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市町村へ拡がる
事務事業評価システム導入の動き
福岡県甘木市http://www.city.amagi.fukuoka.jp/


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甘木市役所山川信義企画課長(右) 鹿毛哲也主任主事〔左)



市町村が提供するサービスは、道路や上下水道などのインフラ整備から個々の住民に対する教育や介護・福祉、健康維持に至るまで実に多彩だが、民間企業とは違って財政難でもサービスを中止するわけにはいかない。限られた財源と人的資源で、的確なサービスを効率的に提供するには何をどうすればいいのか――試行錯誤が続くなか、いま「行政評価」が注目されている。

流行だからやるのか?

日本で行政評価への取り組みが本格化したのは90年代後半のこと。当然、それまでにもいろいろな形で行政業務の見直しが行われてきたが、いま市町村に求められているのは“顧客(住民)”へ最適な事業を提供する“サービス”業への発想転換だ。
 現在、三重県を筆頭に都道府県では行政評価や事務事業評価の実施・検討が進められ、その動きは次第に市町村へと広まりつつある。これらの自治体では欧米の事例を参考に評価システムを構築するケースが多いが「コンサルタント会社への委託費用がン千万円」ともいわれる一方で、専門家からは「形式にとらわれて何が目的なのかという議論が欠けている」という指摘もある。
 こうした状況のなか昨年10月1日、福岡県甘木市が全国の市町村へ呼びかけて『事務事業評価システム研究会』を発足した。
 甘木市の山川信義企画課長は、その狙いについて「平成13年度から始まる第四次総合計画に向けて事務事業評価システムの検討を開始しました。でも、いま語られている行政評価の考え方が甘木市に適しているのかどうか正直いって分かりません。同じような悩みを抱える市町村は多いはずで、ならば評価システムを作る過程をオープンにして参考としてもらい、逆にいろいろな意見をもらえればと考えました」と語る。
 市町村の職員などが集まるこの研究会の活動の場はインターネット。電子メールを送るとそれが参加者全員へ自動配信される『メーリングリスト』を活用し、情報交換や事務事業システムの評価方式などの研究開発を行っている。参加費が無料とはいえ発足から3ヵ月が過ぎても加入申込が後を絶たず、すでに70団体を突破。この反響の大きさに事務局担当の鹿毛哲也主任主事も「登録作業が間に合わない」と苦笑する。

画期的な制度もいつしか疲労する

 甘木市のホームページにある『目標管理制度のあらまし』を見ると、市の実施要項や報告書例などが広く公開されている。
 市が目標管理に取り組んだのは昭和63年からで、第三次総合計画の実施にあたり〈すべての事務事業の執行について達成すべき目標を定めてその管理を行うことにより、市政の計画的かつ効率的な執行を確保し、併せて職員の能力開発を促す〉ために導入したという。
 具体的には、1. 予算編成時にそれぞれの目標を設定し、2. 部長および市長のヒアリングを経て優先順位を決定、3. 進捗状況を四半期ごとに確認する、というもの。甘木市ではこれまで、この制度に則って独自性あふれるまち作りを行ってきた。
 例えば日本初のシニアタウンとして全国から注目される『美奈宜の杜』がそうで、ここは住宅だけでなく道路や施設などまち全体が高齢者中心に設計されており3年間で約100世帯200人が移住したという。
 ところが、そんな画期的なシステムにも時代の流れとともに軋みが出てきた。
「最も重要な戦略である総合計画が個々の業務と結びついておらず、なぜ目標を設定するのかという職員の意識が希薄となって、気がついたら住民ニーズとの間に大きな隔たりが生じてしまいました」(山川課長)
 こうしたことから平成8年に制度を大幅に見直し、さらに今年度から第四次総合計画の要となる事務事業評価システムの検討を開始するに至ったのである。

新たな展開が期待される研究会

 地方分権時代の到来で、行政にかける住民の期待は日増しに高まっている。
 だが、各市町村が置かれている状況は千差万別。先行する自治体の評価システムは参考にはなるが、そっくりそのまま導入してもその市町村が期待する成果を上げることは難しい。むしろ行政評価の目的を考えるならば、甘木市のように自分たちがいま抱えている問題を一つずつ解決していく姿勢こそが本来の姿なのではないか。その点でも、リアルタイムに実務担当者同士が情報交換や議論を行える「事務事業評価システム研究会」は、面白い試みといえる。
 山川課長は「行政評価を検討・実施する上で大切なのは職員の意識だと思いますが、これは職員研修だけでは変えられません。研究会という外部からの刺激は職員の意識改革にもつながるでしょう」と話す。
 そんな期待も込められ船出した事務事業評価システム研究会は、参加登録作業が落ち着き次第、具体的な事例研究を始め、大学・研究機関などとの交流も検討されているという。この活動は平成13年3月でひと区切りを迎えるが、「ここで培った人的ネットワークをいかし環境や福祉といったテーマで第二、第三のメーリングリスト研究会を立ち上げたい」(鹿毛主任主事)と次の構想も計画されている。
 いよいよ新千年紀が幕を開け、経済同様に行政もまた“新生”の年を迎えた。こうした研究会が今後どのように展開していくのか、とても興味深い。



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