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電子政府の実現にむけて
東京工業大学工学部像情報工学研究施設教授 大山永昭
おおやま・ながあき 1954(昭和29)年生まれ。東京工業大学大学院総合理工学科物理情報工学専攻博士課程修了。93年から同校工学部付属像情報工学研究施設教授に。現在、各省の研究会委員としても活躍中。



 2000年11月27日、IT戦略会議は首相を本部長とするIT戦略本部に対し、わが国社会の情報化を推進することを目的とした「IT基本戦略」を答申した。これは今国会で成立し、省庁再編と期を合わせて2001年1月6日に施行される予定の「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」に位置付けられる国家戦略の基となるものである。この戦略には、1. 超高速ネットワークの整備と競争政策の導入、2. 電子商取引のためのルールの整備、3. 電子政府の実現、4. 人材の育成からなる4つの重点項目があげられている。
 電子政府というと中央政府の電子化をイメージしやすいため、IT基本戦略では、このような誤解を避けるために地方自治体を含むと明記している。言うまでもなく、一般国民から見れば、より身近な行政機関は地方自治体であるため、電子政府の実現は中央および地方の行政機関のすべてを電子化することが必須である。さらに電子政府の機能を高めるためには、これらの行政機関間を、ネットワークを用いて相互に接続することが必要であり、そのために霞が関の中央官庁間には霞が関WANが、地方自治体間には総合行政ネットワークが整備されつつある。
 電子政府を構築する目的としては、申請・申告のオンライン化等による国民の負担軽減と、行政手続きの見直し等による事務の合理化・効率化および行政機関のスリム化等が言われている。これらの目的の必要性は既によく知られているところであるが、電子政府を実現することのもう1つの大きな目的は、先の阪神淡路の大震災から得た教訓としての災害対策である。すなわち、いわゆるライフラインの敷設図や道路・橋等の設計図等に被害があると、災害地区の復旧作業を迅速に開始することが困難となり、結果として被害を大きくしてしまう。これを避けるには、現在は紙により作られているこれらの図面や各種の書面を電子化し、安全な遠隔地にバックアップを整備することが極めて有効である。
 電子政府の実現は、全国規模で情報インフラを整備するきっかけとなり、その成否は、日本の情報化の進展に大きく影響すると考えられる。情報インフラの構築は、単にネットワークやコンピュータを導入することではなく、価値化された情報を活用するための基盤作りであり、その結果、われわれみんなが極めて便利になったと実感できるようなサービスの提供を容易にすることである。
 社会全体の情報化の推進と真に価値のある電子政府を実現するためには、紙の情報と電子情報を同等に扱うことを可能とする環境の整備を早急に行うべきである。



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