bannertrend.gif  


交付税見直しで機運高まる
「市町村合併」
茨城県潮来市


潮来市DATA 所在地 茨城県潮来市辻626
電 話 0299−63−1111
人 口 3万2302名(H13.5.1現在)
世帯数 1万123世帯(同上)
http://www.net-ibaraki.ne.jp/itako/


tr07_1.jpg
spacer
潮来市総務部 吉川博美係長


 小泉内閣は、先ごろ「聖域なき構造改革」の柱として地方交付税制度の見直しを明言した。交付税交付金に財源の多くを頼る市町村も少なくないだけに、自治体にとっては、まさに“死活問題”。制度改革に対する賛否両論が渦巻くなか、市町村合併の機運も急速に高まっている。
 今年4月1日、茨城県に人口3万2000人、面積68.3平方キロメートルの新しい市が誕生した。潮来町と牛堀町が合併した「潮来市」だ。市昇格の人口要件を4万人から3万人に緩和した改正市町村合併特例法の適用第1号として、全国からの視察も絶えないという。だが、肝心なのは合併した後。合併によって、水郷潮来はどう変わろうとしているのだろうか。

人口要件3万人適用第1号の潮来市

 事務方として合併を推進してきた潮来市総務部総務課の吉川博美係長は、「首長の方針として、20〜30年先を見据えたまちづくりの手段のため、合併という選択肢を選んだ」とその狙いについて語る。
 そもそも潮来市で「合併」の話が出たのは平成8年のこと。森内捷夫牛堀町長(当時)が町長選の公約に掲げたのである。森内町長は読売新聞の取材に対して「小規模団体では社会資本整備、福祉サービスに限界がある。スケールメリットが必ず出る合併推進こそがベストと確信した」と述べ、今泉和潮来町長(現潮来市長)も合併協議会の初会合で「潮来への編入合併とはいえ、気持ちは対等合併で推進する」と熱き思いを語っている。国もいまほど合併推進に積極的ではないなかで、「合併によって住民自治を充実させる」という両首長の決断は先見の明があったといえるだろう。
 両町は事前調査として『行政内容現況調書』を作成。そこで合併した場合のメリット・デメリットをシュミレーションし、課題点を整理・分析した。そして9年7月に『潮来・牛堀広域行政事務研究会』を発足、翌年4月には『潮来町・牛堀町合併検討協議会』を立ち上げ、合併後のまちの姿を住民へ示し、意見を募ったのである。
 「ほかと比べれば両町の違いはわずかだった」(吉川係長)と語るが、それでも住民サービスの内容など具体論ともなれば、さまざまな問題が浮上してきた。その数およそ500項目。そのひとつずつについて行政制度の調整を重ねていったのである。
 吉川係長は、そうした調整部分のポイントになるのが、1.組織、2.電算、3.庁舎の3点だという。これが決まれば、ほかはこれに合わせる形で調整できる。それぞれに苦労はあるが、なかでも重要なのが情報システムの問題だ。
 「あらゆる業務に関連するため、なぜ、そのシステムを使うのか現場の職員1人ひとりに理解してもらわないと、例えば、住民からの問い合わせへ迅速に対応できないなど業務にも齟齬を来す」ためだ。「単にどちらかのシステムを継承するのではなく、合併後の業務の流れを考えてもっともベストな方法を選ぶことが大事」なのである。
 潮来市では、互いのシステムを実際に操作するなどして十分検討した結果、『TASKシステム』を選択した。

tr07-2
http://www.net-ibaraki.ne.jp/itako/

合併は目的ではなく手段だ

 吉川係長は「合併を選択するのであれば、早いほうがいい」とアドバイスする。
 1953年に制定された合併特例法は、度重なる改正を経て〈合併後10年間は交付税の従来額を保障〉〈新しい基盤整備にかかる財政支援策として合併特例債の許可〉などが盛り込まれ、現在の改正法となった。平成17年3月には期限切れを迎えるが、特例制度延長の可能性は低い。合併準備に要する時間は最低でも2年といわれる。となれば、来年までに協議会を立ち上げないと特例措置は受けられないことになる。
 総務省の調査によれば、全国の市町村のうち25.8%(832団体)が合併を検討中であるという。このたびの制度改革によって、一段と合併論議に拍車がかかることが予想されるが、財政基盤の強化や行政事務の効率化だけが問題なのではない。
 潮来市の場合、まちづくりのひとつの手法として合併の道を選択した。吉川係長も「これまでは合併というだけで注目されたが、今後はその資質が問われるようになる」と指摘する。
 合併か、独立独歩か。どちらを選ぶかはそれぞれの戦略によるが、行政には期限切れとなる前に住民に対し、まちの将来像やビジョンをきっちりと示す責任がある。
 新たな一歩を踏み出した潮来市。そこには従来型の“ハコモノ”行政からの脱却の決意が窺える。実際に『水郷潮来・牛堀合併まちづくり計画』には、長年の懸案事項であった中学校新設も具体案として計画され、未就学児童の医療費補助や中学校教育へのチームティーチング制度の導入など、新たな行政プランも盛り込まれた。また、合併を機に庁内の雰囲気も変化した。仕事に緊張感が生じ、職員の意識も変わってきたというのだ。今後のまちづくりを考える上で、これは一番大きな合併効果だろう。
 合併してよかったのかどうか――その結論が出るまでには時間がかかる。だが、まちの将来像を想定し、具体的な成果をあげるべく解決策を探り、行動を起こした潮来市には学ぶべきところが多い。その姿勢こそが「自治」体としての責任を果たすことにほかならないのである。



バックナンバーへ戻るspacer新風トップへ