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地方分権時代の主役は市町村
鳥取県知事 片山善博



 地方分権時代がやってきつつある。地方分権とは、単に中央政府から地方自治体に権限が委譲されることだけを意味するのではない。そもそも地方自治とは、住民に身近なところで生じた問題を、その現場にもっとも相応しいやり方で自主的に解決することを可能にしている点にある。
 課題は常に現場にあり、解決のヒントも現場にある。現場から汲み取った課題を自ら政策として取り上げ、実施する。中央から地方自治体を経由し現場へ課題が天下りしてくるのではなく、現場から地方自治体の実践を通して中央へ課題が伝えられる。地方分権とは、現場および地方自治体と中央政府との間の情報伝達や政策形成過程のベクトルを転換させることであり、それを意識して実践することである。
 このように地方分権時代の自治体は質的に大きな転換を迫られている。
 また、地方行政の中では都道府県よりもむしろ市町村の役割の方がより重要になってくるはずである。日頃住民に直接接しながら仕事をしているのは市町村だからである。この地方行政の最前線こそが大切なのであり、したがって市町村はいままで以上にしっかりとした力量を身につけなければならない。新しい課題に鋭敏に対応し、自ら地域の課題をキャッチし、政策として具現化し、そして実践する能力である。
 現状はどうであろうか。市町村によっては必ずしもこの力量が備わっていないのではなかろうか。現在、地方行政をめぐっては、環境問題、IT政策、学術高等研究、教育改革、文化・芸術の振興、男女共同参画による地域社会の変革等今日的な重要課題が目白押しである。これらについて、市町村はそれぞれの分野で専門スタッフを養成し、主体的に課題の解決や実現に当たらなければならない。これまでのように国から県を通じて伝えられる政策課題をなんとかこなせるというだけの力量では明らかに不十分である。地域ごとに様相の異なる課題について具体的な政策に仕立て上げるとともに、問題点を県や国にぶつけていくだけの実力が必要である。
 市町村にはこれだけの力を早急に備えてもらいたい。もちろん規模の小さい町村では人材確保が困難な面もあろう。であれば広域的に取り組むことも考えてしかるべきである。今日国から強く要請されている市町村合併をこの文脈で考えてみることも有益である。合併は単に財政の効率性だけで取り上げられるべきではなく、自治体の力量という面からこそ点検が加えられるべきだからだ。
 地方行政の最前線である市町村行政が住民から信頼されるかどうかは、山積する今日的な課題に主体的かつ率先して取り組むだけの力量と気概が備わっているかどうかにかかっている。市町村の奮闘を大いに期待している。



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