「記帳適時性証明書」の解説

●この「証明書」は、TKC全国会(注1)に所属する税理士または公認会計士の事務所が、TKCシステムを利用して、期中においては毎月、関与先企業に出向いて巡回監査(注2)を実施し、月次決算を行い、さらに期末においては、決算書と法人税申告書等を作成し、税務申告を電子申告で行った場合──に発行されます。

TKCでは、これら一連のコンピュータ処理をクラウド方式で受託しており、その全プロセスにわたって処理記録(ログ・データ)を収集し、この「証明書」を自動発行しています。

●会社法第432条は、「株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」と規定しています。この「証明書」は、その適時性並びに計算の正確性を証明するものです。(内容の正確性を証明するものではありません。)

●この「証明書」の発行目的は、会計事務所が関与先企業の経営者に対して、会社法が求める会計記帳の適時性を証明する資料を提供することですが、併せて関与先企業が金融機関等に融資を求める際に、その決算書が期中に作成された会計帳簿と完全に一致していることを証明する手段として活用することにあります。

TKCシステムでは、過去の仕訳および過去の勘定科目残高に対する追加・修正・削除の処理を禁止しています。また、勘定科目の前期末残高は当期首残高に自動的に切り替わるため、コンピュータの裏操作により期中および期末の勘定科目残高が改ざんされることはありません。
 そのため、数年にわたってTKCシステムの利用を継続している企業の決算書については、会計帳簿の裏付けと計算の正確性は確保されている、と見なすことができます。

TKC会員による巡回監査および月次決算は、毎月、関与先企業が作成した会計資料並びに会計記録を対象として翌月に実施することを原則としています。これを遵守した月には「注」欄に◎印が示されます。ただし、期首第一月の月次巡回監査及び期末整理を伴う決算巡回監査については2か月遅れでも妥当とされています。

●この証明書の資料1に示す「仕訳数」は、各月の巡回監査および月次決算の対象となった取引の件数です。売上高および仕入高等について取引の都度計上することなく、日々の総額あるいは月間の総額を一括計上している場合は仕訳数は少なくなります。TKC会員事務所では巡回監査の直後に月次決算(データ処理)を実施しています。

●この「証明書」の左下にある「S:書面添付(税理士法33-2)」の欄は、当関与先企業の法人税申告に当たり、TKC会員が税理士法第33条の2が規定する書面を添付したかどうかを証明しています。
 この書面は、いわば「決算申告確認書」と言えるもので、その目的は、税理士が租税法規に従い、独立した公正な立場において高度な注意義務を果たしたこと、さらに誠実義務と忠実義務(説明責任)を果たしたこと──を明らかにすることです。

TKC全国会では、すべてのTKC会員に対して「書面添付」を実践することを求めています。なお、税理士がその書面に虚偽の記載をした場合は懲戒処分を受けることになります。また、税務当局が適正な書面と認めた場合は、税理士に対して「税務調査省略通知書」が発行されることになっています。

●正しい記帳指導と迅速な月次決算は、関与先企業の経営改善に役立ちます。TKCでは、これらの財務会計と連動して黒字決算の実現に役立つ「F:FXシリーズ」及び中期の経営計画を策定する「K:継続MAS」を提供しています。

●この「証明書」は、株式会社TKCからTKC会員に対して提供されます。紙に印刷された証明書を検証する場合は、TKC全国会ホームページ(https://www.tkc.jp/)から確認することもできます。

(注1)TKC全国会は、昭和46年8月17日、TKCシステムを利用する税理士・公認会計士によって結成され、現在1万名を超える会員(TKC会員)が参加しています。
 その事業目的は以下の6つです。
1.租税正義の実現
2.税理士業務の完璧な履行
3.中小企業の存続・発展の支援
4.TKC会計事務所の経営基盤の強化
5.TKCシステムの徹底活用
6.会員相互の啓発、互助及び親睦

(注2)TKC全国会の「TKC会計人の行動基準書」(昭和53年1月20日制定)において、巡回監査を次のように定義しています。
「巡回監査とは、関与先企業等を毎月及び期末決算時に巡回し、会計資料並びに会計記録の適法性、正確性及び適時性を確保するため、会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめ、かつ指導することである。
 巡回監査においては、経営方針の健全性の吟味に努めるものとする。」
 この行動基準書に基づいて、巡回監査の手法は詳細に定められています。