bannerkantou.gif


新しい地域社会の創造に向けて
毎日新聞社会部編集委員 渋川智明



 介護保険にNPO(非営利活動促進)法人が事業者として参入することができるようになり、地域社会のNPO活動が大きく変わった。地域住民は、行政が一方的にサービスを提供する対象者という側面だけでなく、ともに事業をになうパートナーとして見直されつつある。市町村など地方自治体の役割も、確実に変質を迫られている。
 3年目を迎えた介護保険に参入したNPO法人在宅事業者は777件(2001年9月現在)。訪問介護は1万3809件の訪問介護事業者のうち、NPO法人が459件を占め、農協、生協を含めると1137件。ほぼ1割に達し、その後も参入するNPO法人が増え続けている。
 ただ市町村など地方自治体がNPO法人を、民間企業が手を出さないボランティア的なサービスを引き受ける安上がりな行政の下請け団体と見るケースも多い。またアマチュア意識の抜けない組織運営に、どこか信頼しきれないものを持っている首長が多いのも事実だろう。NPOの側にも警戒感が強い。
 少子高齢社会では、ニーズの多様化がますます進み、行政や企業が支えてきたサービスだけでは満足されなくなろう。地方分権一括法が施行され、市町村など基礎的自治体の役割と責任が強調された。それは住民参加を促し、住民の自己決定、自己責任の原則を再認識させている。限られた財政の中で、住民ニーズを満たすためには、NPOなどの住民活動をパートナーとして受け入れなければ、とても乗り切れない。両者が意識を変えるしかない。
 NPOの非営利とは言うまでもなく、利益を分配してはいけないということだ。収益事業で、利益を上げてそれを正当な人件費や新規事業などに投資することはできる。これからはNPO法人といえども、マネジメント能力が必要になる。それをサポートするのが行政の役割である。
 介護・福祉サービスだけではない。地域で、住民自らが社会を支える仕組みの構築は地域通貨、市民バンク、商店街再生、子育て支援ネットワークなどとして着実に進んでいる。
 地域には、すでに自治会・町内会や老人クラブなどがある。NPOと既存の組織は、これまであまり連携がスムーズにゆかなかったが、高齢者福祉の分野などに対するニーズの高まりから両者が接近する動きも出ている。社会福祉協議会は市町村行政や既存の組織とのつながりもある。
 市町村はこうした組織の橋渡し役としてリーダーシップを発揮してもらいたい。行政の補完機能として、コミュニティーにゆるやかな近隣政府を設置する提言も、一考に価するのではないか。既存の市民組織、NPO、社協が連携を深めれば、地域再生への大きな力になろう。



バックナンバーへ戻るspacer新風トップへ