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公平・迅速な認定審査と
関連事務の効率化に奥の手はあるか?
西日本新聞社メディア開発局局長 古賀透


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鳥栖地区広域市町村圏組合の認定審査会風景(模擬)



いよいよ、4月1日から介護保険制度がスタートする。市町村では、昨年秋から要介護・要支援の認定作業を進めサービス本番に備えてきたが、この作業、予想以上に煩雑で手間もコストもかかり担当者泣かせ。こうしたことから、いま『介護保険認定審査会支援システム』が注目されている。

 厚生省の推計によると、寝たきりや痴呆、虚弱などにより介護や支援を必要とする高齢者は現在約270万人、平成37(2025)年には520万人に達するという。
 こうした高齢者が適切なサービスを受けられるようにするため、市町村には〈個々の生活全般の状況を総合的に把握し、最適なサービスを提供する〉ことが求められている。そのサービス内容を判定するのが、医師や保健婦、福祉施設関係者などで構成される『介護認定審査会』だ。

煩雑な認定審査会の関連事務

 1月26日に開催された全国介護保険担当課長会議の資料によれば、介護認定審査会の実施状況は12月末現在で3245団体(99.8%)で、90万9305人の認定審査が行われた。だが、申告受付総数(148万3991)に対する審査の進捗率は61%と、サービス開始を直前に控え予想以上に審査会が難航している様子がうかがえる。
 一般に、1回の審査会で数10人程度の判定が行われ、審査時間は1人あたり平均5分ほど。その短い間に調査票、特記事項、主治医の意見書などを確認し合議の上、判定を下すのだから、審査を行う委員は大変だ。会議の基礎資料となる主治医意見書の記入漏れ、訪問調査との意見の食い違い、達筆な手書き意見書が判読できない、なども予想以上に審査時間を長引かせる原因となっている。しかも、要介護・要支援認定は6ヵ月ごとに見直され、状態が大きく変化した場合には即変更も行われる。
 当然、これらに伴う資料の整理・確認、コピーや委員への事前配布など市町村側の事務量も半端ではなく、コストも膨大なものとなる。こうしたことから認定審査業務の支援システムが注目されているわけだ。

人と人を結ぶシステム

 手際よくミスのない審査会がやれないだろうか――98年夏、市町村からそんな相談を持ちかけられたのが、西日本新聞が介護保険認定審査会支援システム『Rabbit』を開発したきっかけだった。
 新聞社がなぜソフト開発を? と聞かれるが、西日本新聞は九州・山口を発行エリアとし「地域とともに…」と社是にうたう。過去30年、地域や読者に役立つソフト開発を――と努めてきた歴史と実績がある。システム開発もその延長線にあったといえるだろう。現在、システムが稼働しているのは、佐賀中部、鳥栖地区のほか、福岡県中間市、小郡市の4ヵ所で、3月には長崎県下五島(福江市など)でも動き出す。
 さて、Rabbitの特長は、1. 要介護認定申請の受付、2. 訪問調査、3. 主治医の意見書の配布・回収、4. 審査会資料の突合チェック、5. 認定審査会の運営、6. 二次判定結果の管理・通知、7. 進捗管理、など要介護・要支援認定に関わる一連の作業をひとつのシステムで処理することができる点だ。
 なかでも最大のポイントは、審査会にパソコンをフル活用していること。これにより、市町村の担当者が事前に審査対象者の資料をまとめておくなどの手間が省け、コピーや紙代、それに関わる職員の人件費などを節約することができるというわけだ。また、議事内容や審査経過の記録が可能で、医学用語や法律用語の辞書機能を持たせることもできる。さらに、パソコン・データならば紙の資料のように保存や破棄で頭を悩ませずにすむだろう。
 審査委員のなかにはメカ・アレルギーの人もいると思われるが、すべてマウスで操作するため心配はない。

市町村に高まる情報化への期待

 では、システムの導入効果はどの程度あるものなのだろうか。
 佐賀中部広域連合は、県都佐賀市をはじめ18市町村で構成され総人口36万余と大規模な介護保険広域連合だが、認定審査会では1件当たりの審査時間は3分強、申請総数のほとんどを2月初めに終えたという。
 また、隣り合う鳥栖地区広域市町村圏組合(鳥栖市と三養基郡5町で構成)でも認定審査は順調に進んでおり、システムの導入でコピーや送料、残業代など年間約270万円のコスト節減が見込まれている。
 制度の本質を考えれば、必ずしもスピードや低コストが優先事項というわけではないが、まず、こうしたシステムの活用により効率的な審査会を運営することが重要といえる。結果的に、それがミスのない公平な審査の実現へとつながるのではないだろうか。
 日本の高齢化は今後も急速に進展し、介護する側もされる側も高齢者という深刻な「老老介護」の時代が現実のものとなりつつある。介護保険制度のスタートが目前となったいま、その要である要介護・要支援の認定が遅々として進まないでは済まされないのである。


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