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電子自治体による住民生活の向上と地域の振興
〜動き出した地方公共団体の電子化とその課題〜
総務省自治行政局自治政策課理事官
猿渡知之



はじめに

 いわゆるIT革命に伴う経済社会の大きな変革への動きは、もはや止まることのない地点を越えたものと考えられる。
 高速・大容量回線の全国的普及は、常時接続で定額低価格の高速・広帯域通信のサービスを可能にするといわれ、NTTグループでは、2005年までに一般家庭にまで光ファイバーを敷設するファイバー・トゥー・ザ・ホーム構想を掲げている。
 全国的に情報の共有・情報の流通を可能とする環境の整備は、電子商取引やオフィスの分散化等により、中央と地方といった地理的概念の意味をも失わせるという見方もあり、地方公共団体は、電子自治体として高度情報化に対応するだけでなく、地域の情報化をリードする主体としての役割を期待されている。
 すなわち、地方公共団体自身がその電子化に積極的に取り組み、業務プロセスを再構築し、行政サービスの向上を図ることはもちろんのこと、地域の社会・経済活動の活性化に資するため地域の情報インフラ等の整備に取り組むことなどをも求められている。
 そこで、本稿では、今後、予想される地域のIT化と、期待される地方公共団体の電子化についての素描を試みたい。
 なお、文中、意見にわたる部分は私見であることをお断りする。

情報の共有とデジタルデバイドの解消

 IT革命の本質は、インターネット上における情報の共有といわれ、この共有情報への個人の窓口がパソコンである。しかし、あまりに急速な技術革新であるがゆえに、IT革命の恩恵を享受できる者とできない者との間で新たな格差の広がりが危惧されている。
 このため、ITの利用機会及び活用能力の格差(digital divide)の解消を図るべく、IT活用のための能力(literacy)を個々の住民が習得する機会の提供、およびITの利用機会に関する地域間格差をなくすための高度な情報通信サービスが提供される基盤の整備等が進められている。

1.IT学習機会の提供

 IT学習機会を住民に提供する施策としては、平成13年1月から平成14年3月までの間に、成人約550万人を対象とした『IT基礎技能講習(パソコンの基本操作、文書の作成、インターネットの利用及び電子メールの送受信等を身につける12時間程度の講習)』が進められている。
 その過程において、(1)地域住民ニーズへの細かな対応が欠如している、(2)講習内容に多様性を持たせ、講習後の地域活動につなげるべきである、(3)地域住民のITリテラシーの向上はIT国家を支えるもので、今後とも継続的な施策が必要である―といった指摘があった。
 このような指摘を踏まえ、次のような施策が進められることとなった。
〈IT基礎技能講習〉
 予定通り一応終了するが、相当程度の国民が受講できずにいること、平成15年度中を目途として進められている申請等の行政手続のオンライン化を実効あらしめるためにも、より多くの国民の情報リテラシーの向上を図る必要があること等に鑑み、引き続き『IT基礎技能講習』を継続する地方公共団体の自主的な取り組みを支援する。
〈IT基礎技能住民サポート事業〉
 すでに、IT環境の整備された図書館等の公共施設約1万ヵ所について、ITに関して住民の相談などを受ける『IT基礎技能住民サポートセンター』と位置付け効果的に運営する(図1参照)。
〈地域ITリーダーの育成・確保〉
 IT基礎技能講習継続分の講師や、IT基礎技能サポートセンターの相談員としての活躍が期待される『地域ITリーダー』をNPO、ボランティア、学生等の協力を得て育成・確保する。これには「緊急地域雇用創出特別交付金」を積極的に活用することが期待されている(推奨事業例の一つ)。


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2.高度な情報通信インフラの整備

 ITの利用機会に関する地域間格差の解消には、高度な情報通信インフラの整備が必要である。基幹線の部分は、すでに高速の光ファイバー回線が全国的に整備されているが、各家庭に引き込まれている電話線では、今後想定される文字・音声・画像・映像等の多様な情報のやりとりの一般化に対応するには伝送能力が低すぎるという問題がある。このため、高速・大容量回線(broadband)を各家庭にまで接続することが求められている。
 この点に関しては、超高速で大容量の光ファイバー網の整備が求められ、民間主導により推進されているが、地域間で整備率の格差が生じており、今後も採算性の点から、民間事業者による整備が進まない条件不利地域が残ることが懸念される。このため条件不利地域における光ファイバ網整備については、国や地方公共団体による整備を進めることとされている。

総合行政ネットワークの整備

 ITを活用して、教育・福祉・医療・防災等の公共サービスの高度化を行うため、市町村役場の庁内LANに続き、公民館・図書館・学校・病院・消防署等を結ぶ地域の高速LANである地域イントラネットの整備が推進されている。
 さらに、このような地域公共ネットワークを相互に接続するとともに、国の行政ネットワークである霞が関WANとも接続する『総合行政ネットワーク(LGWAN)』の構築が進められ、すでに13年10月から、すべての都道府県、政令指定都市において運用が始まっている。一部の市町村においても年度内に接続が予定されるとともに、霞が関WANとの接続も2002年度早期に予定されている。
 LGWANの基本サービスには、地方間および国・地方間で、強固な暗号化を施した上で専用回線を通じて「電子メールを安全に送受信できる中継サービス(電子メールサービス)」や「電子的な公文書を本人性及び内容の真正性の確認を行った上で安全に交換できるサービス(電子文書交換サービス)」がある。
 また、行政専用ネットワークであるLGWANにおいて、品質・サービスレベルの高いアプリケーション等を地方公共団体間で共同利用することにより、より経済的で安全なシステムを導入・運用できることともなる。

申請・届出等手続のオンライン化を軸とした電子自治体の役割

 「国民等と行政との間の実質的にすべての申請・届出等手続を、2003年度までのできる限り早期にインターネット等で行えるようにする(『e―Japan重点計画』平成13年3月29日)」との目標のもと、平成13年6月26日に具体的な新アクションプランが策定され、平成15年度までに、国の行政機関が扱う手続については「国税申告・納税等約1万900件(98%)」を、地方公共団体が扱う手続については「旅券交付関係手続請求等約4900件(95%)」のそれぞれ手続についてオンライン化を図ることとされた。
 このような国民・住民への質の高い行政サービスの提供を目指す一環としての電子自治体の実現は、住民と密着する地方公共団体の情報化というだけにとどまらず、ITの活用により、個々の住民が納得できる行政を実現することにつながっていく。それは、オンライン申請やワンストップサービスの実現とともに、行政情報の共有による政策・事業形成の透明化と住民による行政情報の活用という方向性を備えている。
 このため地方公共団体には、「高速通信網の整備」と「デジタル・デバイドの解消」等とともに、(1)複数の窓口や関連する他の行政機関への申請等の手続がひとつの窓口で行えるようにするワンストップ・サービスの導入と、出生から死亡までのサービスに係る行政諸手続の総合化を軸とした「業務の再構築」の推進、(2)ITを活用した事前の情報公開と事後のチェック方法の一層の充実と、行政マーケティングによる「きめ細かな行政需要」の把握、(3)厳格な本人確認に基づき、ネットワーク上での自分を証明する手段として住民の活動基盤を付与する「個人認証サービス」の提供、といった役割が求められている(図2・3参照)。


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 これらの施策を推進するため、多重投資の抑制と行政事務の効率化などを図りながら住民サービスの向上を目指すものが総合行政ネットワーク等の整備であり、各地方公共団体の創意と工夫に基づく「ASP(ApplicationServiceProvider)サービス」の活用でもある。
 さらに、情報セキュリティの確保や個人情報保護等の環境整備のためには、地方公共団体それぞれが、その機能を高めることなくして全体の水準を維持することはできないということはいうまでもない。

IT総合サポート機能の充実

 電子化の具体的な取り組みに際して、一定の技術を有する者のノウハウ・スキルをより広範に活用できる仕組みや、先進的自治体の情報化に関する知識・経験を多くの地方公共団体が共有できる仕組み等が求められている。
 特に、(1)情報セキュリティ対策の構築や監査・評価・運用手法・人材育成への支援、不正アクセス・コンピューターウィルスに対するセキュリティ確保技術等の情報提供、不正アクセス等が発生した際の緊急対応体制確立への支援、(2)電子化に際しての組織等の業務改革の企画のため、業務改革の参考となる事例などの収集・周知や汎用モデルシステムの開発等を行うとともに、情報化度アセスメントやコンサルティングの実施、当該地方公共団体用のシステム開発と人材育成、などの検討が進められている。



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