運送業界に逆風が吹くなか、ITを使って堅実に業績を伸ばしている会社がある。住宅建材の輸送をメーンにしている新潟東港運輸だ。そこでIT戦略の一環として導入したTKCの『FX4』をどのように活用しているのかを、同社の森山直樹社長(37)と顧問税理士の土田隆氏、監査担当の小嶋英明氏に聞いた。
――御社は新潟県を地盤に運送業を営んでいるそうですが、主にどういうものを配送しているのですか。
森山 主力は住宅建材(A社)の配送です。具体的にはA社の指示に基づき新潟港で「原料」をトラックに積載し、いったん倉庫(A社)に搬入します。それを今度はショベルカーで工場内のホッパーに投入し製品化された住宅建材を、トラックに積み建設現場や工務店などに配送します。第2の柱はB社の新潟工場で製造された超純度アンモニアを、需要先(電子部品メーカーなど)に配送するというものです。この2つで、年商約7億円のうち6割くらいを占めています。残りはスポット的に県内から県外へ輸送するものとかで、一部倉庫業(本社敷地内)も行っています。車両は10トン車や7トン車など50台保有しています。
――10年以上前に「日本ローカルネットワークシステム協同組合」に加入していますが、それは車両の稼働率をあげるためでしたか。
森山 そうです。「ローカルネットシステム」は、全国の中小トラック運送業者によって運営されている物流ネットワークシステムで、簡単にいえばインターネット上で“求車・求荷情報”が得られるというものです。当社も「帰り便」の仕事を探したり、逆にこちらから営業エリア外の仕事(求車)をお願いしたりすることもあります。
――森山社長は入社する前、TKC会員の会計事務所で修業されたことがあると聞いています。
森山 はい。「経営者は数字に強くなければいけない」というのが創業者(森山金次郎会長)の口癖で、その教えにしたがい、学校卒業後、5年間ほど会計事務所で実務経験を積みました。巡回監査をやっていまして、当時の所長先生や先輩から「これからの監査担当者は記帳代行ではなく、コンサルティング能力を身につけなければならない」と指導されました。このときの経験がいま役に立っています。当社に入社したのは平成9年1月で、16年1月に社長に就任しました。現在は「税理士法人新潟合同事務所・愛宕事務所」に顧問をお願いしており、2年前に『FX4』を導入し活用しています。
土田隆顧問税理士 実は昨年、当事務所で「経営承継」をテーマにしたセミナーを開催したのですが、その際、森山社長にパネラーとして出席していただきました。入社以来、いかにITを使って経営革新してきたのかを話してもらったのですが、非常に評判がよかったですね。
――『FX4』を導入した理由は。
森山 理由は2つあります。1つは当社が使用している基幹業務ソフト「運行管理システム」とデータ連携ができること、もう1つは細かく何段階にも分けて「部門別業績管理」ができることです。この運行管理システムは、車両ごとの運行管理と請求書発行ができるものです。
当社では、保有するトラックすべてに「デジタルタコグラフ」を装着しており、ドライバーはメモリーカードを挿入すると、その日の走行距離・スピード・ブレーキ回数などが記録されます。そのカードを端末で読み取れば、「日報」が出力される一方、運行管理システムにデータ転送されます。そして、運行管理システムで把握された車両ごとの売上データなどが『FX4』に送信されるという仕組みです。
――部門別は、どのような形で行われているのですか。
森山 (1)全社のもとに、(2)部門別(港湾センター、東港センター、本社センター、倉庫)、(3)車両別、(4)ドライバー別――の4層構造で業績管理しています。
港湾センターは建材の原料を新潟港からA社倉庫まで運ぶのを担当しており、倉庫から原料をホッパーに投入して出来上がった住宅建材を現場まで配送するのは東港センターの業務(守備範囲)です。本社センターはA社以外の荷主さんに依頼されたものを運送する部隊です。ちなみに車両は、港湾センターに3台、東港センターに23台、本社センターに24台あります。
――ドライバー別までやっているのは、どの部門の誰がどれだけ粗利益を上げているのかをつかみたかったからですか。
森山 そうです。売上と変動費に関しては車両別でつかんでいて、給与に関してはドライバー別で把握しています。なぜそうしているのかといえば、給与はやはり“人”につけるものだからであり、今1つの理由は「1車1人制」を基本としているものの、たまに乗りかわりがあるからです。例えば東港センターの「ナンバーⅠ」という7トン車はX氏、「ナンバーⅡ」という4トン車はY氏がふだん乗ることになっていても、2人とも月に1〜2回は別なトラックに乗ることがあるということです。
土田隆顧問税理士 とはいえ、その頻度はごくまれなので、ナンバーⅠの売上はX氏がほぼ稼ぎ出したものとみて差し支えないわけです。したがって、両者(車両別とドライバー別)を合体させれば、X氏がⅠのトラックを使って月にどれだけ売上、粗利益を上げたのかをつかむことができます。
小嶋英明監査担当 さらに新潟東港運輸さんのすごいところは、この車両別とドライバー別のデータを活用して、「運転手別損益表」などを作成していることです。
――その一方で、御社では土田税理士の指導に基づきながら、『継続MAS』を使って次期の予算も作成しているそうですね……。
森山 はい。当社が『FX4』を使って車両ごとの業績を把握しているのは、1キロ当たりの売上単価などをつかみたいからです。仮に10トン車の売上単価が1キロ100円とすれば、その車が月に1万キロ走行すると、100万円の収入を稼ぐことができます。このように“車両単価”を把握していれば、例えば配車担当者が新規に営業をかけるにあたって、「7トン車でここからここまで輸送してほしい」とお客様からいわれれば、いくらの収入になるかがすぐにわかります。
――単価をつかんでいなければ、お客様に「適正運賃」を提示することもできないわけですね。
森山 その通りです。要するに、運送会社というのは走っていくらの世界ですから、すべての「指標」を、その車の総走行距離で割れば、キロ当たりの単価を弾き出すことができるということです。
予算を作成するにあたっては、1つはこの車両ごとの売上単価に予定総走行距離をかけて目標売上などを出すアプローチと、お得先ごとの需要を見込んで目標売上などを出すアプローチがあり、“両方”をすり合わせて作成しています。
小嶋 このようにして作成された予算を『FX4』に月別登録して、予実管理を行っていきます。
――粗利益率を高めるためにどういうことをされているのですか。
森山 基本的には「運行3費」を減らすことです。3費とは軽油・燃料代、給与、車両費のことで、車両費は定期点検代などの修繕費です。修繕費は車種によって異なりますが、トレーラーで年間150〜200万円かかる場合があります。
先ほど運送会社の経営で重要なのは、指標(勘定科目)をキロ当たりで出すことだといいましたが、当社では、毎年決算期に「運転手別損益表」(縦軸/勘定科目、横軸/運転手)を用いて、主要勘定科目をその運転手の総走行距離で割って単価を算出しています。例えば、A運転手の1キロ当たり燃料単価は25円、B運転手は21円、C運転手は18円だったとすれば、なぜCさんが効率的な運転ができたのかをベンチマーキングするわけです。
土田 軽油やガソリンも、センターごとに複数の業者からまとめて仕入れるようにしています。そのほうがキロ当たりの軽油代を安くすることができるからです。
森山 当社が営業エリアとしているのは、新潟市内から片道約300キロのところまでです。大型車両が燃料を積んで、行って帰ってこられる距離が約600キロだからです。燃料代が高騰している昨今、途中の、ガソリンスタンドで給油すると、高くつきます。自社で一括して仕入れた軽油が一番安いわけです。だから営業エリア以外の仕事がスポット的に舞い込んだとき、「ローカルネットシステム」を活用するわけです。
――『FX4』をはじめITをうまく使って経営革新されていますが、そのポイントは何でしょうか。
森山 人材教育ですね。例えばデジタルタコグラフなどを操作するのはドライバーなので、彼らのスキルをあげなければ「ボタンの押し間違え」とか「入力ミス」などが必ず出てきます。そこを教育して、正しい「数字」をつかめる組織体制にしなければ、業績を伸ばし、毎期黒字を続けていくことは難しいと思います。
(本誌・岩崎敏夫)
| 名称 | ● | 新潟東港運輸株式会社 |
|---|---|---|
| 業種 | ● | 一般貨物自動車運送業 |
| 代表者 | ● | 森山直樹 |
| 設立 | ● | 1963(昭和38)年10月 |
| 本社 | ● | 新潟県新潟市北区木崎3425-30 |
| TEL | ● | 025-386-7171 |
| 売上高 | ● | 約7億円 |
| 社員数 | ● | 63名 |
| URL | ● | http://www.tokounyu.com/ |
| 顧問税理士 | ● | 土田隆 税理士法人新潟合同事務所・愛宕事務所 新潟県新潟市中央区愛宕3-4-1 025-285-3931 HP:http://sachi.tkcnf.com/pc/ |