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◆いよいよ『Windows2000』が登場しました。思えば、それまでマニアックな印象の強かったパソコンを今日のように一般大衆にまで広めるきっかけを作ったのが『Windows95』でしたが、このWindows2000も新しいネットワーク社会の黎明を告げるOSといえそうです。その特長とは、どういったものなのでしょうか。
成毛 
このOSの特長は〈信頼性〉〈セキュリティ〉〈TCO(システムにかかる総コスト/Total Cost of Ownershipの略)の削減〉の3つです。よく、従来と比べ何がどう変わったのかというご質問を受けますが、Windows2000の最大のポイントは〈情報システム部門が、一元的にユーザーのアプリケーションや環境をコントロールできるようになる〉ことといえるでしょう。
 例えば、クライアントパソコン側に、そのパソコンを使うユーザーにとっては必要ではないソフトまで載せていることがありますが、Windows2000は、こうしたソフトをサーバ上で一括管理するため余分なソフトをユーザー側に配備することがなくなる。これは「システムの管理コストを抑える」だけではなく「安全なシステム運用」にもつながります。
 この効果を最大限に発揮させるためにも、ぜひ、すべてのサーバとクライアントを切り換えていただきたいですね。
◆なるほど。システムの信頼性・セキュリティ・コスト削減の3点は、行政の情報化を進める上で最も気になる部分です。ところで、TKCがWindowsNT4.0対応のシステムを提供し始めてからちょうど5年になりますが、NTの商品寿命はかなり長かったといえますね。
成毛 
そうですね。パソコンがこう多機能になってくると、プラットフォームとしてのOSの役割も一段と増し、比例してそのプログラムも大きくなります。このため開発に時間を要したことは事実ですが、それだけではありません。
 確かに、ユーザーからは「プラグアンドプレイや高度な電源管理機能に対応してほしい」などの要望が数多く寄せられていましたが、NT4.0は主に基幹システムで使われているため頻繁にバージョンアップを行えばそれだけシステムコストも増大する。ユーザーのメリットを考えれば、要望事項への対応を後回しにしても細かいバージョンアップはすべきではない、と判断したものです。
 その意味で、Windows2000は究極の“NT後継OS”ともいえると思います。恐らく次にWindowsが大幅にバージョンアップするのは、数年先になるのではないか…。これだけOSのプログラムサイズが大きくなると、とても“2001”とか“2002”なんて出せませんよ。

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住民が中心となる「情報化社会」市町村は古い常識や発想を捨てよ!

◆最近、『IT(情報通信)革命』『デジタル革命』などと盛んにいわれますが、これについてはいかがお考えですか。
成毛 
かつて『MIS』『ERP』『BPR』などというものもありましたね。でも、もう言う方も聞く方も飽きてしまった…。どうも言葉ばかり先行しますが、はっきり言って、こうした言葉はどれもコンピュータ屋さんの“キャッチフレーズ”でしかないと思います。つまり「すかっとさわやかコカコーラ」の“すかっとさわやか”の部分ですね(笑)。
 マスコミなどもすぐにいろいろな用語を作り出しますが、もう、そんな時代じゃないと思いますよ。言葉自体にあまり意味はないんです。IT革命といっても「何でもかんでもデジタル化されるんだ」ということで、それ以上でもそれ以下でもない。重要なのは、それに伴う社会変化をいかにつかみ、組織や事業形態をどう変えていくかということでしょう。
◆おっしゃる通りですね。そうしたことでは2002年8月には国・県・市町村を結ぶ『住民基本台帳ネットワーク』が動き出し、2003年には『電子政府』も実現するなど、市町村にも変革が迫られています。このような社会変化が行政に与える影響をどうご覧になりますか。
成毛 
大きく分けて二つの領域で影響があると考えています。1つは、いままで紙で処理していたすべての事務手続きがデジタル化されることです。早いところでは2000年の下期に、ほぼ100%電子化されるでしょう。これによって国や企業、自治体同士の競争優位が明らかになる。そうなれば遅れているところも追随せざるをえなくなると思います。
 そしてもう1つ。会社組織であれば一般社員、国であれば国民、自治体においては住民、あるいはモノの売買ならば消費者が、経営陣・国・市町村・サプライヤーよりもスピーディーかつ豊富な情報を持ち始めるということです。
 これはかつてない大きな変化だと思いますよ。
 従来は、例えば一般社員が課長へ電話して、課長が売り上げを集計し部長へ提出し、部長はそれを常務会に上げて、常務会から社長に渡り会社の方針が決まる…という具合に、すべて1対1のコミュニケーションで成り立っていました。これは国や自治体も同じだったわけです。これまでの時代であれば、この手段は非常に効率的でしたが、ここ10年ほどで急激に変わりました。
 「日本の行政効率は悪い」といわれていますが、比較論として悪いというだけで決して退化したわけではありません。一方、「米国の行政は効率的だ」といわれますが、その最たる理由は住民や民間企業が持つ質の高い情報をうまく活用しているということです。いまやインターネットやケーブルテレビなどのメディアにより、住民は行政側が考えるよりもはるかに的確な情報を持っています。環境問題などはまさにその典型的な例といえるでしょう。どこへ橋を架けるべきかも、案外、住民の方がよく分かっているかもしれない。
 こうしたなかにあって、いま市町村へ求められるのは「古い体質から脱却し、行政のメカニズムを作り替える」ことです。そのためにも、従来のような単純に紙をデジタル化する“情報化”では「情報化投資が増え、残業は増えるが、給料や人員は増えない」という三重苦に陥るだけで、今後、より多様化・複雑化するであろう住民の声に的確に対応していくことは難しいでしょうね。
◆つまり、官民のパートナーシップということですね。最近、町づくりに地域住民の専門知識を積極的に活用したり、住民の意見を反映させる自治体も登場し始めていますが…。
成毛 
ただ、住民にフリーディスカッションしてもらうだけではなく、行政もその一部だと認識しなければなりません。もはや、「開かれた行政」「住民の意図を汲み上げる行政」ということではないんです。行政は政策実行者であって、政策決定者ではない。ネットワーク社会の中心となるのは、サービスを受ける側、つまり住民なんです。この傾向は今後、さらに進むと思いますよ。

これから伸びる市町村、沈む市町村その分岐点とはいったい何か?

◆今後、市町村が特に注目すべきITとは何でしょうか。
成毛 
やはり、インターネットにどう対応するかということでしょう。長い目で見れば、省庁間や都道府県、市町村間の情報交換をインターネット以外でやるというのは想像しにくいですからね。
◆と、いいますと?
成毛 
例えば、米国では軍の情報のうち85%がインターネット上でやりとりされています。湾岸戦争の時のロジスティックも、ほぼ100%インターネットだったそうで、いま現在、何の戦車がどこにあるかということもすべて分かっていたといいます。ましてや、日常的な情報を専用回線でやる必要なんてないでしょう。なぜなら、インターネットの方が早くて安上がりですからね。インターネットというと情報漏洩などマイナス面ばかり指摘されますが、変革の波の前には、こうした指摘もいずれ単なるノイズに過ぎなくなると思います。
 ネットワークであらゆる情報がやりとりされるようになれば、当然その量も膨大なものとなり、専用回線では追い付かなくなることは目に見えており、また、どこかで「この情報は非公開だが、この情報は公表してもいい」という割り切りをしなければ行政コストも際限なく拡大してしまう。そう考えると、やはり最終的には国や自治体もインターネット活用へと向かわざるをえないでしょう。
◆とはいえ、まだまだ時間はかかるでしょう。
成毛 
しかし、あと20年もすれば、われわれよりも若い世代がリーダーとして時代を担っているわけです。彼らはいまでもインターネットを自在に使いこなしており、その頃にはインターネットが当たり前になっていると思いますよ。
◆われわれ自身、これまで「情報システムは行政効率化のための道具」として考え、その結果「住民とどう関わり、いかに情報を提供していくか」という視点が欠けていたと反省しています。この点、いま新しいシステム提案に取り組み始めました。例えば、固定資産税の行政事務と地図情報を重ねて、画面上で土地を指せばそこに住んでいる人の住民情報が表示される、などという行政サービスに近い部分ですね。市町村にとって、こうした新たな情報化への対応がここ数年の重要課題となるでしょう。
成毛 
そうですね。NTTドコモの携帯電話『iモード』では現在空いている救急病院を検索できるそうですが、これは病院側がいま空いているかどうかを自分で情報登録しているからこそ可能なサービスです。これも一種の情報化ですよね。これによってその病院へ来院する患者数が変わるでしょうし、最終的には患者個人の利便性が格段に向上するわけです。
 先ほども申し上げたように、これからはサービス提供を受ける側――つまり市町村にとっては住民ですが、これを中心としたネットワーク型の社会になるといえます。そのためには従来型の一対一の関係ではなく、n対n(複数対複数)のネットワーク型のコミュニケーションを考えるべきでしょうね。そうした時代の変化に合わせて行政のメカニズムをどこまで変えられるかが、今後、その市町村や地域が伸びるか、あるいは衰退するかの分岐点になると思います。
◆われわれは、いま重要な転換点を迎えたといえますね。そのためには組織も戦略的かつフレキシブルに変化すべきだと思いますが、その点について組織のリーダーとしては、いかがお考えですか。
成毛 
当社の場合が戦略的といえるかどうか分かりませんが、時代に合わせて組織をどんどん変えるのは当り前のことでしょう。いまや、ドッグイヤーどころかマウスイヤーとさえいわれる時代です。そうした時代を生き抜く組織のリーダーとしては、「朝令暮改は当然」という意識改革も必要といえるのではないでしょうか。



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