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読んで得する本紹介
『電子政府のことがよくわかる』



 社会制度を揺るがす「革命」を経験してきました。ひとつは、蒸気機関という新技術によって輸送や生産コストが下がり、社会制度の変革を引き起こした「産業革命」であり、もうひとつが封建制度を崩壊させ、現代の社会システムの基礎を生み出した「市民革命」です。
 「IT革命」は、これらの革命に匹敵する歴史的大転換であるといわれ、私たちも、いま世界規模で進む“革命”の真っ最中に存在しているのです。
 日本におけるIT革命の具体的な指針として、先頃、IT戦略本部(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)から『e-Japan重点計画』が発表されました。これは、〈日本国民すべてがITを積極的に活用し、その恩恵を最大限に享受できる知識創発型社会の実現に向けて、早急に革命的かつ現実的な対応を行い、市場原理にもとづき、民間が最大限に活力を発揮できる環境を整備し、5年以内に世界最先端のIT国家を目指す〉ことを目的としています。
 では、「IT革命」は、日本社会へどんな変革をもたらすのでしょうか。
 富士総合研究所著『電子政府のことがよくわかる〜IT革命で中央・地方公務員の仕事や人々の暮らしはどう変わる?』(中経出版/03・3264・2771)には、IT革命後に実現するであろう日本社会の未来像が描かれています。

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『電子政府のことがよくわかる』1600円(税別)

日本の社会の未来像は?

 本書の第一章では、日本における現在までの情報化の進展を説明。また第2〜4章では、電子政府の実現により市民生活や企業活動、官公庁へどんな変化をもたらすのかに触れ、そのための課題や解決策にも言及しています。なかでも興味深いのは、「電子調達」「電子署名」「電子申請」「ワンストップサービス」「情報公開」に焦点を当て、これらの取り組みに必要なインフラや法制度の整備について、わかりやすく解説している点でしょう。
 さらに本書では、日本と諸外国における「電子政府」の進捗状況を比較しています。これを見ると、日本がいかに遅れているか実感させられ、いち早い対応を願わずにはいられません。
 とはいえ、著者が指摘するように〈電子政府が実現しても、公文書の標準化や業務プロセスの改革、IT時代に相応しい新しい法・制度の制定・改正、行政職員の意識改革が進まなければ、大きな効果は期待できない〉のも事実。単年度会計や予算の適用範囲など予算執行上の制約もあるでしょうが、〈閉塞する日本の突破口として、期待を裏切らない電子政府を築くことが重要〉なのです。
 その成否は、行政の今後の取り組み次第というわけですが、この点について著者は「単にいまある官公庁の行政事務やサービスを、そのまま電子化するのではなく、1.誰もが利用しやすい環境とする、2.省庁・自治体の経営改革を進める、3.住民が直接政策に参画できるデジタル・デモクラシーを実現する――3つの視点が不可欠である」としています。
 いま、インターネットの普及や情報公開法の施行などによって、一般の人が多くの情報を自由に手にすることができるようになりました。しかし、IT革命で行政事務・手続きなどが迅速かつ確実、効率的に行えるようになっても、“行政”の本質である人と人のふれあいの場としての機能は、電子化しようにも限界があります。
 こうした部分について、著者は「思いやり」などを育成・継承していくことが重要だとも説いています。一見、対局にある2つがバランスよく成り立ってこそ、新しい社会が拓かれるというわけでしょう。
 本格的なネットワーク社会を迎える前に、ぜひ一読をお勧めしたい本です。



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