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不況を反映してクリーニング業界も淘汰が進んでいる。そうしたなか、堅実に業績を上げているのが、京都に五店舗を持つ氏政クリーニングだ。3年前にTKCの『戦略財務情報システム(FX2)』と『継続MAS』を導入、その活用で財務体質の強化に乗り出している。そこで、その戦略的活用法を、同社の氏政保一社長(48)と顧問税理士の今西到氏に聞いた。
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■スピードと品質を武器に固定客を増やす
――氏政さんは、創業60年を誇る京都でも老舗のクリーニング店と聞いています。
氏政: 当社のクリーニング体制は、営業店(直営店)と集配サービスの二本柱からなっています。営業店は西京極本店(クリーニング工場を併設)を中心に半径2キロ以内に5店舗を出店しています。一方、集配サービス(担当者2名)というのは、主に北区、山科区などのエリアを担当し、ご用聞きスタイルで注文をいただくというものです。
実は、20年ほど前に私が父(氏政重保会長)の後を継いだときは、集配業務だけでした。集配サービスの場合は「看板」を掲げて行うわけではないので、どれだけ件数を回っても知名度がつかないという問題があり、年商も1200万円程度が限界でした。そこで、この限界を突破する手段として店舗営業のスタイルに軸足を移すことにしたわけです。本店を中心に放射状に直営店を作っていけば、そのエリア内のシェアを取ることができると思いました。現在の年商はかつての約10倍、1億1000万円です。
――何を武器にしてシェアを取ってきたのですか。
氏政: スピードと品質です。当社では、集荷担当者が毎日2回(午前と午後)店舗を回っており、急ぎの場合であればその日のうちにお渡しすることができます。毛布、布団類でも中一日で渡しています。
営業店には、本店で商品知識、接客などの教育を受けた人(パート)を配置しています。「これはシミ抜きが必要です」とか「漂白処理をした方がいいですよ」など、お預かりした商品一点一点についてアドバイスしています。お客様はいくら料金が安くても、自分の思い入れのある品物についた汚れやシミが取れていなければ、決して満足しません。シミが取れないなら取れない理由を、窓口(受付)の段階できちんと説明すれば納得していただけます。
――クリーニングの仕方にはランドリー(水洗い)と、有機溶剤を使うドライがありますが、御社ではオリジナル洗剤を使って水洗いしているそうですね。
氏政: 昨今、合成洗剤を使うと、肌荒れするとか痒くなるというお客様が増えています。そこで当社ではメーカーとタイアップして、天然の植物油脂から作った洗剤を使用しています。Yシャツなどをこのオリジナル洗剤で洗うと、白さも一段と違います。一方、ドライが適しているのは背広やネクタイ、皮革・毛皮製品などです。当社では、三菱重工名古屋製作所から最先端のドライクリーニング機を購入して洗浄しています。常に低温(5〜10度C)で洗浄するため、色泣きを防ぎ、風合いを保つことができます。京都のクリーニング屋さんで、このドライクリーニング機を持っているのは、現在うちだけです。
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■工場・店舗別の業績を月初にチェックする
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――本業の技(クリーニング)を磨くだけでなく、ここにきて財務体質の強化にも取り組んでいますね。
氏政: 3年前、今西先生に顧問税理士になっていただき、『FX2』を導入しました。実をいえば、先生にみていただく前は、債務超過のような状態でした。以前の税理士さんは手書きで処理していたので、どうしても試算表が出来上がるのが遅かった。例えば9月の業績であれば10月初めにわかっていなければ、次の手が見えてきません。そこで、『FX2』を導入してタイムリーに部門別の業績をチェックできる仕組みに改めました。
今西: 部門別は、9部門に分けて行っています。具体的には「000」が工場部門、「001」から「005」が営業店、「006」と「007」が集配サービス、「008」が無店舗部門です。無店舗というのは、インターネットによる注文と、同業者からの委託クリーニングです。洗浄と仕上げを、個人店から氏政さんが請け負うケースです。
氏政: 工場で働く人(職人2名、パート8名)の賃金や洗剤などのコストは、売上に応じて001から008に配賦しています。また、当社では「会員制」(現在約1万2000名)を採用するとともに、各営業店にはPOSレジを導入しているため、いつどのお客様がどの商品をどれくらい出したかなどがわかります。つまり『FX2』とPOSデータを活用することで、お客様別(A〜Dランク)売上と、商品一点当たりの原価をつかんでいるわけです。
――『継続MAS』で次期の予算を作成し、その数値を『FX2』に登録して予実管理を行っているのでしょうか。
氏政: ええ。営業店別の売上を予想するにあたっては、まず「会員数×一世帯当たりのクリーニング年間支出額(約1万1000円/総務省調べ)」で算出し、それに季節指数を掛けます。仮に春先を一とすれば、閑散期の8、9月は0.5を掛け、より実態に近い形にします。
今西: 予算を作成する手順は今、氏政社長がいったように、最初に全社及び部門ごとの目標売上と目標経常利益を決めてから、変動費と固定費を確定させるというやり方です。具体的には人件費、広告宣伝費(目標売上の5%)をはじめ全部の経費に関して、過去の実績に基づき部門別に算出し、それらの数値を『継続MAS』に実額入力して予算を作成しています。
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原価を割らずに商品ごとの割引率を設定
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――Aランクのお客様は離さず、それでいてB、C、Dの方のランクアップを考えて、売上予算を立てているのですか。
氏政: そうです。Aランクは年間の来店回数が10回以上、Bは4〜9回、Cは1〜3回、Dはここ1、2年ゼロのお客様です。Aランクの売上が会社全体の7〜8割を占めています。誰がAランクなのかは、資料を各店舗に配り、名前と顔を一致させています。
今西: 販促ツールは主にダイレクトメール(DM)と新聞折り込みで、その予算額が目標売上の5%なわけです。DMであればA、B、C、Dのお客様ごとに打ちます。これまでの経験からAランクに1000枚出すと、その回帰率は50%、Bは30%、Cは20%程度ということがわかっています。その結果、キャンペーン期間中の来店者数もだいたい読めます。キャンペーンは各ランクごとに年4回行っており、そのDMを持参すると、料金が割引されるというものです。
氏政: 来店者数が読めれば一人当たり持ってくる点数が3.5〜4点なので、1日にどれくらい出るのかもつかめます。その数が200点以上だと、1人で応対することは難しいので2人体制で臨みます。ところが実際にキャンペーンをやってみたら雨が降り、お客様がほとんどこなかったのに、2人体制のままでやっていたため、その分余計に賃金が増えてしまったということがあります。
今西: パートさんは1店舗に3人いて、通常はローテーションを組んで一人で受け渡しをやります。給与は時間給です。
氏政: つまり『FX2』で部門別の予実管理を行い、毎月、その結果を検証することで、どの店がよかったのか悪かったのかがわかるようになったということです。当社では、毎月第2日曜日に幹部会を開き、前月の問題点を洗い出し、その対策を話し合います。先ほどのケースは、今年6月に「壬生店」で起きた問題です。で、今後の対策としてキャンペーンをやっているときは、集荷担当者がどの店が混んでいるのかいないのかなどの情報を、すぐに私か営業リーダーに連絡して「善後策」を講じることにしました。
――キャンペーンは、どういうタイミングで行っているのですか。
今西: 衣替えの時期は黙っていてもAランクの方はきてくれるので、あえて割引する必要はありません。このときこそDランク及び新規客をターゲットにDMなどを打ち、来店していただくよう仕向けます。逆に閑散期は預かり点数が減るため、頼みの綱のAランクにDMを打って赤字にならないようにするわけです。
――割引率をどの程度にするかが重要になりますね。
氏政: おっしゃる通りです。通常は3割引きでやっていますが、状況によって目玉商品のYシャツやズボンを半額にすることもあります。割引率を高めれば高めるほど来店者数は増えるが、その分利益率は低くなります。だから、本店を工場部門と販売部門に分離して、製造原価を正確につかむことができるようにしたわけです。そして、この製造原価とPOSデータを基に分析すれば、商品一点当たりの原価がわかります。
今西: キャンペーンを行う際、この原価を割らない範囲内で、割引率を設定しているわけです。このため、毎月の巡回監査も、単純で基本的なことかもしれませんが、コスト一つひとつに対して、これは製造原価なのか一般管理費なのか、もしくは原価と管理費に按分しなければならないのかを厳しくチェックしています。この作業を怠ると、氏政さんの生命線ともいえる「商品1点当たりの原価」に狂いが生じます。
氏政: 今後はホームページを充実させてインターネットによる注文を増やす一方、FC制度を導入して多店舗化をはかっていく計画です。こうした戦略を展開することで、3年後には年商2億円の達成を予定しています。
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| (本誌・岩崎敏夫) |
| 会社概要 |
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| ■名 称 |
有限会社氏政クリーニング |
| ■業 種 |
クリーニング業 |
| ■社 長 |
氏政保一 |
| ■設 立 |
1963(昭和38)年5月 |
| ■本 社 |
京都府京都市右京区西京極郡町114 |
| ■T E L |
075-313-1783 |
| ■売上高 |
1億1000万円 |
| ■社員数 |
33名(パート含む) |
| ■URL |
http://www.ujimasa.com
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| ■顧問税理士 |
今西衛税理士事務所
京都府京都市右京区西京極西大丸町72ー2
075-323-0002 |
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