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◆いよいよ新たな千年紀が幕を開けました。市町村にとって今年は地方分権の時代へ第一歩を踏み出す年でもあり、その意味でいま最も動向が注目されるのが「住民基本台帳ネットワーク」といえるでしょう。そこで本日は、改正法施行までの予定や心構えなどについてお話しをうかがいたいと思います。
山口 
ご承知の通り、住民基本台帳ネットワークシステムの導入に係る「住民基本台帳法の一部を改正する法律」が昨年8月12日に成立、18日に公布されました。
「住民基本台帳法」は昭和42年に、住民の住所に関する届出などの簡素化、および住民に関する記録の適正な管理を図り、住民の利便の増進、国および地方公共団体の行政の合理化に資することを目的に制定されました。そして、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録など各種行政事務の基盤として活用されてきました。
 また、かなり早い段階から電算化も進み、昭和60年の法改正で磁気ディスク等での作成が可能となったことから、システム普及に一層拍車がかかり、現在、100%に近い市町村でコンピュータによる処理が行われています。
 今回の法改正は、こうした住民基本台帳の役割を踏まえながら高度情報化社会へ対応するために、全国共通の本人確認ができる仕組みとして“全国規模のネットワーク・システム”を構築するものです。これにより「住民の負担軽減・サービスの向上」「国・地方の行政改革」が期待されています。

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やまぐち・ひでき
1963(昭和38)年生まれ。
86年、東京大学法学部卒、同年自治省入省。
宮城県庁、長崎県庁への出向を経て、
96年、消防庁救急救助課課長補佐、
97年、自治省行政局地方分権推進室課長補佐に。
99年10月から現職。

すべての市町村をつなぐ21世紀の行政情報基盤

◆これからの行政情報のインフラ部分を整備しようということですね。
山口 
そうですね。これまで3,300の市町村が個別に行ってきた住民基本台帳事務をつなぐことで、住民票の写しの交付など住民基本台帳事務の合理化を図り、都道府県・指定情報処理機関(全国センター)に本人確認情報(氏名・住所・生年月日・性別・住民票コード・付随情報)のデータベースを作り、法令の定めに従って国の機関等に提供できるようにすることで、住民負担の軽減と行政の合理化に役立てます。また、大切な住民基本台帳情報についての災害時のバックアップなどにも役立ちます。
 そうした点では、住民基本台帳ネットワークは、まさに21世紀の行政の基盤となるシステムといえるのではないでしょうか。
◆さて、住民基本台帳ネットワークは、都道府県のサーバ・コンピュータと各市町村に設置されるコミュニケーション・サーバを専用回線で結ぶ「都道府県内ネットワーク」と、47都道府県のサーバを専用回線で結ぶ「全国ネットワーク」の二段階で構成されるそうですね。
山口 
はい。住民基本台帳ネットワークシステムは、市町村が行っている住民基本台帳事務の基本的枠組を維持しながら、そのネットワーク化には都道府県が大きな役割を担います。ただし、事務処理の効率化・正確性のため全国的組織が一括して行うことが適当な事務については、都道府県知事からの委任に基づいて事務を行う「全国センター」を設けることとされています。したがって、全国の市町村、都道府県、全国センターを専用回線でつなぐことになるでしょう。具体的には今後、都道府県で協議して決めていくこととなりますが、「都道府県ネットワーク」「全国ネットワーク」のようなものになると考えています。
◆住民票コードについては、先の通常国会でも国民総背番号や個人情報保護が争点となりました。特にプライバシーの問題は公的機関や民間の個人データが漏洩するなど事件が相次いでいることから、どうしても不安感が先に立つようです。
山口 
おっしゃるとおりです。前者については「何をもって国民総背番号とするのか」という議論にもなるかと思いますが、住民基本台帳ネットワークの目的、また仕組みを考えても国が個人情報を一元管理するという総背番号制の発想とはまったく異なるものです。
 例えば、市町村の住民基本台帳事務をつなぐ基盤は整備しますが主体はあくまでも地方ですし、また都道府県や全国センターのサーバに記録・保存する情報は本人確認情報に限定され、さらに国へのデータ提供も法律等で認められた事務以外での利用は禁止されています。
 一方、個人情報保護については、住民基本台帳ネットワークシステムにおいても極めて重要な課題であり、そのため『OECD8原則』などの国際基準を踏まえた〈制度上、技術上および運用上の保護措置を講じること〉を盛り込んでいます。
 具体的には、1. 都道府県や全国センターが保有する情報は本人確認情報に限定する、2. 住民票コードはランダムに決め、本人からの請求でコード変更ができる、3. 一般的な公務員の守秘義務よりも重い罰則を定める、4. 民間の利用や告知要求の禁止、などです。また技術面でも、1. 専用回線の利用、2. 情報の暗号化、3. 認証チェック、4. アクセス監視、などの防止措置を整える予定です。◆今後の政省令で細部を定めるということになるのでしょうか。
山口 
これから政省令で定めていく部分もありますし、技術上の措置についてはシステムの検討の中でつめていくものもあります。また、政省令等の内容に基づき、各地方公共団体でさらに細部をつめていただくこともあると思います。
なるほど。全国の市町村を結ぶ情報通信網の整備で、電子申請や電子選挙など、行政と住民とがネットワークでやりとりする日もぐんと近づいたようです。長期的な展望としては、今後どうなっていくとお考えですか。
山口 
正直なところ、まだ具体的な話ができるまでの検討には至っていませんが、今後、行政の情報化の要請、必要性が高まるのは間違いないでしょう。住民基本台帳ネットワークについても「その利用できる事務を拡大すべき」との意見がありますが、そのためには法改正が必要であり、国会で議論をして決めていただくことになります。
 いずれにしても、いまは何よりも住民基本台帳ネットワークを3年以内に施行できるように準備を進めることが大切だと考えています。

広域発行や住民基本台帳カードの計画前倒しも視野に入れた準備を

◆市町村でもこれから準備作業を進めていくわけですが、施行時期は新年度が始まる「平成14年4月1日」と考えるべきなのでしょうか。
山口 
確かに考え方としては、年度の区切りに合わせる方法もありますが、そこはこれからのスケジュールの進捗具合によるでしょうね。
 今後の予定としては、大きく三段階に分けて考えられます。まず第一段階が全国センターの指定や守秘義務の罰則規定など準備のために必要な事項で、これについてはすでに昨年10月1日から施行しました。また、第二段階が制度の基本的な仕組み作りの部分で、法律の公布の日から3年(平成14年8月)以内にシステムを整備することになります。さらに、第三段階が住民票の写しの広域交付や転入転出の特例、住民基本台帳カードに関わる部分で、これについては公布から5年(平成16年)以内に行うこととされています。
 ただ、広域交付や転入転出の特例等は住民の利便性向上に直接関係しますので、できれば住民基本台帳ネットワークの基本的な部分の構築と同時期にスタートできればと考えています。
◆介護保険は正味2年ちょっとで準備をしたわけですが、期間が短い上に公表される情報が毎回微妙に変化したこともあって、市町村の担当職員の方は大変苦労されました。その点、住民基本台帳ネットワーク構築については、ぜひ一日でも早く明確な情報を出していただけることを期待しています。
山口 
そうですね。そのためには、どういった形でシステム全体を構築するのかという議論が急がれるでしょう。このため全都道府県による推進協議会を昨年10月20日に発足していただき、また11月1日には指定情報処理機関を指定いたしました。さらに、各都道府県ごとに都道府県と市町村の連絡会のようなものを作っていただくようお願いしています。
 今後、具体的な検討が進められていきますが、おおよそのスケジュールとしては、平成12年度の途中でシステムの全体の設計内容等を市町村へ説明し、これに基づきそれぞれの準備を進めてもらって、13年度中にはすべての市町村がハードの設置を完了する、というのが目標です。そして14年度に稼働テストを実施した上で、何とか施行日に間に合うようにしたいと考えています。
◆システムの全容が明らかにされるのは、いつ頃の予定ですか。
山口 
各自治体が予算編成をする必要があるので、12年9月の補正予算の編成に間に合うように説明することになるのではないかと考えています。

イニシアティブをとるのはあくまでも地方だ

◆これを機に、市町村合併へ拍車がかかると見る向きもあるようです。
山口 
たまたま、いまの振興課の大きな柱が「住民基本台帳ネットワークの構築」と「市町村合併推進」のため、そうした見方をされることもあるのかもしれませんが、仕事としては完全に切り離して考えていますよ(笑)。
 しかし、住民基本台帳事務の担い手はこれまでも、今後も市町村です。そのネットワーク化を図るということは、いわば全国の市町村をつなぐことにもなりますね。今年の4月1日から地方分権一括法も施行されます。今後は国と地方が互いに協力し合い個性豊かな地域社会の実現を目指すことになるわけで、その意味でも住民基本台帳ネットワークの構築は、大きな意義があると思います。
◆山口課長補佐も、しばらくご多忙な日々を送られることになりそうですね。
山口 
そうですね。我われも精一杯頑張りますが、あくまでもイニシアティブをとっていくのは都道府県と市町村で、それをサポートするのが我われの役目です。
 しかし、3年という期間は長いようで短い。いまは介護保険制度の立ち上げも重なり、市町村の皆さんにとっては大変な時期だと思いますが、21世紀の行政基盤整備のために「ぜひ一緒に頑張ってください」と、この場を借りてお願いしたいと思います。



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