ここ数年、毎年30%以上の勢いで売上を伸ばしている会社が岡山県にある。有料老人ホームを企画・運営する「はれコーポレーション」だ。病院・地主との“三位一体経営”が業績好調の主因だが、財務面からサポートしているのがTKCの『FX4』である。そこで同社の事業・財務戦略を、上川敏文社長と武田勝行管理部係長、顧問税理士の木下信一氏に聞いた。
――「安価で安心な高齢者の住まい」をビジョンに掲げて有料老人ホームなどを手がけているそうですね。
上川敏文社長 はい。具体的には、(1)住宅型有料老人ホーム「アヴィラージュ」(23棟)、(2)介護付有料老人ホーム「あいらの杜」(4棟)、(3)高齢者専用賃貸住宅「饗のまち」(1棟)の3タイプを、全部で28棟運営しています。エリア別では、地元・岡山が10棟、山口と広島が各4棟、愛媛が2棟、佐賀、鳥取、大阪、長野、静岡、神奈川、東京、福島が各1棟となっています。3タイプとも1棟50室の規模で、部屋の広さは約18平方メートル。部屋ごとにトイレ、洗面台、ミニキッチンなどを完備しており、月額入居費は13万5000円〜15万円です。
――何を一番のセールスポイントにしているのですか。
上川 一言でいえば、地元の有力病院、地主と“三位一体”で行っているところです。従来、病院が事業拡大戦略として、有料老人ホーム(住宅型)を開設・運営する場合、土地を探して確保すること、金融機関から資金調達して建物を建設すること、入居者を確保することが“3大ネック”となっていました。そこでこの問題を解決するために考えたのが、病院、地主、当社がそれぞれの強みを発揮して全体を最適化させるという事業モデルです。これは、まず当社が地元の有力病院(デイサービスセンターやリハビリ施設等を持つ)と提携し、その近くに土地を持つ地主と交渉して建物を建ててもらいます。次に、当社はその建物を地主から30年間の長期契約で借り上げ、入居者を確保し施設を運営します。最後に病院はその建物に「ヘルパーステーション」「訪問看護ステーション」などのテナントとして入り、入居者に医療・介護サービスを提供するという仕組みです。
――要は、連携できる有力病院が周囲になければ、施設は開設しないということですか。
上川 そうです。基本的には1病院当たり3棟(150室)を目標に連携していきたいと考えています。三位一体経営によって、病院も地主も入居者も数多くのメリットを得ることができます。例えば病院のメリットとしては、何よりローリスクで医療・介護収入を獲得できることが挙げられます。一方、入居者のそれは、万が一緊急事態が発生しても連携先の病院が素早く対応してくれることです。実際、ある入居者が室内で転倒して左腕を骨折したことがあったのですが、その際、連携先の病院に救急搬送して治療した結果、20日程度で退院し、もとの(ホームでの)生活に戻ることができました。高齢者の死亡原因の一つに家庭内事故があり、その事故のなかで最も多いのが転倒です。ここをきっちりケアしている点が同業他社との大きな違いです。
――ここにきて建物の建設は、大和ハウス工業にお願いしているそうですね。
上川 はい。実は私自身がかつて大和ハウス工業に勤めていたこともあって、08年9月に全国ベースでの提携を結びました。同社とペアを組んで物件開拓を行っていけば“全国100棟”の建設も夢ではないと考えたからです。その一方、ホーム内での食事については昨年、病院給食の最大手である日清医療食品とも提携しました。日清医療食品の取引先(病院)を紹介してもらうのが狙いですが、そのルートを通じて新規にオープンした施設などへの食事の提供を日清医療食品にお願いするという図式です。
いずれにしろ、当社が業界で初めて試みた、このビジネスモデルは病院・地主・ハウスメーカー・給食業者・入居者のすべてが“潤う”ところに最大の特徴があります。
――会社設立(02年8月)とほぼ同時に、TKCの『FX2』を導入されたと聞いています。
上川 顧問税理士の木下信一先生の推薦で『FX2』を導入したのですが、木下先生とは大和ハウス時代からの古い友人です。
木下信一税理士 かれこれ知り合って25年経ちますが、その間、上川社長はずっと「高齢者住宅」の重要性を唱えていました。で、9年前に同社を設立する際、「何とか力になりたい」と思い、顧問を引き受けるとともに『FX2』の導入を薦めました。時代の波に乗って業容が拡大していることから、最近『FX4』に切り替えていただきました。
――部門別会計はなされているのですか。
上川 行っています。全社→事業部門→有料老人ホーム別の「3階層」に分けて業績管理しています。事業というのは「シニア」(3タイプの有料老人ホーム)、「貸しコンテナ」(地主の土地有効活用)、「アパートの空き室対策」のことです。有料老人ホーム事業は病院、地主に話を持ちかけてから建物を建て、オープンさせるまでに1年あまり時間がかかります。このため、会社を設立した当初は資金的な余裕がなかったので、これをバックアップする事業として貸しコンテナと空き室対策を始めたのですが、将来的には事業ごとに分社化する予定です。ちなみに2010年6月期の売上は前期比約30%増の約14億円で、うち約9割がシニア事業、残りが貸しコンテナと空き室対策事業となっています。
武田勝行管理部係長 シニア事業のもとに28施設があって、その施設ごとの損益管理を『FX4』の部門別で行っているということです。
――同じ有料法人ホームでも、住宅型「アヴィラージュ」と介護付「あいらの杜」では、売上の中身が違いますよね……。
上川 はい。住宅型の月次ベースの売上は、入居者が支払う「入居費(部屋代+食事代+共益費)」からなりますが、介護付はこれに入居者の要介護(1〜5)に応じての「介護報酬」(入居者の自己負担は1割)がプラスされます。ただし、介護保険法で介護付は「入居者3対職員1」と定められているため、人件費は住宅型に比べて余計にかかります。職員というのは、直接サービスを提供する介護士と看護士のことで、施設長などは含まれません。当社のあいらの杜では1施設当たりのスタッフ数は全部で30名くらいで、住宅型のそれは8〜10名です。
木下 住宅型有料老人ホームで介護サービスを提供しているのが連携先の病院であり、その病院が介護保険料(施設所在地の都道府県国保連合会)を請求するわけです。
上川 例えば06年4月に岡山市にオープンした「アヴィラージュ大安寺」では、入居者のほぼ全員が光生病院(連携先)の介護サービスを、7〜8割の方が訪問診療(往診)を受けています。
――毎月の売上データなどは、どういう方法で『FX4』に入力されているのですか。
武田 売上や経費に関しては市販の販管ソフトを使って管理しており、月末に一括してそれらのデータを『FX4』に入力しています。
――施設の変動費は何ですか。
武田 変動費は委託先の給食業者に支払う食事代くらいです。一方、人件費以外で、固定費で大きいのは地主に支払う借り上げ家賃です。
上川 借り上げ家賃は場所(岡山と首都圏等)によって異なり、それは1室当たりいくらという形で地主と契約します。部屋が“収入源”のため、満室の施設とそうでない施設では収益性が違ってきます。
――高齢者が入居しているいないにかかわらず、部屋の家賃は発生するということですね。
上川 そうです。だいたいオープンしてから3、4ヵ月で満室になりますが、なかには入居率が低いところもあり、そこは施設長が中心になって販促活動を展開し収益改善していきます。が、前述したように当社は病院と連携して事業を行っているため、例えば退院した患者さんの“受け皿”として利用してもらうこともあります。病院などからの口コミ紹介が多いのも、当社ならではの特徴ですね。
木下 現在は建物自体が比較的新しいので、修繕費はほとんど発生していませんが、今後は水回り部分を修繕したり、クロスを貼り替えたりすることも出てくるでしょう。その経費を施設ごとに予算化し、毎月進捗管理することが収益力を高めていくうえで重要だと思います。
――月額の入居費は一般のアパートと同様、前家賃ですか。
上川 はい。また、入居の際に保証金を預かっています。これはアパートにおける敷金と同じようなものです。したがって、会社全体の入居率がある水準に達すれば、適正な利益を獲得できる一方、資金繰りについても金融機関にほとんど頼らずに自前で回していくことができます。
――最後に今後の事業展開をお聞かせください。
上川 3年後には全国100棟(5000室)体制を達成したいというのが当面の目標です。そのために大和ハウスや日清医療食品と提携したわけですが、今の段階から「5000室のときの経費」を視野に入れて施設を運営していくことが大切だと考えています。今の入居者の満足度を維持しながら、仮に1室当たり月に1000円の経費を削減することができれば5000室だと500万円となり、年間6000万円の利益をあげることができます。その仕組みを今から作っておくことが肝心であり、それが結局、「安価で安心な高齢者の住まい」を提供し続けることになるわけです。
(本誌・岩崎敏夫)
| 名称 | ● | 株式会社はれコーポレーション |
|---|---|---|
| 業種 | ● | 有料老人ホームの運営管理 |
| 代表者 | ● | 上川敏文 |
| 所在地 | ● | 岡山県岡山市北区表町1ー5ー1 |
| TEL | ● | 086-803-5080 |
| 売上高 | ● | 約14億円 |
| 社員数 | ● | 213名 |
| URL | ● | http://www.hale.co.jp/ |
| 顧問税理士 | ● | 木下信一 木下税理士事務所 岡山県岡山市上中野2-7-3 086-243-9841 |