「黒字決算」のための財務戦略――システム事例2
継続MASユーザー
株式会社侶丹

迅速・正確な業績把握が会社の“道筋”をつくる



 中国をはじめとする海外製品に市場を奪われ、ここ十年来減少し続けてきた中小アパレルメーカー。が、懸命な企業努力で生き残りを果たす企業も数多くある。日永裕章社長(53)率いる株式会社侶丹も、ブランドの一点集中と緻密な財務管理で、厳しい構造不況の波を乗り切った会社のひとつである。


「縮緬」製品に特化し深刻な構造不況を乗り切る 日永社長(右より2人目)

――昭和50年の創業時には、現在の業容とかなり違っていたとか。

日永 もともと父親が、熊本で高級専門店向けの婦人服メーカーをやっていて、福岡にも足がかりをとこの会社を設立しました。当時はアパレル産業の高度成長期で、普通の商いをしていれば儲かった時代。当社もお得意先500店を持ち、ピーク時には年商13億円以上、1
億円の利益を稼ぎ出していました。東京にも支店があり、かなり名の通ったメーカーだったんですよ。

――それがバブル崩壊後、急速に…。

日永 業界に地殻変動が起こったんです。景気の低迷に端を発して大手紡績会社が工場の海外移転を進めるとともに生産量も縮小。さらに服地卸業者のリストラ…これはいまだに続いています。国内婦人服市場は中国製品におされっぱなしで、我々中小メーカーや小売店の力ではどうにもならない。つまり、典型的な構造不況に陥ってしまったわけです。

――結果、中小アパレルメーカーは倒産や廃業が相次いでいます。

日永 従来の手法のままに事業を継続した企業は例外なく潰れていきました。一方、構造不況の波をいち早く察知し、手を打ったところはいまでも生き残っています。

――侶丹の場合、どんな手を打たれたのですか。

日永 当社では、91年のピークから、2年連続で約2億円ずつ年商が落ち込みました。同じことを同じようにやっていたのにです。「これはおかしい」ということで、即座に店舗閉鎖やブランドの縮小に取り組みました。従来と同じ手法ではたち行かないことが分かってきたので、意識的に年商を落とし、体質改善をはかったのです。

――具体的には?

日永 これからの中小メーカーは個性化がポイントだと考えました。独自の商品をどう提供していくか…。また、将来的には現在のユニクロに代表されるような海外製品との戦いになることも予測がつきました。
 もちろん、価格競争に巻き込まれては勝てない。だとすれば、ニッチでオリジナル性の高い「海外製品と戦わなくていい」商品で勝負することが必要になります。

――それが「縮緬」だったと。

日永 縮緬というのは、中国や韓国ではつくれないんですよ。ウールやカシミア、ポリエステルなどの素材は、品質云々は別にしても全部中国でつくることができます。でも縮緬は絶対にできない。
 当社は以前から縮緬製品を扱っていて、常に100%の商品がはけ、粗利も高かった。つまり優良商材だったんですね。であるなら、この素材に生き残りをかけてみようと…。

――ブランドの集約ですね。

日永 5つのブランドを、最終的には縮緬素材の『梢ブランド』だけに完全集約しました。ほぼ一気に変えたので、世間は随分驚きましたが、結果的には大成功だったと思います。それと、苦しみながらも自社工場を維持したことで、中国製品との技術力の違いをより鮮明に示すことができた。これもいまとなっては当社の大きな強みになっています。

――販売方法も大きく変えられたそうですね。

日永 専門店の現状は厳しく、バブル以前のように右から左へ商品を仕入れてはくれません。そこで、専門店に展示会を開催してもらい、そこに我々が商品を貸与。運営をサポートすることで商品を売っていく形の販売手法に切り替えました。そうすれば小売店との「WIN・WINの関係」を構築できますから。現在は150店との取引に絞り込み、年間約400回の『梢ブランド』展示会を開催しています。


キャッシュフローを把握し効率経営を実践する


――財務管理にも非常に熱心に取り組んでおられるとか。

日永 以前は手書きの試算表でしたが、3年半前に黒岩延時先生に顧問になっていただいたのと同時に、TKC『戦略財務情報システム(FX2)』を導入しました。それからですね。財務管理の重要性に目覚めたのは。

――というのは。

日永 迅速かつ正確に財務状況を把握することで、資金繰りが随分楽になりました。以前は随分不自由してたんだなあ…と(笑)。いまではそれこそ毎日のように画面を見ています。主に預金管理と売掛金管理、手形管理の画面。それから経常収入と経常支出、月末資金の有り高が分かる《資金繰り実績表》は欠かさず見ています。これだけ見ていればほぼ完璧です(笑)。経営の舵取りを誤ることはまずありません。
 さらに、《当期決算(着地点)の先行き管理》という機能も便利ですね。変動費をいくらに落として在庫をどれだけ減らして固定費をここまで下げれば経常利益はどこまで上がるか…などといったシミュレーションを暇があればやってます。

黒岩(顧問会計士) 月次決算の確定は翌月1日に…というのが社長のお考えです。とはいえ、棚卸しの関係もあり、実際にはもう少し遅れて4、5日くらいの確定になりますが、それでも非常に早い。だからこそ、毎日、正確な数字を見ることができるわけです。

――具体的な効果は。

日永 以前は、季節要因などもすべて推測で、「この時期にはこれくらいのお金が必要だろう」的な曖昧な資金繰りでした。そのため銀行に余分な運転資金を借りたり、手形を割ったりといったことも頻繁にやらざるを得なかった。ところが、『FX2』導入後は、すべてのキャッシュフローが正確に把握できるので余分なお金を用意しなくていい。また、非常に効率的に資金が回りますから、営業にも好影響を及ぼしています。いまでは場当たり的な運転資金の調達や手形の割引は、ほとんど行わなくて済むようになりました。

毎月の決算予測で恒常的に無駄を排除


――『継続MAS』も有効に活用されているそうですね。

加茂(監査担当)単年度事業計画と予算を『継続MAS』で作成し、『FX2』に落とし込んで予実管理を行っています。また、毎月の監査終了後には『継続MAS』を使い、黒岩所長を交えて1時間くらいかけて様々な決算予測を行っています。

黒岩 予算の数値は「経営者への5つの質問」をとっかかりに、社長を含めた4人の営業担当者がそれぞれ年間の売上計画を立て、それらを積み上げる形で作成しています。

日永 前年比や予算比が明確に把握できるようになり、売上や利益はもちろん、以前だったらまず見逃していただろう細かな経費の異常値も分かりやすくなりました。もちろん、おかしいと思ったものは伝票レベルまでさかのぼってチェックします。

黒岩 日永社長は計数管理に長けておられるので、業績把握をきっちりできる体制を提供しさえすれば、自然と財務面がしっかりしてくる。それと『継続MAS』の浸透のおかげで前方の視界がひらけ、社長と我々が同じ目線で問題点を抽出し、解決策を模索できるようになったことも大きいですね。
 たとえば、TKC経営指標『BAST』の業界平均に比べて、在庫がやや多いことを指摘すると、社長は即座に4000万円分もの在庫を縮小され、財務体質が向上しました。正直そこまで縮小されるとは思わなかった。それもこれも『継続MAS』などのシミュレーション機能で、施策と効果の関係がはっきり目に見えるようになったからでしょう。

――ところで、経営革新支援法の承認を4月に受けられたとか。

日永 マーケティングや販売予測を含めた販売管理システムの構築計画で承認を受けることができました。このプロジェクトはすでに走り始めていて、国民生活金融公庫からの低利子融資も決定しています。

黒岩 ちなみに、侶丹さんでは、3年ほど前に『戦略経営者ローン』も活用されています。申し込みから数日で融資が下りたので驚いたことを覚えています。

――今後の方向性は?

日永 2年後には借金がゼロになる見込みですから、そこを見計らって、新事業に挑戦したいと考えています。これまでは、ブランドを絞り込み、縮小均衡で体質改善に努めてきました。でもかといって、この方向性が未来永劫通用するとは限りません。新たな流れをつかまなければ、将来はない。狙いはファッション性と値頃感のあるミセス向け商品で、すでに構想はでき上がっています。意外とこの分野は空白なんです。
 ともあれ、バブル崩壊以降、苦しみながらもなんとか筋肉質の会社にすることができました。我慢した分、今後の10年は是非「反転攻勢」の時代にしたいですね。

(本誌・高根文隆)


会社概要

名 称 株式会社侶丹
業 種 衣料品製造・販売
社 長 日永裕章
設 立 1975(昭和50)年
本 社 福岡県福岡市東区多の津1-11-6
TEL 092-622-2552
売上高 約3億円
社員数 10名
顧問会計士 黒岩公認会計士事務所
黒岩延時
福岡県福岡市南区向野2-25-25
092-554-8045