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まつお・たけし 慶應義塾大学法学部卒。法務省民事局第三課・第一課補佐官等を経て、1994年福島、96年千葉、97年横浜の各地方法務局長を歴任し、98年には高松法務局長。99年4月退官、同年4月から現職に。



市町村が電子自治体を構築していくために、これから具体的に何を行っていけばいいのだろうか。また、そこで提供されるサービスはいかにあるべきか…。政府が掲げる「申請・届出等手続のオンライン化」へいち早く取り組み、昨年秋、インターネットによる『登記情報提供サービス』の提供を開始した、民事法務協会の松尾武理事に話を聞く。



◆いま、電子政府実現に向けて、各省庁においては行政情報化施策が急ピッチで進められています。これにより、平成15年度までには民間から政府、政府から民間への行政手続きの大半がオンライン化される見通しです。そうしたなか昨年、ひと足先にインターネットによる『登記情報提供サービス』が開始されました。まさに本格的なネットワーク社会の到来を実感させるものですが、まずは、そのサービス提供者である財団法人民事法務協会についてご説明いただけますか。
松尾 
 民事法務協会は、登記・戸籍・供託などの民事法務制度に関して知識の普及等、その発展と円滑な運営に寄与することを目的として設立された公益法人です。現在、登記所における登記簿謄抄本の作成業務や登記事務のコンピュータ化のための移行作業など、国の業務の一部を受託しており、『登記情報提供サービス』も、協会が全国唯一の指定法人として法務大臣の指定を受けてサービスを提供しているものです。昨年9月25日から、東京法務局のほか管区法務局管内の26庁の登記所を対象にインターネットによる登記情報のサービスを開始し、今年2月13日には新たに全国151庁の登記所を追加しました。サービス内容や対象となる登記所については、ホームページやパンフレット等で随時ご案内していますが、お陰様で利用者も順調に増えており、協会にはメールや電話による問い合わせも数多く寄せられています。そのほとんどは操作方法や利用手順、サービスの詳細、利用料金に関するものですが、なかには「最寄りの登記所がいつからサービスを開始するのか」といった質問もありますね。
◆電子政府は「国民サービスの飛躍的向上と行政運営の質的向上」を、その目標に掲げています。その点、『登記情報提供サービス』は、電子政府の“あるべき姿”の一端を提示したといえますね。
松尾 
 そうですね。『登記情報提供サービス』は、登記所が保有する不動産登記、商業登記、法人登記等の登記情報をインターネットを通じて確認できるというものです。これまで登記情報を入手するためには、不動産または法人の本支店を管轄する登記所まで出向いて登記簿の閲覧をしたり、謄本を請求する必要がありました。しかし、このサービスを利用すれば自宅や事務所に居ながらにして登記情報を確認できるため、利用者は時間と手間が大幅に削減されるわけです。そうした点で『登記情報提供サービス』は、今後のネットワーク社会における一つの道標になるといえるのではないでしょうか。それだけに協会としても、利用者へ適正かつ確実に情報を提供することはもとより、公正・迅速な業務処理と厳格な情報管理が求められるなど責任重大です。

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急拡大するネット社会にサービス手段の多様化は当然

◆サービスの仕組みは、具体的にどうなっているのですか。
松尾 
まず、利用者は自宅や事務所のパソコンから「登記情報提供サービス」のホームページへアクセスし、そこで個々に確認したい登記情報を特定するために必要な事項を入力して、民事法務協会へ登記情報の送信を依頼します。例えば、不動産登記情報であれば、これまで通り登記所に出向いて登記簿を閲覧する場合と同じように、対象となる不動産の所在とその地番、または家屋番号によって登記情報を特定するわけです。ただ、登記名義人の氏名による情報検索、いわゆる名寄せは、プライバシー保護の観点からできないようになっています。さて、利用者からの依頼を受けた協会は、専用回線を使って該当する登記情報を登記所のコンピュータへ請求し、その提供を受けて、インターネットで利用者へ送信します。利用者は、届いた登記情報を画面に表示したり、あるいは印刷したりして内容を確認する、という具合になります。このように言葉で説明すると大変長いのですが、この間の所要時間はわずか1〜2分程度です。ただし、サービスを利用するためには、あらかじめ会員となって利用者識別番号(ID)とパスワードを取得していただかなければなりません。なお、ご興味があれば、ホームページ上の〈ご利用の前に〉→〈登記情報の表示及び印刷の確認〉でネット閲覧の画面見本が用意されていますので、実際にご覧いただくのがよろしいのではないでしょうか。
◆従来の制度とこのサービスとは、どのような関係になっているのでしょうか。
松尾 
 まず、「不動産登記制度」とは、不動産の位置や面積などの物理的状況と当該不動産に係る所有権や抵当権などの権利変動を登記簿に記録しているものです。また、「商業・法人登記制度」とは、会社その他の法人の商号・事業目的や、その代表者などの当該法人の内容について登記簿に記録しているものです。こうした従来からの制度は、記録された登記情報に対抗力等の法的効力を与え、これを閲覧など広く一般に公示することで、不動産取引や法人をめぐる商取引の安全性や円滑さを確保するため存在しています。一方のインターネットによるサービスは、これまでの制度を前提に、登記情報をより簡易・迅速に確認できる“新たな手段”として位置づけられるといえるでしょう。
◆その場合、登記所で入手する登記情報と、インターネットを通じて入手する登記情報とは同じものなのですか。
松尾 
インターネットで提供される登記情報の内容は、通常の登記簿に記録された事項の全部、または一部を証明する『登記事項証明書』と同じものです。ただ、インターネットの場合には登記官の認証文が付されませんので、例えば、これを印刷しても『謄本』として使用できません。とはいえ、取り引きの段階で不動産や会社の登記情報をいち早く確認したい場合や、市町村が取引調査などのために登記情報を確認する場合であれば、簡易・迅速なネット検索の方が適しているといえるでしょうね。
 ちなみに、通常の『登記事項要約書』とでは、認証文が付されないという点では『登記事項証明書』と同じですが、提供される登記情報の内容が登記簿に記載された事項そのものであるか、またはその要約であるかという点が異なります。
 さらに、インターネットでは一定量以上の情報量の登記簿、具体的には登記簿の甲区と乙区の登記事項数が200を超えるもの、または情報量が100キロバイトを超えるものなどについては、閲覧サービスの対象から除外しています。こうした情報量が膨大なものは、利用者のパソコンへ表示されるまでに相当時間がかかるだけでなく、ほかの利用者へも影響を及ぼすなど、サービスの円滑な運営を阻害するおそれがあるためです。
◆インターネットでの情報提供を考えると、そうした配慮も必要なんですね。また、サービス開始までには法律等の整備も必要だったかと思いますが。
松尾 
おっしゃるとおりです。まず「電気通信回線による登記情報の提供に関する法律(平成11年法律第226号)」が平成11年12月14日に成立し、昨年4月1日に施行されました。また、「電気通信回線による登記情報の提供に関する法律施行令(平成12年政令第177号)」が昨年4月1日に、「電気通信回線による登記情報の提供に関する法律施行規則(平成12年法務省令第28号)」が昨年5月15日に、それぞれ施行されました。さらに昨年6月1日に、民事法務協会が「電気通信回線による登記情報の提供に関する法律第4条第1項の業務を行う者(指定法人)」として指定される、という具合に整備が進められてきました。
◆なるほど。電子政府・電子自治体実現に向け、市町村においても条例改正などインターネットを活用するための環境整備が急がれます。
松尾 
現代は“急激な変化の時代”といわれていますが、インターネットへの接続形態ひとつを考えても、いまや携帯電話によるネット接続が2000万台に迫り、パソコンによるネット接続人口を逆転する勢いで急伸していますからね。人びとの生活スタイルが大きく変化するであろうネットワーク社会では、サービスの提供形態が多様化するのも、当然の成り行きといえるのではないでしょうか。

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http://www.touki.or.jp/

求められる発想の転換今後は利用者の視点でアプローチを

◆さて、今後のご計画、あるいは課題についてはいかがでしょうか。
松尾 
 今年8月には、その時点で稼働しているコンピュータ登記所すべてを対象に運用を開始し、その後はコンピュータ登記所の誕生に伴って順次ネット閲覧を可能にしていく計画です。また利用時間については、いまのところ「登記所の執務時間内」に限られていますが、法務省では今後、利用者のニーズ等を見定めた上で時間枠の拡大を検討する意向のようです。そのほかにも、利用者から協会へ数多くの要望が寄せられていますが、今後は、これらの意見を踏まえてサービスの利便性をさらに高めるべく改善努力していきたいと考えています。例えば、登記情報と併せて地図などの付加価値情報や、地番と住居表示番号の対照表などの提供も検討課題でしょう。また、中・長期的には、急速に拡大する高度情報化社会へ迅速に対応していくことが重要課題であり、そのためには、民間企業のように利用者を意識し、常に新しいサービスについて検討していかなければならないと感じています。
◆なるほど。最近、市町村の間に「我われはサービス業だ」という意識が随分浸透してきたようですが、それには「利用者を意識し、常に新たなサービスを探る」という心構えが必要でしょうね。
松尾 
 ええ。そのためにも、従来の価値観を捨てて、サプライサイド(供給者側)からディマンドサイド(消費者側)への意識転換が必要でしょう。顧客である住民第一という基本的精神は変えずに、生活者の価値観や時代変化に即したサービスを工夫していく――ネットワーク社会には、そうした発想転換が求められると思います。時間はありません。電子政府・電子自治体時代の幕開けは、すぐそこに迫っているんですよ…。

登記情報提供サービス

■対象となる登記情報
○不動産登記、商業登記、その他政令で定める登記〈電気通信回線による登記情報の提供に関する法律(平成11年法律第226号。以下「法」という)第2条第1項〉
○提供される情報は、コンピュータ化された登記簿に記録されている事項の全部についての情報「全部情報」と、当該登記簿に記録された事項の一部についての情報「一部情報」の2種類(法第2条第1項第1号、第2号)。
■利用時間
○午前8時30分〜午後5時
○土日および祝祭日、12月29日〜1月3日までは休業
■申し込み方法
○サービスを利用するには、あらかじめ民事法務協会との間で情報提供契約を締結し、IDおよびパスワードの交付を受ける必要がある(IDおよびパスワード交付までに申込後2〜3週間時間が必要)。
申込方法は以下の通り。
1. 個人
インターネットで申込可能
2. 法人
ホームページから「利用申込書」を印刷の上、必要事項を記入して、登記簿謄本、代表者の印鑑証明書、所定の口座振替依頼書を添えて民事法務協会へ郵送する。最大100名まで利用者登録が可能
3. 国または地方公共団体
ホームページから「利用申込書」を印刷の上、必要事項を記入して民事法務協会へ郵送する。最大100名まで利用者登録が可能
■利用料金
○1件あたり 980円(登記手数料870円+協会手数料110円)
ただし、不動産の所有権の登記名義人のみを内容とする情報(所有者事項)は470円(登記手数料360円+協会手数料110円)
○登録費用 個人300円/法人740円/国または地方公共団体560円
■料金の支払方法
1. 個人 クレジットカード(JCB、VISA、MASTERまたはそれぞれの提携カード)
2. 法人 指定金融機関の預金口座から引き落とし
3. 国または地方公共団体 民事法務協会指定の金融機関の預金口座へ振り込み



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