を女性に頼っていました。男性の採用が困難だったんですね。ですから女性の比率はもともと高かった。ところが、やはりどうしても辞める方が多くてスキルの蓄積が進まない。そこで当時の経営陣は、まず能力開発の支援策を実施しました。が、これはあまり効果がなかった。次に手がけたのがいわゆる「ワークライフバランス」でした。
――ワークライフバランスとは?
高村 男性も女性も仕事と家庭生活を両立できるような企業風土をつくる取り組みのことです。つまり、出産、育児、介護など従業員の負担を軽減するような支援策をA社も実践したのです。1980年代中頃のことです。
――具体的には?
高村 出産休暇を8週間から6ヵ月と大幅に延長しました。また、その後、休職から復職に至るプロセスを複数設定した「リターン制度」を導入。育児休業期間も大幅に延長されました。このほかにも、主たる養育者がいる場合でも育児休職を認めたり、短時間勤務制度の制限期間を延長したりと、とても積極的にワークライフバランスに取り組まれています。
――これら施策によってどのような効果が現れたのでしょう。
高村 育児休業からの復職率は86年にはゼロだったものが、95年には80%に達しています。また、勤続年数も飛躍的に延び、当然のことながら女性管理職も急増しました。 A社は教育や介護事業を手がけているので、まさに育児や介護で得た経験をそのまま商品やサービスの企画に活かすことができます。つまり、女性社員シェアの高いことが、A社の商品の競争力の高さを担保しているともいえると思います。
――結局、働く環境の整備とコミュニケーションが女性活用のカギといえそうですね。
高村 おっしゃる通りです。たとえば事務機器メーカーのB社は、働く女性の環境整備には早くから取り組んできた企業ですが、加えて近年はコミュニケーションに非常に気をつかっています。 この会社では人事部を中心に「ジェンダーフリーハンドブック」をつくり管理職に配布。その上で管理職と一般職の双方にアンケートをとると、上司がジェンダーフリーを意識した行動(ポジティブアクション)をとると女性のモチベーションが大きく高まるだけでなく、男性従業員にも同様の傾向が確認されました。さらに、「何をしたらよいか分からない」という上司の声に応える形でハンドブックには行動指針が分かりやすく示されています。このように、制度というハード面だけでなく、利用に関するソフト面の整備を地道に続けることも大事だと思います。
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■家庭が変わらなければ企業も変わらない
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――今後、企業の女性活用はどうなっていくのでしょうか。
高村 価値観が変わってきてるのは確かです。つまり男性は仕事、女性は家庭という考え方が若い人を中心に支持されなくなってきた。だとすれば、企業も変わらざるをえません。
佐々木 各人の価値観を家庭や会社で実行に移せるかどうかでしょう。私も共稼ぎで育児をやっていますが、実体験として、子供が生まれるまえに「育児を半分受け持つよ」というのはいかにも簡単です。ただ実際にやるとなると予想以上にきつい(笑)。言動の一致が問われてきますよね。 家庭での男女の役割の問題と企業の女性活用は密接に関連しています。家庭が変わらなければ企業は変わらないし、企業が変わらなければ家庭は変わりません。つまり、両方が同時に変わらないとうまくいかない。
高村 女性の教育水準も上がってきて、採用段階では男女の差はもはやありません。経営者によっては女性の方が優秀だと断言される方もいらっしゃいます。であるなら、企業としても社会としても活用しなければ損ですよね。
佐々木 それと、平均寿命は女性の方が圧倒的に高いですから、今後の高齢者雇用の重要性を鑑みても、人的投資における「回収期」が女性の方が長いという見方もできなくはない。
高村 価値観に沿った生き方ができる社会が幸福な社会だと思います。性差による不公平に限らず、現在のフリーターやニートの問題も少なからず似たようなミスマッチが根底にあります。人が故なく企業に雇われる機会を奪われることは、長い目でみて大きな社会の損失になることを認識すべきでしょう。
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(インタビュー・構成/本誌・高根文隆) |
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