「黒字決算」のための財務戦略――システム事例1
戦略財務情報システム(FX2)ユーザー
株式会社日本冷凍輸送

業務と財務の透明化で経営危機からV字回復



 8年前、深刻な経営不振に陥り、倒産の危機を迎えた日本冷凍輸送。その危機を救ったのが、それ以降経営に当たってきた石井賢司社長(63)佐久間英和専務(57)だ。2人が行ってきた業務、財務両面にわたる改革の履歴は、中小企業立て直しのサンプルケースといえるかもしれない。


本業に経営資源を集中し堅固な社内体制を構築

石井賢司社長(中央)――生鮮食料品の配送を主業務とされているそうですが…。

石井: 東証一部上場の大手食品スーパー本体とその関連会社の配送業務、運行管理、センター業務などがメーン事業になります。つまり、その企業グループの物流部分の中枢を担わせていただいているというわけです。そのほかには、米軍のショッピングセンター(AAFES)の配送業務も請け負っています。

佐久間: まちがっても弾薬は運んでませんよ(笑)。

――2人代表体制になったのは平成8年からだそうですね。

石井: 当社は昭和50年以来、大手スーパーの物流部門の一角を担ってきたわけですが、実は平成8年に乱脈経営から破綻状態に陥りました。その際に、この会社の地主だった私と、そのスーパーの社員だった佐久間が、いわば「再建役」として経営に当たることになったのです。

佐久間: まさに青天の霹靂でした。当時私と石井はある事業構想(水の改質装置開発・後述)を温めており、さあスタートだ…というときの倒産騒ぎ。銀行や取引先は、2人が経営するのなら応援しようと…。もともとそのスーパーで25年間お世話になったこともあり、引き受けざるを得ませんでした。宿命ですかね。

――当時の会社の状況は?

石井: 10億円強の売上高で4億円の債務超過でした。国税には億の単位で滞納があり、手形はジャンプ、ジャンプの状態。まさに「死に体」でした。

――そこから立て直すのは大変な作業だったのではないですか。

佐久間: 幸い安定した取引先をもっており、車は動いていましたから、本業に経営資源を集中し、きっちりと経営すればなんとかなるのでは…との感触はありました。しかしそれには、運送業の「命」ともいえる二つの要素、車とドライバーの品質向上が絶対条件でした。
 そこでまず、当時の車両(100台)はすべて10年超の老朽車でしたから、これを4年計画で総取り替えしました。そのままだと、修繕費などの付帯経費が嵩むし、安全管理上の問題も出てくる。なによりお客様に失礼ですよね。
 それからドライバーへの教育を徹底しました。ただ「荷物を運べばいい」という考え方から、お客様に喜んでもらう仕事をしようじゃないか…という意識改革ですね。

――具体的には。

佐久間: 当時のドライバーはサンダル履きで無帽が当たり前。せめて帽子をかぶってもらおうと、ある時一大決心をして帯帽を提案すると「できっこない」の大合唱です。よし、そんなに反対するならと義務付けてみました(笑)。すると、1ヵ月くらいで定着しましたね。要は経営陣が本気になって、変革しようという意識を示すことだと思います。

石井: ミーティングや研修は徹底的に行いましたね。それから、チーム別に組織化し責任の所在を明らかにしたり、優秀ドライバーは評価に反映したりと、自覚とやる気を促す施策を行いました。

佐久間: とにかく仕事が「見える」体制にしたかったんです。たとえば累積事故や遅刻の回数をはかってデータベース化したり、給与面でも等級制度を導入して管理するようにしました。そうすることで透明な評価が可能になり、頑張った人がそれなりのリターンを得ることができるようになる。以前はそのすべてがドンブリ勘定だったということです。


独自かつ詳細な原価管理で利益を確保する

――そんななか、財務的にも利益体質を構築されてきました。

佐久間: 森脇仁子先生に顧問になっていただき『FX2』を導入したことが大きかったですね。お世辞ではなく、森脇先生と出会わなければ、再建は難しかったかもしれません。

――『FX2』導入の狙いは?

石井: 部門別管理の実践と、月次損益の細かい分析がしたかったからです。業務面と同じく、財務面でもドンブリ勘定を「目に見える管理」に切り替えていく作業ですね。

――どのような部門分けを?

佐久間: メーン顧客である食品スーパーの配送業務、同社関連会社の惣菜センター(入間・千葉)業務、米軍の「AAFES」、それから管理部門の計5部門に分けています。

――導入の効果は?

佐久間: 部門別の原価管理がきっちりできるようになり、無駄がなくなりましたね。これは実感しています。

森脇顧問税理士: 当社の場合の原価とは、傭車(外注)費、燃料費、修繕費、保険などの車にかかわる費用と、それからドライバーの労務費です。また、総売上から傭車費を引いた金額を純利益として表示するようにし、その下に車両関連の原価がくる仕組みにしています。そうすることで、売上と原価の正確な関連性がより見えるようになりました。

佐久間: 原価のところをきっちり見て、ここに無駄を作らないようにすれば、利益は確実に出てくる。

石井: とくに、ドライバーの人件費を固定費ではなく原価(変動費)と位置づけることで、随分と経費的な改善ができたと思います。当社は、車の稼働率が売上の原点ですから、稼働に比例して人件費が変動する体制が理想。そのため、6〜7割の正社員の比率を、順次3〜4割にまで落としていき、アルバイトでの稼働を増やしました。

乙幡(経理事務担当者): 人件費の管理という意味では、『FX2』の数字をもとに、エクセルで売上と人件費の予算実績を入力した「売上給与推移表」を別に作成して、分析に活用しています。

――車両の管理には『FX2』のオプションである固定資産管理「Aファイル」を使われているとか。

森脇税理士: はい。減価償却は会社の利益やキャッシュを左右しますから、会社側で管理すべきものです。「Aファイル」を使えば10年スパンの減価償却費を即座に把握できますから、それを見ながら余剰のキャッシュを算定し、将来の設備投資や借入計画を立てることができます。


予算と実績をつき合わせ環境の変化に対応

――当初から、『継続MAS』を使って、経営計画を作られていたとか。

細村(取締役経理部長): まず、我々の方で各部門の情報を吸い上げ、大まかな予算の雛形を作ります。それをもとに、森脇先生のところで『継続MAS』を使って、細かいところまで仕上げていただくという感じです。もちろん結果は『FX2』に落とし込み、月次の予実管理につなげていきます。
 それから当社では『FX2』の数字を元にして、独自の「月次損益予算表」を作成しています。これは、科目別の詳細な予算と実績の数字を隣り合わせにして、一目瞭然に達成率が分かるようにしたもの。『FX2』で自動的に作成された数字だけでなく、我々独自に作成した資料を作ることで、より高度な計数管理能力が身に付いたように思います。この資料をもとに、毎月の業績検討会にのぞんでいます。

――業績検討会は毎月行われているのですか。

森脇税理士: 月次監査の後で、役員さんたちを集めて行っています。毎月十日前後には、前月の数字が確定しますから、社長、専務を初め、結果をすでに把握されている状態。そのため細かい部分にまで活発な議論が行われます。

細村: たとえば資金繰りは重要な議題になりますね。当社では、資金調達や車両購入計画などを組み入れた年間の資金繰り表を作成しています。しかしこれは、売上・経費予算から作成しているので、予算達成が大幅にずれると、現実の資金繰りに大きな影響が出てきます。そのため、予算達成率が3%以上ずれた場合、原因を徹底究明し、翌月にはその対策を実施しなければなりません。

佐久間: 業績検討会は軌道修正の機会なんです。環境は刻々と変化しますから、即座に対応していかないと中小企業は持たないですからね。

――今後はいかがでしょう。

石井: 規模は追求しません。堅実でニッチな経営を心がけたいですね。顧客の考え方やオペレーションをよくわきまえて、「なくてはならない会社」だと思ってもらえるような努力が今後も必要なんだと思っています。

佐久間: それと、本業とは別に新規事業として、日本創造エネルギー研究所という会社を立ち上げ、水質改善装置を開発しました。これは冒頭にも述べたように、私と石井を結びつけるきっかけともなった技術で、北海道大学、九州大学、摂南大学との産学協同で実現。すでにあるメーカーにライセンスを供与し産業用・家庭用の「浄活水器」として発売されています。4月には、日本応用物理学会でも正式学術認定論文として掲載されるほど技術的な信頼は高く、将来的に大いに期待しています。

(本誌・高根文隆)


会社概要

代表者 石井賢司
業 種 運送業
本 社 東京都武蔵村山市伊奈平5-87-5
T E L 042-560-0006
年 商 約15億円
社員数 約200名
顧問税理士 森脇仁子


 
CONSULTANT'S EYE
KFSのフルパックで黒字決算に貢献
税理士法人アイ・タックス 所長 森脇仁子
東京都渋谷区神宮前1-10-11 電話03-5410-7533
 日本冷凍輸送株式会社さんには、平成11年から関与させていただいております。
 「お客様の喜びが自分の喜びである」という経営理念のもと、社長と専務が二人三脚で会社の建て直しに必死になっている姿に感動し、会計人としてお役に立とうと決意いたしました。当時の会計は、ある財務ソフトを使っていましたが、売上と利益がいくら、というような簡単な管理だけが行われていました。そこで、数字がタイムリーに把握できること、部門別に業績が把握できること、最終的に部門別予実管理ができることを目標に、平成12年、『FX2』の部門別管理を取り入れました。 経理は、簿記も分からない新人の乙幡さんが担当することになりましたが、細村部長と一緒に今では『FX2』を使いこなしているばかりか、エクセルを使って自在に業績検討会資料を作成しています。
 加えて『PX2』とファームバンキングの導入により事務作業の効率化を図り、固定資産管理(Aファイル)にも挑戦しました。皆さんの向上心の高さに私たちも日々刺激を受けております。『FX2』導入と同時に『継続MAS』も活用しておりますが、初めて経営計画書に書いていただいた経営理念を額に入れて飾って下さったり、とても嬉しかったことが思い出されます。今年は書面添付3年目の表敬状も役員室に飾っていただきました。
 会社一丸となった経営と財務体質改善の結果、安定した黒字決算の実現と、新規事業への進出などの経営革新も行われております。今後ますますの発展に、当事務所も一丸となってお手伝いをさせていただきます。