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読んで得する本紹介
『上杉鷹山の経営学』
『福祉NPO』



 小泉首相の所信表明演説で一躍有名になった、長岡藩士・小林虎三郎を取り上げた『米百俵』。この虎三郎が生きた時代よりもさかのぼること100年、いまから230年ほど前の米沢藩主で、かのジョン・F・ケネディ大統領が「最も尊敬する日本人」と語った上杉鷹山公をご存じでしょうか。
 彼の愛と思いやりの経営思想を紹介したのが『上杉鷹山の経営学〜危機を乗り切るリーダーの条件』(童門冬二/PHP研究所)です。
 驚くのは、鷹山公の生きた時代と、いま私たちが目の当たりにしている現実が極めて似ているという点です。「目の前の現実に即応して、改革理念の遠大さを忘れてしまう」ことのあやうさ。歴史に学び、とはいえ過去にとらわれることなく、変化を恐れずに時代とともに歩くことの重大さとその険しさ…。トップに立つものとして常に民への愛を惜しまなかった鷹山公の信念は、まさに「聖域なき構造改革」を推す現代の「米百俵」の精神と同じといえるでしょう。
 鷹山公の業績と経営哲学が凝縮された本書は、私たちが見失ってしまった進むべき道と戻るべき原点を示唆してくれるとともに、すべての指導者に問われるべき永遠のテーマを小説よりも具体的に、わかりやすく描いています。文庫版なので忙しい人も気軽に読める1冊といえるでしょう。

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『上杉鷹山の経営学』429円(税別)

域なき構造改革にどう対応するか

 世界中の人びとと情報をやりとりできるインターネットが発展する一方で、近年の日本社会では、人と人とのつながりが希薄になっていることが危惧されています。そんな時代だからこそ、小林虎三郎や上杉鷹山の思想の根底にある思いやりの心を育成、継承していくことが大切なのでしょう。思いやりの心の育成を行政目標に掲げる市町村も少なくありませんが、『福祉NPO〜地域を支える市民企業』(毎日新聞社会部編集委員 渋川智明/岩波新書)は、退職したサラリーマンや主婦ら市民企業家たちが、他人を思いやる心を持って手弁当で地域コミュニティ再生に取り組む姿を紹介しています。
 NPOとはノンプロフィット・オーガニゼーションの略語で、非営利民間組織全体を指しています。
 本書によれば、都道府県などに認証されているNPO法人のうち7割近くが、高齢者介護などを目的とする福祉NPOだとか。施行から1年余経過した介護保険制度は、多くの問題を抱えながらも徐々に定着し始めています。しかし、制度だけですべての介護サービスをカバーできるものではなく、NPO法人が採算を度外視して配食や移送サービスに取り込み、高齢者の期待に応えているのが現状です。
 いまのところ日本ではNPO法人の活動は、まだあまり知られていませんが、本書は「NPOとは何か」「介護保険とNPO法人」などのほか、ボランティア論、行政とのパートナーシップ、地方分権との関わり方やアメリカの現状など、福祉分野に限らずNPOの全体像と克服すべき課題点を幅広く解説しています。
 鷹山公も立ち向かったであろう、財政基盤の整備や自立的な地域運営、行政サービスの質の確保、など。こうした課題のひとつの解決策として、これからはNPOと公的機関との連携も考えられるはず。本書は、これからの社会や地域との関わり方を考える時の良き“案内役”になってくれる1冊です。


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『福祉NPO』700円(税別)



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