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台湾における
電子政府の現状レポート



 アジアを代表するIT国家・台湾は、世界屈指の情報機器供給基地としても知られる。だが、世界的なIT不況に、9月に起こった米国の同時多発テロが追い打ちをかけ、2001年の台湾の経済成長率はマイナスに転じることがほぼ確実となった。そんななか、なおも国をあげて情報化を急ピッチで進める台湾の現状をレポートする。

国をあげて情報インフラを整備

 台湾には、パソコン・メーカーのエイサーをはじめ、世界的企業にまで成長したハイテク・ベンチャーが数多い。これは政府がインキュベーターの役割を果たしていることが大きな要因と考えられる。
 これについて、台湾行政院経済部(日本の経済産業省)の翁健一(WENG CHIEN-I)課長は、「IT産業の成長促進のため、国をあげてインフラ整備や規制緩和などを実施してきた」と語る。その代表例が94年8月にスタートした『国家情報通信基盤計画』だ。これはITの普及・活用と産業発展を柱とするもので、これに沿って一般家庭のインターネット接続を促進する『MORE100万世帯インターネット接続動員計画』や、行政サービスのオンライン化をはかる『電子化・ネットワーク化政府計画』などの政策を次々と打ち出してきた。また、このほかにも台湾版シリコンバレー『新竹科学工業園区』を建設して企業を支援し、また通信事業を相次いで民間に開放。さらには「情報公開法」「通信監視法」「個人情報保護法」など関連法も整備してきた。その結果、ほぼ予定通りに目標は達成されているという。
 例えば、台湾最大の都市・台北市では、CATVの普及率が100%で、これを活用したインターネット利用率も高い。その理由としては、ネット利用料金が月額300台湾ドル(日本円で約1100円)と安価で、学校と家庭が電子メールで連絡を取り合うなど、市民がインターネットを日常生活にうまく採り入れていることがあげられるだろう。

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お馴染みのコンビニに、日本製の自動車やバイクが目立つ台北市内。
その風景は、日本と見まごうほどだ。

日本との連携でアジア圏の発展を

 日本では、ようやく電子政府実現に向けた取り組みが始まったばかりだが、台湾ではすでに具体的な成果を上げるまでとなっている。このために政府がIT関連の人材育成・研究開発等にかける予算は、国家予算の約12%というから驚く。
 そして、いま台湾政府が注目しているのが、情報家電とソフトウェアだ。特に情報家電時代に向けては、高速情報通信網の整備を掲げ、具体的には「2004年までに家庭のブロードバンド普及率を96%へ引き上げる」(翁課長)としている。
 なぜ、台湾ではこれほどまで急速にインフラ整備が進んでいるのだろうか。
 その大きな要因に、IT化を「国家的競争促進政策」に位置づけていることがあげられる。繊維など従来型産業の疲弊を補う新産業を育成し、中国やASEAN諸国の追い上げによる国際競争激化に対抗するためにITを“国家戦略”として進めているわけだ。特に近年、台湾の半導体企業が中国に工場を移設する動きが顕著で、政府は台湾の国際競争力の低下を懸念する財界からの圧力を受けて、政策の見直しに着手している。
 国民党と民主党が対立する台湾では、政府主導ではなかなか物事が先に進まないといわれ、同じ“国家戦略”でもトップダウンで『e―Japan計画』を進める日本とは大きく異なる点といえるだろう。これは台湾の地方の情報化についても、同じことがいえる。翁課長は「民間が自分たちの地域発展が遅れないように地元行政府へIT化促進を働きかけ、いい意味で各地域が切磋琢磨し合って情報化を推進してきました。それが国全体へ影響を与え、ボトムアップ型の構造改革が進行している」と語る。
 台湾にも課題はある。市民生活や企業間の電子商取引が急速に広まるなか、意外なことに台湾全体をつなぐ「電子政府」実現までには時間がかかるというのだ。その背景には、政治体制の違いなどによって地方連携が難しいという事情がある。また、台北市など北部地域ではパソコンの普及率が約5割に達しているのに対して、経済発展の遅れている東部地域では2割を下回るなど、地域間の情報格差も拡大しつつある。

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台湾のIT応用能力「国家資訊力応用能力提方向之研究」(行政院資料)

 さらには、中国大陸における労働力の確保など経済的依存が高まるなか、長年の課題である対中関係がどうなるかも気になるところだ。とはいえ、ネットワークの時代となれば地域や国境などの存在感が薄れるのも事実。ましてや台湾には、さまざまな課題を補って余るほどのパワーがある。
 台湾政府は、国際競争力を高めるために、『ブルートゥース(無線ネット)』などの新技術開発にも意欲的だ。この点では、日本企業の持つ技術力に期待するところも大きい。このため今後は、日本をはじめアジア各国との連携を視野に入れた施策を展開していきたいという。
 「必要不可欠な法整備を行い、アジア圏で電子商取引の統一基盤が完成すれば、そこに住む私たちはもっと便利になります。例えば、いま私が日本へ行くにはビザが必要で、そのための手続きも面倒です。もし個人的認証システムが完成すれば、直接、自分のパソコンから日本政府へビザを取得することができるわけです」(翁課長)
 なるほど、究極のネットワーク社会とは、そうしたものかもしれない。だが、実現するには解決すべき課題が山ほどある。
 5年後に世界有数のIT国家を目指すというのであれば、日本も国内の基盤整備に目を奪われるばかりでなく、こうした台湾政府の柔軟な姿勢とグローバルな視点を見習うべきといえそうだ。



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