「黒字決算」のための財務戦略――システム事例3

統合型会計情報システム(FX4)ユーザー
コンテンツワークス株式会社
利益率の高い事業に傾注して増収増益路線を築く

 インターネットを利用したオンデマンド出版で着実に売上を伸ばしているのが「コンテンツワークス」だ。絶版本などを一冊からでも注文できるサービスが好評を得ている。そこで、同社の荻野明彦社長(43)に商品戦略とTKCの『FX4』を活用した財務戦略を聞いた。

コンテンツワークス株式会社

■ネット利用のオンデマンド出版を展開

――インターネットを利用した「コンテンツサービス」を主力事業にしているそうですね。

荻野 ええ。柱は3つあります。1つは「ブックパーク」、第2は「コミックパーク」、第3は「フォトバック」です。ブックパークは、「会員企業」の代わりにインターネットを利用してオンデマンド出版するというものです。出版社さんや学術論文を扱う研究機関、協会などが会員で、その数は現在42社です。

――つまり、ブックパークをショッピングセンターにたとえると、そのなかにテナントとして42社あるということですか。

荻野 そうです。会員企業さんからみれば、コンテンツ(絶版本や論文などの電子データ)を当社に預け(サーバーに保存し)て製造・販売を委託しているということです。そのタイトル数は約100万件。そのなかでエンドユーザー(消費者)が欲しい本(絶版)を注文すると、当社が外注先のプリントセンターに指示してその本を印刷・製本してもらい、中3日で届けるというビジネスモデルです。オンデマンド出版のため、1冊からでも注文はOKです。あるいは「この論文とこの論文だけ抜き刷りにして合本して欲しい」ということもできます。

――いわゆるロングテール・ビジネスですね。

荻野 発想はそうです。つまり1タイトルを1万冊売るというのではなく、1万タイトルを1冊ずつ売るという発想です。例えば出版社さんの場合、本を永続的に読者にお届けするというのが本来の目的であり、オンデマンドならこれを実現することができます。ただし、「オンデマンドは手間ひまがかかるから……」ということで、当社のシステムを利用していただいているわけです。言い換えれば、ブックパークの収入は、月額のシステム利用料(オンデマンド出版のアウトソーシング代)と購入者からの注文の2本立てです。

――著作権料は、注文があるごとに当該会員企業に1冊あたりいくらという形で支払うわけですね。

荻野 はい。これに対し、コミックパークは、あくまでも当社のネットショップとして運営しているものです。昔読んだ名作マンガとか、古本屋やネットオークションでは手に入りにくいコミック(約5000タイトル)を揃えています。オンデマンド出版のため、1冊からでも注文できます。

 一方、フォトバックは自分(消費者)の持っている写真データを当社サイトにアップロードして、その人独自の写真集を制作し、手元に届けるというサービスです。写真集の大きさは12センチ×12センチで、36ページ。1ページ目にはこの写真、2ページ目にはこの写真……という具合に自分で編集・制作します。写真は縦置き、横置き、見開き掲載などが可能で、余白にタイトルやコメントを書くこともできます。価格は1〜5冊までが1冊につき1890円(送料別)、6〜48冊までが同1680円(同)です。例えば結婚式の模様を自分たちで撮り、オリジナルの写真集にして「出席者」などに配るわけです。

■正確かつタイムリーに経営成績をつかむ

――会社設立時からTKCの『FX4』を導入・活用していると聞いています。

荻野 ええ。実は、コンテンツワークスは、富士ゼロックスの新規事業部門が2001年2月に分離してできた会社です。その際、講談社、小学館、マイクロソフトさんからも出資していただきました。“4社”が親会社で、毎月、取締役会等で経営成績を報告しています。『FX4』を導入したのは、正確かつタイムリーに業績をつかむためと、株式公開を目指しているからでした。

――部門別業績管理は……。

荻野 行っています。ブックパーク、コミックパーク、フォトバックの3つを「メーン事業」、それ以外を「その他事業」に分けています。その他事業というのは、ブックパークの会員企業からスポット的に「この論文を300部刷ってください」といったものです。2006年12月期の売上は約5億円で、メーン事業が90%を占めています。メーン事業の売上構成比はブックパークが約50%、コミックパークが数%、フォトバックが40数%となっています。

 本来なら3事業ごとに分けて業績管理すべきなのでしょうが、今のところ社員が19名しかおらず、事務・経理担当者(川口真由美さん)を除き、みんな掛け持ちで仕事をやっており、部門ごとに人件費を配賦することが難しいからですね。しかし将来的にはここの部分を改めていかなければならないと考えています。

川口真由美 当社では独自の「受注・販売管理システム」を構築しており、これによって例えばお客様がどの本を何冊注文され、いつ発送したかなどを管理しています。それはブックパーク、コミックパーク、フォトバックごとに毎日つかんでいます。ここから、財務データを切り出して2週間に1度『FX4』に落とし込んでいます。

森井一夫顧問税理士 このため、3事業ごとの売上と限界利益はわかるわけです。

荻野 受注・販売管理システムではお客様ごとの入金も管理しています。一般的にオンデマンド出版は、先にお客様から料金をいただいてから印刷・製本するため、キャッシュフローは非常にいいです。

■新商品を開発・投入して売上倍増を狙う

――例えば、ブックパークで1冊注文を受けた場合の変動費の占める割合はどれくらいですか。

荻野 企業秘密です(笑)。ブックパークの変動費は紙代、印刷代、製本代、発送費、著作権料(印税)です。それはコミックパークでも同じですが、フォトバックは印税が発生しないため、限界利益率は高い。

――発送費はお客様負担ですか。

荻野 はい。発送費には梱包作業代等が含まれているため、1件当たりの発送費を下げれば、限界利益率はよくなります。が、これまでに宅配業者とは何度も価格交渉を行ってきましたから、これ以上安くすることは難しい状況です。

――すると、メーン事業の限界利益率をよくするためには、印刷代にメスを入れるしかない?

荻野 印税については、当社ではコントロールできない項目ですから、紙代や印刷・製本代を見直すしかありません。現在、印刷・製本をお願いしているプリントセンターは3、4社ですが、定期的に各社に「この本1冊いくらでできますか」という感じで見積もりを取り、いい意味で競争してもらっています。

――予実管理はされているのでしょうか。

荻野 期首が1月ですから、毎年年末までには次期の予算を作成し、取締役会で承認を得ます。受注・販売管理システムで、3事業ごとの売上や変動費を把握していますから、それをベースにしながら、ブックパークではいくら、コミックパークでは何冊売れていくら、フォトバックではいくらという感じで全社の予算を作成し、そのデータを『FX4』に月別登録します。

森井税理士 毎月の巡回監査では《変動損益計算書》で予算と実績がどうだったか、また、前年同月と比べてどうだったかをチェックしています。

荻野 最近の傾向としては、フォトバックの売上比率が上がってきており、それにつれて会社全体の収益性も改善されてきています。

――株式公開はいつ頃を?

荻野 少なくとも売上を前期の倍、10億円台に乗せなければできないと考えています。現状の規模で株式上場などというのは、生意気だとおしかりを受けかねません(笑)。

――売上拡大をはかるために、どんな方法を考えているのですか。

荻野 アフィリエイト(成果報酬型広告)やキーワード広告を活用してフォトバックの新規客を拡大していくことが第1の打ち手です。ブックパークやコミックパークに比べ、フォトバックのリピート率は約70%と高いですからね。今一つは「新商品」の投入です。フォトバックは写真集を対象にしていますが、今回の新商品は写真と文字組でオリジナルの「雑誌」や「本」を作り、届けるというビジネスモデルです。5月からサービスを開始します。これは簡単にいえば、自分(消費者)のブログを自由に編集して「本」にするというイメージのサービスです。当面は、この2つの作戦を展開して増収増益路線を築きたいと考えています。

(本誌・岩崎敏夫)

        
会社概要
名 称 コンテンツワークス株式会社
代表者 荻野明彦
業種 書籍・雑誌の小売業
所在地 東京都文京区関口1-24-8
TEL 03-5227-3001
売上高 約5億円
社員数 19名
URL http://www.contentsworks.co.jp/

CONSULTANTS´ EYE
部門別業績管理で予算をクリア
税理士 森井一夫
森井税務会計事務所

東京都大田区池上3-28-14 電話03-3754-6588
HP:http://www.tkcnf.com/morii-ao/pc/

 コンテンツワークスさんの創設メンバーに初めてお会いしたのは、新宿駅南口から数分の所にある富士ゼロックスの新規事業部室でした。あまり聞きなれないカタカナ・英語を交えてビジネスプランを熱く熱く語っていただき、概要を理解できたのは1〜2時間経過した後でした。バリバリのIT系企業かと思っていましたが、そうではなく、既存の出版業が抱える在庫リスク・資金リスクを解消するため、オンデマンド出版にして無在庫・前金制のネットショッピングモールを構築するというようなことでした。

 同社は12月決算のため、正月にバイク便で資料のやり取りをしたり、メンバー全員で徹夜して再チェックした初年度のアナログチックな決算も今となっては良い思い出になっています。あれから6年、創設メンバーの荻野さんは代表取締役になり、川口さんは総務・経理のスペシャリストになり、同社は4年後のIPOを目指し、今年新たな体制でスタートしました。

 同社は創業時からTKCの『FX4』を導入していただいています。昨年導入した「支払い予定」も順調に稼動し、経理の一部を他の人に代行してもらえる状況にもなってきました。今後は、「セグメント情報」が必要になってくるため、部門別業績管理のブラッシュアップが不可欠になってきます。また事業計画では、今後4年間毎年前年対比プラス20%超の売上計画になっていますが、全然難しい目標値ではありません。なぜなら、「フォトバック」という限界利益率の高いサービスが順調に伸び続けていますし、5月以降に「新サービス」が提供されるからです。

 コンテンツワークスさんは、いま確実に予算をクリアしていますし、今後も必ずや予算をクリアし、IPOを実現していただけると思っています。その折りには監査法人と協働して資本政策・税務対策等でサポートさせていただくつもりです。