建築資材の卸売でスタートし、いまでは製造まで手がけるタイガー産業。沖縄で著名な「島袋グループ」の一翼を担う有力企業だ。率いる島袋盛義社長(56)は、卓越した先見性と旺盛な行動力で右肩上がりを維持してきた。そんな島袋社長に、財務戦略を含めた経営の“勘所”について聞いた。
――この6月で、創業30周年を迎えられたとか。
島袋 当社は昭和54年に、母体である島袋金物から分離する形で創業しました。島袋金物は工具やツール類については沖縄を代表するほどの会社なのですが、建築資材の分野には比較的弱かった。そこを補うために、私をリーダーに据えて、建築資材の専門問屋のタイガー産業を新たにつくったわけです。
――扱い品目は?
島袋 型枠資材、仮設資材、ボルト・ネジ、アンカー・釘・ワイヤーなど、約2万5000点ほどの建築資材を扱っています。うち5000点は自社の工場で生産しており、その8割方はOEM(相手先ブランドによる生産)です。
――自社生産はいつから?
島袋 創業当初から、私は“問屋レス”という流れは避けられない、と考えていました。そのため、昭和59年には、製造部門(タイガー工業株式会社)を設立、メーカーという川上に向かって踏み出しました。メーカーが問屋の中抜きをするなら、それ以上のコストパフォーマンスのものをつくってしまおうというわけです。
ただ、沖縄市場のみを相手にしていては、原価を下げるにも限界がある。そこで大阪にも工場を建設し、全国を営業して量産効果を出すことで原価を大幅に下げ、競争力をつけていきました。ちなみに、いまでは売上全体の3分の1を沖縄市場以外で稼ぎ出しています。
――そして、1994年に中国の南寧に生産拠点をつくられました。
島袋 実は、南寧というのは中国でもベトナムにほど近い南部に当たり、日本企業の進出実績がないところでした。でも、サトウキビの産地で、沖縄と気候が似通っており、住民の気性も穏やか。そんなところが気に入って、周りの反対を押し切る形で、私が工場建設を決断しました。
――それが結果的には成功だったわけですね。
島袋 そうです。中国の他の地域では、スタッフを雇い入れても、すぐに辞めて待遇の良い工場に移ってしまったりということがあるように聞きますが、当工場ではそれがありません。移る工場がありませんから(笑)。加えて、誠実な住民気質で、技術の習得も早い。それから、日本からはじめての進出ですから、行政にも大変良くしてもらっています。いまでは技術的にもコスト的にも「世界で闘える工場」になったと自負しています。
――生産部門の体制はしっかり整ったということですね。
島袋 現在、全体の35%が自社製造製品の売上です。伸びているのもこの分野ですね。ただ、我々はやみくもに自社製造品だけを増やしていきたいとは考えていません。問屋として取引のあるメーカーは大切にしていきたい。だから、自社生産の方が利益が出ると分かっている場合でも、市場での競争力さえあれば、従来型の仕入れ販売のスタイルを崩しません。しかし、競争力がなくなった時には、メーカーと協議の上、コストを下げてもらうか、自社生産に切り替えるかを決定します。負けるわけにはいきませんからね。
――つまり、生産部門を持つことで、柔軟な戦略が可能になったと…。
島袋 それが当社の最大の強みでしょう。たとえば、このほど、建築仮設現場において、墜落防止措置に関する条例改正がありましたが、当社ではこれに対応する「墜落防止バー」をつくって、施行開始前にすでに8万本、3000万円の受注をいただきました。さらに、この条例関連では、「足場の幅木」を新工場で製作する予定で、ここでも年間10億円の売上を見込んでいます。
要するに、生産部門を持っているからこそ、戦略の選択肢が増え、臨機応変な対応が可能になった。結果として、問屋不要論が吹き荒れる中、成長を重ねることができたのだと思います。
――財務管理の面でも、先進的な取り組みをされてきました。
島袋 3年くらい前までは、当社の財務は弱いという印象でした。でも、その後、息子(島袋太悟総務部部長)が担当に就いたこともあり、少しずつレベルアップして、いまではかなり良くなったと感じています。
――3年前といえば、ちょうど『FX2』から『FX4』へバージョンアップした時期ですね。
大城眞徳顧問税理士 『FX2』は1台でしか入力できないので、年々増加する経理作業の量に対応できないという現場からの不満を聞き、サーバー型で複数アクセスのできる『FX4』に切り替えたわけです。これによって、部門別管理をもっと細かく精緻に行いたいという、タイガー産業さんのもう1つのニーズにも対応できるようになった。それが、島袋社長の「レベルアップした」という評価につながっていったのだと思います。
――部門別管理はどのように?
島袋太悟部長(以下部長) 『FX4』の機能を活かし、部門階層構造を独自に設定して重層的に行っています。まず、共通部門と営業部門に分け、そして営業部門のなかに営業部、特販部、商品管理部、東日本エリア、西日本エリアを設定し、さらにその下に営業1・2・3課、特販1・2・3課、各営業所が存在するというツリー構造です。もちろん上から下まで全部門の財務諸表が即座に確認できるようになっています。
加えて、製造を担当する子会社のタイガー工業にも、同様に『FX4』が入っており、製品種類別に11部門に分けて管理されています。タイガー工業はタイガー産業にしか販売しませんから、これらの数字が当社の「製造部」にぶら下がっている形になります。
――とても複雑ですね。
山城高司監査担当 これほどの緻密な管理は、『FX2』では無理でした。それから、細かく管理することで、経費の内訳が見えやすくなったというメリットも出ています。つまり、共通経費を各営業部署に正確に振り分けることができるようになり、目標設定や進捗管理がより意味のあるものになってきたと思います。そもそも、経費が見えないと目標も立てられませんからね。
部長 最近では、各部門の管理責任者が、自分たちの部署の実績と目標の数字を、常に照らし合わせることで、管理意識が非常に高まってきていると思います。
――島袋社長は、『FX4』から出力される財務データの、どこに注目されますか。
島袋 まず、総合的な《変動損益計算書》の売上、利益を確認し、それから各営業部門の実績を見ます。そして赤字だったり、予算を大幅に下回っていたりしたら、販売管理システムで商品別や取引先別のデータを出させてどうしてなのかの原因を探ります。お客を他社に取られているのか、あるいはほかの原因があるのか。それが分からないと、対策の立てようがありませんからね。
そのほかでは、私が常に注視しているのが《キャッシュフロー計算書》です。4、5ヵ月先の資金繰りを確認しながら、売上が上下にどれだけブレたらどうなるか…などとシミュレーションを繰り返します。そして場合によっては投資をしていく。私は、営業上がりということもあって攻めの経営をするので、ついつい投資を急ぎたくなる。でも最近はなるべく財務データの裏付けをとり、また大城事務所など周囲の意見も聞きながら決断するように心がけています。
山城 社長の財務に対する考え方は非常にシビア。利益を出すためには売上、コストをどうすればいいかを常に考えておられます。先見性と直感力にたけ、行動力はもちろん、深く調査・研究し、成功するまで頑張る粘り腰も持っておられる。また、南寧への進出に象徴されるように、人間性や人情を重視する面もあります。そんなバランスのとれた経営を行っているからこそ、ここまで右肩上がりを維持できているのだと思います。
――今後はいかがでしょう。
島袋 今年に入って、久しぶりに県内を営業に回ってみて思ったのですが、意外に仕入れ商品の分野で苦戦しています。そこでもう一度、取引先との協力関係を見直しながら、あるいは自社製造品を活用しながら、沖縄でのシェアを巻き返していきたいと考えています。
それと、もう1つは世界戦略です。世界的な不況だからこそ、海外にチャンスがある。なぜなら、いままではOEM生産など考えても見なかったところが、OEMを考えるようになるからです。事実、当社にも国内外から何件か新たな引き合いが来ています。とくにアメリカ市場は狙ってみるのも面白いと思いますね。
(沖縄SC・新垣全/本誌・高根文隆)
| 名称 | ● | タイガー産業株式会社 |
|---|---|---|
| 業種 | ● | 建築資材製造・卸 |
| 代表者 | ● | 島袋盛義 |
| 設立 | ● | 1979(昭和54)年6月 |
| 本社 | ● | 沖縄県うるま市字州崎12-11 |
| TEL | ● | 098-982-1888 |
| 売上高 | ● | 約65億円 |
| 社員数 | ● | 140名 |
| 顧問税理士 | ● | 大城眞徳 大城眞徳税理士事務所 沖縄県浦添市伊祖1-33-1 098-876-8231 HP:http://www.masism.com/ |