「『FX4』導入のメリットは、何より月次試算表が早く出るようになったことです。事業の舵取りを行うには、できるだけ早くそのための判断材料を得ることが大前提となります。いまでは『FX4』が経営上なくてはならない“道具”のひとつになっています」
こう語るのは、横浜市に本社を構えるソフトウエア開発業・キャッツの上島康男社長(63)。同社は、組み込み向けCASEツール(後述)の開発・販売を主力に急成長を続けている優良企業だ。直近3期は毎期二桁成長で、今期売上も前期比20%前後のアップの見込み。もちろん黒字決算も継続中であり、中期目標として経常利益2億円を掲げている。そしてこの業容拡大を下支えしてきたのが、『FX4』だった。
導入は2000年4月。これ以前までは、会計事務所に原紙帳票を渡すいわゆる「記帳代行」スタイルで処理していた。そのため月次試算表が提供されるまでに2、3ヵ月もかかっていたという。それが現在では、『FX4』による自計化に移行すると同時に会計事務所も変更したことで、月締めから6営業日後には試算表が出させるようになっている。
上島社長が続ける。
「当社の基本方針は常に新しいことにチャレンジし続けることです。そのためには研究開発への先行投資が不可欠になっています。で、かつては投資をする際、明確な数字の裏付けもなしに『えい、や!』でやっていた。それがいまでは、月次できちっと予実管理を行う体制ができたことで研究開発予算をはじめとしたすべての経費を、適切にコントロールできるようになっています」
キャッツは、日本での組み込み向けCASEツールにおけるパイオニア企業でもある。
CASEツールとは、システム開発の作業効率化を支援するソフトウエアのこと。同社では『ZIPC』(ジップシー)の商品名で、電力やダム施設で利用される管理制御システムの開発メーカーや、家電メーカー、事務機器メーカーなどの制御ソフト開発部門にこれを提供している。
「ソフトウエア業界は一見先進的なイメージがありますが、実のところは労働集約型で多分に前近代的な業種なんですね。設計などの創造的な部分よりも、コードを優先した作業レベルがエンジニアの主な仕事になっている。これまではそれを人海戦術でこなしてきました。しかしソフトウエアが巨大化し、コードの行数が天文学的になってきている中で、もはやこの生産方法では対応できなくなりつつある。そこに当社製品の需要があるのです」
いまはあらゆるものがソフトウエアによって制御されている。中には社会のインフラを支えているものも少なくない。
昨年秋、首都圏のJRと私鉄の自動改札機が、制御システムの欠陥によって半日にわたり一斉に利用できなくなるという事故が起きた。直接の原因は制御システムのバグだったわけだが、これも元をたどればソフトウエアの大規模・複雑化が遠因となり発生したといえる。同社のソフトは、そうしたリスクを回避するためのツールというわけだ。
「ハードをつくるときは生産設備を用いるのに、ソフト開発には設備や道具がありませんでした。『ZIPC』は、まさにソフト開発のための生産設備なんです。これによって複雑化するソフト開発の現場に、品質向上とコスト削減の2つの効果をもたらすことができます」
その導入効果は絶大だ。例えば大手事務機器メーカーでは、導入によって生産効率を4倍にまで向上させることができた。また大手家電メーカーでは、全体のコストを20%も削減できたという。『ZIPC』は1990年に提供が開始され、現在ではこの分野のデファクトスタンダードとなっている。
こうしたオンリーワンの領域を開拓してこれた最大の要因こそが、上島社長の語った「常に新しいものにチャレンジする姿勢」であり、積極的な先行投資だった。つまり研究開発が同社の強さの源泉で、その費用のさじ加減の巧拙が将来の業績にも大きく関係してくるのである。
では、『FX4』によってどのような管理体制を同社は敷いているのだろう。まずは安藤壽行取締役業務管理部長兼CFO(最高財務責任者)に、概略を説明してもらった。
「部門別業績管理を行っています。当社はソフトの販売だけでなく、各種ハードウエア製品の受託開発、製造、販売も手掛けていまから『ソフト部門』と『ハード部門』の2部門に分けて管理しています。さらにソフト部門は『プロダクツ』(製品販売)と『ソリューション』(導入支援やアフターサービス等)に、ハードも分野ごとに4つに組み分けして管理しています。こうした体制を整えた上で期首に部門ごとの年度予算を立て、それを月次展開して『FX4』に登録。後は毎月15日に開催する経営会議で、予実対比を中心に業務管理部から業績推移について報告します。何か課題があれば会議の席で社長に説明し、改善策などの指示を仰ぐようにしています」
安藤CFOは「社長が求める業績資料を即座に提出できるだけの準備は常にしている」と胸を張る。
それだけに『FX4』の設定は細部まで作り込まれている。例えば、ハード部門では常時約6000点の部品ストックがあり、これを管理するためのソフトを導入して月次棚卸しを行っているが、このデータを『FX4』の《データ連携機能》で移行できるようにした。給与計算は『PX4』を導入し、これも『FX4』と連動させた。また科目設定では、部門ごとに按分することをふまえ細かく枝番を付けて入力している。
会議で利用する資料は、《部門別変動損益計算書》を筆頭に「プロジェクト別限界利益表」など独自帳表を含めて複数を用意。それぞれの前期比や予算比で異常値があれば、業務管理部が事前に原因分析を行っておき安藤CFOが説明を加える。
上島社長は「業績管理体制が社内に完全に定着したことで、ある程度の課題なら過去の経験則から現場レベルで改善できるようになった。『FX4』導入によって社員の能力が向上し、組織が自動運動するようになってきた」と言う。
さて、社長が戦略上最も重視している先行投資としての研究開発費だが、これは製造間接費の中の枝番で管理している。
「研究開発費は毎期テーマを決めて予算を組み、それを予実管理しています。ただ、けっして聖域視しているわけではなく、赤字になりそうなら当然、減らすこともしますし、逆に利益に余裕が出そうなら『戦略予備費』を研究開発費に回すということもします。このように常に先手を打って調整できるのが非常にいい」(上島社長)
同社は昨年4月、福岡市に「CATS組み込みソフトウエア研究所」を、同9月には本社内に「CATS先端研究所」を相次いで設立した。この2つの研究所は、緻密な業績管理によって生み出された黒字の賜物といえるだろう。と同時に「先端のソフトウエア・エンジニアリング研究によって今後も業界を牽引していく」(同社長)という、キャッツの強い決意表明でもある。
(取材協力・横浜税理士法人/本誌・千葉博文)
| 名称 | ● | キャッツ株式会社 |
|---|---|---|
| 業種 | ● | ソフトウェア開発 |
| 代表者 | ● | 上島康男 |
| 設立 | ● | 1973(昭和48)年11月 |
| 所在地 | ● | 神奈川県横浜市港北区新横浜2-11-5 |
| TEL | ● | 045-473-2667 |
| 売上高 | ● | 17億円(2008年3月期見込み) |
| 社員数 | ● | 90名 |
| URL | ● | http://www.zipc.com/index.html |