「黒字決算」のための財務戦略――システム事例3
統合型会計情報システム(FX4WebBAS E)ユーザー 
株式会社エム・クルー

社員別の業績管理で連続二桁成長を実現する



 中小工務店をメーン顧客に軽作業請負いを手掛けるエム・クルーは、ここ数年連続2桁成長を遂げている優良企業。今期売上も前期比150%の5億円を見込んでいる。この急成長を支えているのが、TKC『統合型会計情報システム(FX4)』を活用したきめ細かな部門別業績管理だ。前橋靖社長(35)は、社員別に損益計算書までを作成し、迅速な課題把握とその対応に努めている。


作業員のやる気引き出し業務品質向上をはかる 前橋 靖社長(中央)

――軽作業の請負いがメーン事業と聞いています。

前橋: 当社では請負ではなく「コンストラクション事業」と呼んでいます。地域の中小工務店が主な顧客で、内装や配管、塗装などといった建築・土木作業を請け負っています。大工などのように高度な技術を要する仕事は自社の職人に、それ以外の軽作業は当社に外注するというケースが多いですね。中小建設業はバブル崩壊以降厳しい環境下に置かれていますから、こうしたアウトソーシング(外注化)で人件費を削減したいというニーズが高まっていて、お陰様で当社は順調に受注を増やすことができています。

――売上はここ数年連続して2桁成長を遂げていますね。

前橋: 前期は約3億3000万円の売上で、今期(04年3月決算)は5億1000万円を見込んでいます。

――前年比150%以上ですか…。業務請負は規制緩和があったことで注目されている業種ですが、ここまで急伸している企業は少ないと思います。急成長の要因は何でしょう。

前橋: 作業スタッフの質には自信を持っています。人材がいわば商品ですから、差別化のポイントはここにしかないと思っています。

――作業スタッフは正社員ではなくてアルバイトが中心なんですか。

前橋: いいえ、当社は作業スタッフのほとんどと外注契約を結んでいます。こうした外注事業者の登録者数は約1500人で、常時150〜200人が稼働しています。報酬は日払。彼らはフリーターだった人がほとんどなので束縛されたり目標を強要されるのを嫌がるんですね。だから日払い給料にして、「週何日働け」といったことも強制しません。極力気軽に働いてもらえるように、自由なスタイルにしています。そうしないと人が集まらないんです。

――でも、それでは定着させること自体が難しいし、ましてや教育などは不可能に近いと思うのですが…。

前橋: もちろん仕掛けが必要です。当社ではコンストラクション事業のほかに、外注事業者向けの寮の運営を行う「ネットワーク事業」も展開していて、このうちの「レストボックス」と名付けた寮運営が定着率向上策の一環になっています。レストボックスは現在、渋谷、高田馬場、日暮里に3店舗あって、会員制で宿泊料が1泊980円。来期中にはレストボックスを10店舗まで増やす計画でいます。
 住込みであれば、当然、定着率があがり管理はしやすくなります。個々の作業履歴や各種技術の習熟度合いを把握できるので的確なフォローが行える。そうして仕事を通じて成長させていくわけです。
 ほかにも細かな点でいろいろと工夫をしていますが、いずれにしろ本人のやる気を上手く引き出すことで成長を促すようにしています。

――そうしたアイデアはどこから出てくるんですか。

前橋: 実は私は、若い頃プロサーファーを目指していたんです。それに挫折して、無職で食えないから日雇いのバイトをして生活していた。当時は1万円稼いで3000円のカプセルホテルに泊まるという毎日でした。だからフリーターだった人の考え方や行動がだいたい理解できるんですね。もともとこの事業をはじめたのも、役者や歌手になるといった夢を持っている若者の力になりたかったのが、一番の動機だったんです。


部門を細分化することで迅速な課題把握が可能に

――人材=品質ということですから、育成の“場”でもある作業現場の管理が大変重要になりますね。

前橋: 当社では6チーム制で独立採算に近い社内体制をとっています。1チームの陣容はだいたい3人(マネジャー、サブマネジャー、一般)で、彼らには作業スタッフの募集から顧客への営業活動、収益管理までのすべてを任せている。だから、仮に作業スタッフの管理が杜撰で顧客企業に喜ばれるような業務品質が維持できなかった場合、その責任の所在が明確になるんです。
 もちろん何の道具も与えずただ「管理しろ」というだけでは上手く動きませんから、現場の段取りから進捗管理、財務管理までのすべてを少人数でできるような仕組みをITで構築してきました。1000万円以上かけ全部で3つのコンピュータシステムを導入しています。

――そのうちの財務管理を今年2月に導入した『FX4』で行っている。

前橋: 以前は『FX2』を活用していたんですが、社員一人ひとりの損益計算書を出したくて『FX4』にリプレースしたんです。

――個別の社員ごとに業績を管理するのですか。

前橋: そうです。だってどの社員が一番会社に貢献しているか知りたくなりませんか? 当社では個人別の年度予算をつくり、それぞれ予実管理をする体制になっています。

――部門分けはどのように?

前橋: 3階層になっていて、まず2つの事業別、その下にコンストラクション事業ならチーム別、さらに社員個人別。ネットワーク事業のほうはレストボックスなど二系列で、レストボックスのほうは店舗別で管理しています。

――社員別業績管理の具体的な中身を教えてください。

前橋: まずそれぞれに目標売上や使える経費など実行予算を割り振ります。そして前年対比を参考に予算を月別に案分して、年度計画を立てます。計画は個人別、チーム別の両方をつくります。これを踏まえてそれぞれが売上と利益をつくっていくという流れです。
 営業方法とかは、はっきり言ってチームごとにバラバラ。DMを打つチームもあれば、直接現場を回って仕事をとってくるチームもある。マネジャーにほとんどの権限を委譲しているので、個別の具体策はすべて任せているんです。その代わり実績にはシビアで、毎月5日と15日に業績検討会議を開き管理しています。しかも業績と報酬を完全連動させ、3ヵ月ごとに4半期決算賞与を出しています。つまり「社員があげた利益はちゃんと還元しますよ」ということ。結果重視のスタンスですね。一人ひとりが業績に責任を持つわけですから、それに報いてあげるのが当然だと考えています。

――大幅に権限委譲すると不正を誘発しそうで不安になりませんか。

前橋: だから社員別業績管理なんですよ。例えば不正でなくても、勘違いで外注費を払いすぎていたということもありますよね。そうすると原価率にブレが出てくる。原価率を社員ごとに並べて見ればそれが一目瞭然で分かります。財務数値に何らかの異常値があればその原因をすぐに探ることができるから、いままで目が届かなかったところまできちっと管理できるんです。内部牽制上からみても『FX4』は有効なシステムだと思います。

システム間のデータ連携で事務作業を大幅に合理化


――あと、労務費が日払いなので入金と出金のサイトにギャップができますが、『FX4』の資金繰り管理機能についてはどうでしょう。

前橋: 『FX2』よりもさらに細かく資金繰り管理できるのでいいですよね。それとこれは資金繰りに限ったことではないのですが、凄いと思ったのは他のシステムとデータ連携できる点です。例えば資金繰り管理なら、FB(ファームバンキング)の入金情報がダイレクトに『FX4』に入るようになっている。ほかにも、売上が即座に販管システムのデータと同期されるというように相互にシステムを連動できるので、社内の事務作業が大幅に合理化できました。前は3つあるシステムに、担当者が個別に入力していかなければならなかったんです。

――最後に今後の展開を…。

前橋: これからも持続的な発展を実現していくには社員の確保が重要になってきます。作業スタッフはたくさん集められるのに、正社員はなかなか入社してこない。いま一所懸命大学の就職課を回っているんですけど、中小企業なので結構苦戦しています。それで知名度と信用力の向上のために、軽作業で得た利益を活用して何か新しい発想の事業を立ち上げ、なるべく早期の株式公開(IPO)を目指しています。『FX4』を導入したのはその準備という意味もあり、顧問税理士の鈴木信二先生からもIPOを念頭においた財務指導を受けています。
 社会の落ちこぼれだった私がいまこうして会社を経営できているのは、鈴木先生や金融機関など多くの方との出会いがあったから。同じように、いまフリーターをやっている若者にも大きな可能性があると思います。それを手助けしてあげるのが夢なんです。

(神戸SC・広常政夫/本誌・千葉博文)


会社概要

代表者 前橋靖
業 種 他のサービス業
所在地 東京都豊島区南池袋3-8-3クラウンビル2F
TEL 03-3590-2821
売上高 5億円(2004年3月期見込み)
社員数 16名
顧問税理士  鈴木信二


 
CONSULTANT'S EYE
株式公開への準備を様々な形で支援
鈴木信二税理士事務所 副所長 三上義孝
住所東京都新宿西新宿7-22-41NAビル5F 電話03-5332-5121
 株式会社エム・クルーさんが関与先となったのは平成12年。私が担当するようになったのは昨年の8月からです。担当になって最初に驚いたのは、前橋社長の頭の回転の速さでした。斬新なアイデアを次々と出し、硬軟取り混ぜた人心掌握にも非常に長けています。お会いするたびにその優れた人間性と高いリーダシップに間近に触れることができ、私自身が大変刺激を受けています。毎月の巡回監査が楽しみな関与先の一社です。
 また、事務所からの財務助言にもレスポンス良く対応していただけます。特に売上債権回転期間や収益見込みなどは、関心をもってチェックされています。そんな前橋社長はTKCシステムの良き理解者でもあり、今年二月の『FX2』から『FX4』への切り替えも、社長自身の強い希望で行ったものでした。導入の一番の動機は、少数精鋭の若い社員たち個々に目標を設定させ、その努力と成果に報いる人事報酬体系を構築したかったからだそうです。この新しい報酬体系は、早くも運営軌道に乗っています。
 さらに、『FX4』と他社の売掛金管理システムとのデータ連携も順調に進みました。数百社に上る得意先の売掛金回収業務の事務処理が大幅に合理化でき、懸案であった間接部門の効率化を図ることができています。
 来期から同社は、株式公開に向けた取り組みも本格化させていく予定です。当事務所としましても、まずは飛躍のための初年度として『継続MASシステム』を活用した中長期経営計画の策定を支援させていただきます。今後も金融機関や監査法人とのパイプ役など、様々な形で発展のお手伝いをしていければと考えています。