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聖域なき構造改革と地方の覚悟
日本経済新聞論説委員
松本克夫



 「地方交付税の1兆円削減」「道路特定財源の一般財源化」――途中の段階で、刺激的な政府首脳の発言が相次いだため、小泉内閣の聖域なき構造改革に対して、地方から一斉に「異議あり」の声が上がった。
 構造改革の基本方針を審議する経済財政諮問会議の議論は初めは財務省ペースで進んだが、後で総務省が巻き返し、最終的な表現はかなり和らげられた。地方の反発はどちらかと言えば初めの段階のものだ。
 もっとも、最終的ないわゆる骨太方針にしても、地方にとって甘いものではない。
 国が過度に地方の事業に関与したことが財政膨張を引き起こしたとして、「自立し得る自治体」をつくり、「個性ある地方の競争」を促すことを目標に掲げる。そのために、補助金を減らすほか、地方債の返済の一部を地方交付税で穴埋めするような仕組みは縮小する。地方交付税の算定の際、人口の少ない町村への配分が優遇される段階補正も見直す。
 公共事業では、道路特定財源のあり方を見直すとともに、都市の再生や地方の個性あるまちづくりなどに重点配分する。
 来年度予算の概算要求基準で公共投資の10%削減が決まったが、今後予想されるのは、地方交付税や補助金の削減であり、公共事業の農村部への配分の縮小である。小規模の町村は存続がますます難しくなる。そこで用意されているのが「すみやかな市町村の再編」の方針である。
 7月初めに6年間の任期が切れた地方分権推進委員会(諸井虔委員長)は、最終報告で、国から地方への税源の移譲を提言した。これを受け、骨太方針でも「税源移譲を含め国と地方の税源配分について根本から見直す」という表現にしたが、税源移譲を明確にしたわけではない。
 これでは都市再生事業が増える東京などの大都市は別として、痛みばかりの地方も出かねない。反発するのはもっともだが、抵抗だけでは展望は開けない。対案が要る。
 地方が受け取る金を減らすなら、自由に使える金にしてくれと国に迫るのも手だろう。補助金の削減は認め、自主財源の増加を求めることだ。自由に使える金を活用して、公共事業に依存しないで地域経済が成り立つ道を模索しなければならない。
 衆知を集める必要もある。財政は縮小すると覚悟し、小泉首相が推奨する「米百俵」の精神を発揮することだ。長岡藩の場合には答えは教育だったが、各地域は崩壊を防ぐための答えを見出さなければならない。
 それには情報公開や行政評価、住民参加などの仕組みが欠かせない。無駄を省き、地域で最も優先順位の高いものは何か、合意を形成するための内部改革である。先駆的な試みは各地にある。秋田県鷹巣町は公募町民が福祉の計画作りをしているし、北海道ニセコ町は政策立案から評価までの各段階での住民参加を保証するまちづくり基本条例を定めた。
 現代の「米百俵」の精神は自治体改革なしには発揮できない。



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