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サイバーセキュリティはトップの責任
元内閣広報官 宮脇磊介
1932年東京生まれ。東京大学法学部卒後、警察庁に入庁。皇宮警察本部長等を経て86年初代内閣広報官に就任。現在は世界の犯罪組織などをテーマに評論・著作活動を展開中。



「Y2K問題」を大過なく乗り切ってホッとする間もない1月24日に端を発した一連の「官庁ハッカー事件」は、情報革命がグローバルに急速に進展するなかで日本社会がそのセキュリティにおいて意識と対策が著しく遅れている姿を広く海外に知らしめることとなった。
 日本は米国に次ぐ第2の経済大国であると同時に、第2のサイバー大国である。通信・交通・金融などあらゆる生活基盤は電子的なシステムによってコントロールされているし、立遅れていたインターネットの普及もここ2年の間に劇的に加速され、またインターネットに接続するiモードの携帯電話は日本独特の技術である。電子商取引も日増しに拡大し、電子政府も具体的なタイムテーブルに乗ってきた。市町村も行政改革のうねりのなかで、より多様にして大量のデータベースに責任を負うようになり、住民基本台帳法の一部改正を契機に自治体間のネットワークが構築されるなど、革命的な変化が多彩かつ急速に進められている。
 情報革命は、このような形を通じて行政や経済活動や国民生活に多大の利便を与える一方、そのシステムのセキュリティと個人のプライバシーの安全確保が決定的に重要だ。情報化の進展は、それだけ電子的な攻撃に対する脆弱性の増大をもたらす宿命を持っている。個人情報保護条例に基づいてプライバシーの保護をいかに厚くしても、サイバーセキュリティが甘ければ何にもならない。
 日本はなぜサイバーセキュリティに関する意識と対策が遅れているのであろうか。その答えは、日本のリーダー層の責任に求められる。日本の政治・行政・経済・ジャーナリズムのトップ層に牢固として残存する「文(科)系支配構造」の故に、日本の各界リーダーが科学技術に弱く、特に目に見えずしかも変化のスピードの速いITが実感できないところに大きな原因がある。技術的な問題を、トップ自らが理解してリーダーシップを発揮しないで、技術系の部下まかせにする風土が日本のいたるところに見られるであろう。それでは今日のサイバー戦争にもろくも敗れてしまうのだ。
 サイバーセキュリティは、トップの責任事項なのである。なぜならば、この問題は、攻撃してくる敵との戦争だからである。戦争に勝つには、ポリシー(方針)とストラテジー(戦略)が不可欠であり、それはまさしくその組織全体の責任を負うトップ自らの固有の役割りなのである。
 ネットワークが自治体相互に結ばれるようになると、そのセキュリティについて市町村各自治体の責任はまことに重大となる。世界のハッカーはいま、セキュリティの低い日本に関心を寄せている。劇画的なイマジネーションを働かせて対策を講じることが焦眉の急となっている。



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