厳しい経済環境のなかにあって、着実に業績を伸ばしているのが中津川包装工業だ。“物流包装提案営業”を武器に年商約50億円を達成している。そこで同社の営業・財務戦略を大辻誠社長(61)と武田哲夫専務、税理士法人泉の三宅妙子税理士、松岡剛生税理士に聞いた。
――御社は中部地区を地盤に段ボールの製造販売を主力事業にしているそうですね。
大辻誠社長 はい。先代が1955年1月に岐阜県中津川市(現中津川工場)に当社を設立して以来、段ボールに特化して事業展開してきました。具体的には、(1)普通段ボール、(2)強化段ボール「ナビエース」(75年開発)、(3)ナビエースを使用した段ボール製パレット「ナビパレット」(77年開発)の3つを主に手がけていますが、すべてお客様からの注文に基づいて設計・製造している点が当社の特徴です。
とくにナビエースに関していえば、普通段ボールに比べ箱圧縮強度を約60〜80%強化したもので、冷蔵庫向けコンプレッサーの輸出用集合包装などに使われています。この強度特性を生かし、従来の木製パレットに代わるものとして開発したのがナビパレットです。それまでお客様が木製パレットを使って製品を梱包し海外へ輸出するとき、木製パレットのなかに虫が入っている場合などがあるため、必ず加熱処理等を行っていました。手間ひまがかかっていたわけです。そこで木から紙に代えればそうした手間をなくし、重量も軽くすることができると考え、ナビパレットを製品化しました。ナビパレットはこれまでに約1000万個を販売しています。
――隠れたヒット製品ですね……。最近の業績はいかがでしょうか。
大辻 09年3月期の売上は約50億円でしたが、今期は若干増えるとみています。得意先別では電機、機械、自動車関連が売上全体の約65%を占め、食品と製紙関係がそれぞれ十数%となっています。製品別売上では普通段ボールが約50%、残りをナビエースとナビパレットなどが占めています。
――御社が“強み”にしているのは何でしょうか。
大辻 一言でいえば、単に段ボールを素材として提供しているのではなく、お客様の製品にマッチした形状・包装形態を企画・提案しているところが最大のウリです。つまり、段ボールをツールに現場(得意先)での梱包作業改善や物流コスト削減などを提案させていただいているということです。その一例は「2009日本パッケージコンテスト」(日本包装技術協会主催)で、最高位の経済産業大臣賞をいただいた「スタッキングチェアの40脚包装」です。
この椅子は株式会社愛知さんの製品で、同社では従来、1箱に6脚を梱包して北米や欧州などに輸出していましたが、それを当社では40脚包装できるように提案したわけです。これによってコンテナ数を3本から1本に減らし、物流コストを大幅に削減することができました。
武田哲夫専務 日東電工さんの「ロール製品梱包」も、当社の提案で改善されたケースです。従来は生産ラインから出てきたロール製品をいったん搬送用パレットに山形状に積み、保管倉庫へ持って行き、そこで製品一つずつ個箱に詰めていました。それを当社では個装→集合包装への変更を提案し、それにマッチする形状の段ボール箱を設計・製造しました。その結果、それまで9人でロール製品の梱包作業を行っていたのが、わずか3人でできるようになりました。
――10年ほど前にTKCの『FX4』を導入されたと聞いています。
三宅妙子税理士 はい。当税理士法人が関与して2年ほど経ったとき、『FX4』を導入していただきました。中津川包装工業さんでは独自の会計システムで「部門別会計」を行っていたのですが、当時「税効果会計」「連結決算」など会計制度の大変革を迎え、これに対応するためには『FX4』の導入が望ましいことを提言し導入していただきました。
――部門はどういう“切り口”で分けられているのですか。
松岡剛生税理士 それはまず「本社工場」と「中津川工場」の2つに分け、その下にそれぞれ(1)板、(2)箱、(3)パレット、(4)商品等、(5)外注、(6)業務、(7)販売、(8)管理、(9)共通――の9部門に分けて行っています。(1)〜(5)までが製造原価関係で、(6)〜(9)が販管関係です。
大辻 段ボールの製造は、段ボールシートと段ボール箱の2つに大別されます。シートとは、波状に加工した紙(中芯)を板紙(ライナー)でサンドイッチ状に貼り合わせたもので、「コルゲートマシン」という機械で製造します。当社が導入しているマシンの生産能力は毎分約330メートルで、約400種類のシートの生産に対応することができます。(1)の板部門というのは、お客様の注文に基づき、このシートを製造する部門のことであり、(2)の箱は、そのシートに取引先の製品名などを印刷して箱状に加工することを指します。(3)のパレットは、ナビエースを使ってナビパレットを製造販売する部門のことです。
武田 一方、(6)の業務とは企画・設計のことで、(7)の販売とは営業部隊のことです。営業社員は全社で22名です。
――すると、例えば日東電工さんに提供しているロール製品梱包の場合、売上はどの部門に計上されるのでしょうか。
松岡 日東電工さんの場合は、箱とパレット部門に売上が配賦・計上されます。中津川包装工業さんでは、独自の「販管ソフト」を使って得意先ごとの売上データなどを管理しており、そのデータを月末に一括して『FX4』に入力しています。このときに売上は、それが生じた部門に振り分けられます。
――人件費についても部門ごとに把握し計上されているのですか。
三宅 そうです。人件費に関しては誰が板、箱、パレット部門等を担当しているのかわかっていますから比較的簡単に部門計上できます。が、やや難しいのは箱とパレット部門にかかった材料仕入代(変動費)の捉え方です。というのも、箱は板部門で製造されたシートを使って段ボール箱を製造しているからです。このため、同社では板、箱、パレット部門にかかる材料仕入代に関しては、板部門で一括管理することにしています。段ボールシートを製造する材料は「板紙」で、これがおおもとの原料だからですね。
松岡 板部門は、生産したシートを主に社内の箱部門、パレット部門に提供しています。また、(5)の外注というのは、小ロットのものなどを外注先に委託し製造してもらっているケースを指します。
――大辻社長が毎月注意してみている帳表とは……。
大辻 本社工場と中津川工場の《変動損益計算書》です。売上、限界利益、経常利益、人件費が前年同月、月次推移、当初予算に比べてどうなのかを毎月チェックしています。
三宅 今期から『継続MAS』を使って勘定科目ごとに予算を作成し、そのデータを『FX4』に落とし込んで業績管理しています。
武田 目標売上、目標限界利益を達成するため、今期は四半期ベースごとにきっちり“戦術”を立てて取り組んでいます。その結果、本社・中津川工場とも、売上に関しては毎月102%とか103%で推移してきており、また、限界利益率に関しても2年くらい前に比べ6〜8ポイントよくなっています。
大辻 限界利益率が改善されたのは数年前に原料の板紙が高騰したのをきっかけに、全社をあげて“生産性向上作戦”を展開してきたことによります。具体的には、(1)シートを製造する際のロス率の低減、(2)ムダな在庫を抱えない、(3)外注の一部を内製に切り替えるなどです。
武田 リーマン・ショック以降、どの製造業も売上をあげることが非常に難しくなってきています。そこで当社では既存のお客様との関係を深掘りする一方、新規顧客の開拓を狙って9つの「プロジェクトチーム」を立ち上げました。いずれもチーム名はターゲットとさせていただいている会社名をつけており、メンバーは営業社員を核に企画・設計、製造部門など組織横断的な形で構成されています。1チーム当たりだいたい3〜4名です。厳しい経済環境のなかにあって、当社がおおむね予算通りに売上をあげることができているのは、こうした新規開拓プロジェクトの成果が少しずつ出てきているからでもあります。
――固定費関係で常に注視している科目は何でしょうか。
大辻 一番は人件費ですが、それ以外では減価償却費です。毎月約2000万円計上しています。常に機械を修繕したり、新たな設備投資を繰り返し行わなければ、同業他社との競争に負けてしまいますからね。
――最後に今後の抱負についてお聞かせください。
大辻 「良き包装コンサルタントたれ」というのが、当社のモットーです。この精神を忘れずに、引き続き“物流包装提案営業”を行っていけば、まだまだ潜在需要を掘り起こすことはできるとみています。今後も地域経済の発展に貢献していきたいですね。
(本誌・岩崎敏夫)
| 名称 | ● | 中津川包装工業株式会社 |
|---|---|---|
| 業種 | ● | 段ボールの製造販売業 |
| 代表者 | ● | 大辻 誠 |
| 設立 | ● | 1955(昭和30)年1月 |
| 本社 | ● | 愛知県春日井市長塚町2-12 |
| TEL | ● | 0568-31-6161 |
| 売上高 | ● | 約50億円 |
| 社員数 | ● | 113名 |
| URL | ● | http://www.nb-npi.co.jp/ |
| 顧問税理士 | ● | 三宅妙子・松岡剛生 税理士法人泉 愛知県名古屋市東区赤塚町3-23 052-931-0120 HP:http://www.tkcnf.com/izumi/pc/ |