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特集タイトル


14年度は、いよいよ「電子自治体」の実践段階を迎える。だが、未だ多くの人が具体像をイメージできないのが現状だ。そこで電子自治体に向けた準備として、いつまでに何をしなければならないの



 IT戦略本部の電子政府プランの前倒し方針で、電子自治体推進ムードが急速に高まっている。だが、その具体的な内容はまだ十分煮詰まっているとは言い難く、まさに暗中模索の状態だ。
 しかも、米国ハーバード大学国際開発センターがまとめた『世界75ヵ国・地域の情報技術活用に関する調査報告書』によると、日本のIT活用度は21位だという。1位は米国で、2位以下にはアイスランド、フィンランドといった北欧勢が続く。シンガポール(8位)や台湾(15位)などアジア諸国と比べても、いまの日本がいかに電子政府・電子自治体から遠く離れているか分かろうというもの。こんな状態で、日本が2003年に世界最先端のIT国家になるためには相当の覚悟で臨む必要がある。
 住民基本台帳ネットワークシステムや総合行政ネットワークシステムなど全国レベルで行われている基盤整備に加えて、今年からは「電子申告」「電子選挙」といった個々の市町村レベルでの対応がスタートするが、効率よく準備を進めるためにも、それぞれの目標を明確にしておくことが肝要だ。

住基ネットとICカード利活用

 昨年12月28日に公布された『住民基本台帳法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令』により、住民基本台帳ネットワークシステム(以下、「住基ネットシステム」という)の稼働日が、今年8月5日に決定しました。今後、市町村では、8月の稼働日に向けて「P3市町村総合テスト」を実施した後、コミュニケーション・サーバへの「本人確認情報」の移行作業や「住民票コード通知票」の通知等を行うことになります。
 住民基本台帳ネットワークは、サービス全体を今年8月から実施する第1次サービスと、来年8月から実施する予定の第2次サービスの2段階で始まります。
 まず、第1次サービスでは「住民票コード」が住民票の記載事項として追加され、市町村から都道府県に対して氏名、生年月日、性別、住所、住民票コード、および付随情報からなる「本人確認情報」の提供が開始されます。本人確認情報は、都道府県で記録・保存された後、指定情報処理機関(財団法人地方自治情報センター)に提供される手順になっています。この情報は国の機関や都道府県などが利用しますが、情報の提供先や利用目的は法律で具体的に限定されていることから、指定以外での利用はできません。
 また、住基ネットシステムの運用に際しては、万全の個人情報保護対策が講じられるよう、サービス開始にあわせて総務省告示によるセキュリティ基準が定められる予定です。
住民基本台帳ネットワークシステム、住民基本台帳カードのスケジュール概要
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住基カードは第二次サービスから

 第2次サービスでは、住民基本台帳カード(以下、「住基カード」という)の交付が開始されるとともに、居住市町村の区域外でも住民票の写しの交付が受けられる「住民票の写しの広域交付」や、転入・転出の際に窓口へ行くのは転入時だけで済むようにする「転入転出の特例」のサービスがスタートします。
 市町村では、今年10月から第2次サービスに向けて住基カード発行機(制御端末、カードプリンタ等)の調達が、また平成15年4月からは住基カードの調達が開始されることになっています。
 さて、住基カードはセキュリティ機能が完備されたICカードで、Aバージョンと顔写真の付いたBバージョンの2種類があり、居住市町村に申請すれば誰でも交付を受けることができます。ただし、他市町村へ転出する場合には交付を受けた市町村にカードを返納しなければなりません。
 なお、住基カードは市町村条例で規定することで「住民票の写しの広域交付」など住基ネット本来の利用のほかにも、印鑑登録カードや各種証明書の自動交付機用カードの機能を持たせたり、ICカードの特性を生かして新たに保険・医療・福祉サービスなどの用途で利用することもできます。
 また、住基ネットシステムは、今後、創設が予定されている「公的個人認証サービス」でも活用される予定です。たとえば、住基カードは「公的個人認証サービス」により交付される電子証明書の記録媒体として、さらに、住基ネットシステムは市町村で「公的個人認証サービス」の申請を受け付けた際の本人確認情報の照合作業や「証明書発行・失効情報機関」での「本人確認情報」の異動等失効情報としても利用されることになります。
 このように、住基ネットシステムは、政府が進めている電子政府・電子自治体を実現するための基盤としても、極めて重要な役割を担っていくものと考えられています。

行政手続のオンライン化の動向と展望

 行政手続きをオンライン化し、インターネットを経由して「24時間」「どこからでも」のサービスを実現する電子政府・電子自治体――。この実現にあたり、今後、市町村では「申請・届出システム」「公共施設案内予約システム」「情報提供システム」などのシステムを構築し、インターネット上に電子窓口を開設することになります。
住民からの申請・届出等のオンライン化の推進
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 ここで挙げたシステムはいずれも現在、総務省が実証実験を進めている「汎用受付システム」に包含されるものです。
 まず、「申請・届出システム」はオンライン上での申請書の提供、受付、審査結果通知などを可能とするシステムです。すでに「介護給付費の請求」がオンライン化され、14年度には「保育の申請」「国民年金関係手続」が、また15年度には「住民票の写し等の交付請求」が実現される予定です。次いで「公共施設案内予約システム」では公共施設の空き状況の確認、予約受付、抽選等が可能となり、「情報提供システム」では各種行政情報の提供、メールマガジンの発行やアンケートの実施もできるようになります。
 さらに、これらの基盤となる「組織認証基盤」「個人認証基盤」「決済基盤」の構築や法整備も進められており、汎用受付システムは今後の行政システムの中核に位置づけられるといえるでしょう。
 システム構築にあたっては、利用者の利便性や効率性の確保が要求されます。
 この点、システムの標準化や汎用化を図ることにより、市町村にとっては導入・運営コストの削減が期待できることから、今年度中に国がシステムの基本仕様を作成するとしており、この仕様に沿って14年度には先行団体(主に都道府県)で、また15年度には市町村においても運用が開始される予定です。

LGWANで何がどう変わるのか?

 2003年度までに、全国3300の市町村をネットワーク化する「総合行政ネットワークシステム(LGWAN)」が構築されます。市町村がこれに接続参加するためには、専用機器「LGWANサービス提供設備」を庁内LANと接続することが必要です。
 LGWANは、行政組織間のネットワーク・インフラであり、電子文書交換や掲示板などグループウェアとしての機能のほか、公的個人認証基盤や組織認証基盤との接続が予定されるなど、今後の電子自治体構想を実現するための共通基盤に位置付けられています。特に、本格的なワンストップ・サービスが始まると、LGWANが受付窓口への必要な情報を流通集約させる役割を果たすものと想定され、住民サービスに大きく貢献することになります。
 また、1〜2年内に具体化するであろう市町村における〈パソコン1人1台体制〉構築の計画と相まって、文書管理システムあるいは庁内のグループウェア導入を促進する機運を高めると予測されることから、今後の情報化計画へも大きな影響を与えると考えられます。
 では、LGWANによって、どのような影響が発生するのか、予想される点を挙げてみましょう。
(1)ネットワーク・ポリシーの策定
 LGWANが庁内LANと接続されることで、将来的には各課係での利用頻度が高まると予測されます。一方でインターネット利用環境も整備される状況にあることから、ネットワーク・ポリシーの策定、見直しが発生すると想定されます。

※ネットワーク・ポリシーとは、ネットワークを円滑に運用・利用するための指針。例えば、不正アクセスの防止などセキュリティの確保や、管理者・利用者の責任範囲について定めるもの。

(2)電子文書は紙文書と同等の効力を持つ
 LGWANで公文書の送受信も行われる予定で、電子文書は紙文書と同等の効力を持つようになります。つまり、紙文書と同等に電子文書も原本として取り扱われるようになり、各課係への配信方法や保管方法など新たな課題が発生します。具体的な対応策としては、文書管理システムとの連携が検討されてくるでしょう。また、公文書の送受信の運用は、電子証明書が添付されるなど厳重なセキュリティ対策が講じられているため、いわゆる電子メールの運用とは異なってきます。もちろん電子メール機能は別に搭載されますので、他市町村との情報交換で電子メールの利用は活発となるでしょうし、早々にどこの団体でも全職員にメールアドレスが配布される状況が生まれてくると予想されます。
(3)ASPサービスの可能性
 LGWANではASPサービスが実現されます。ASPサービスとは一般に、厳重なセキュリティ対策が講じられた場所へサーバを設置して物理的な環境の提供を受ける「ファシリティサービス」、あるいはネットワーク通信を使ってシステムプログラムの提供を受ける「アプリケーションサービス」などを総称したものと定義されています。LGWANでも相応のASPサービスが実現できるようになるといわれており、一定条件を満たせば地方公共団体でも民間事業者でもサービス提供者になれることから、県としてサービス提供の検討を始めたところもあるようです。
 また、これまで各自治体では、同じようなシステムを個別の仕様で開発運用してきた経緯があり、これがコスト高の要因とされてきました。しかし、地域の核となる行政機関が、ASPサービスによってシステムの共同利用を推進しようとする動きが出てきたことで、全体コストの削減を目指す意向の顕れとして今後が注目されます。

電子選挙の動向と展望

 政府の21世紀の国家戦略である電子政府・電子自治体のひとつに「電子投票」があります。電子投票は、投票用紙の代わりに電子投票機(コンピューター端末)を操作して投票するシステムです。この「電子投票」を可能にする法律が第153回国会で成立し、平成14年2月1日に施行されました。「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙において、電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律」(電磁記録投票法)がそれです。
 この法律は、地方公共団体が実施する選挙で電子投票が行えるように、公職選挙法の特例を定めたものです。特例の対象となるのは次の選挙・投票です。
(1)地方公共団体の議会の議員または長の選挙(都道府県の選挙については、都道府県・市町村双方の条例の制定が必要)(2)投票日当日の投票所における通常の投票(点字投票、不在者投票、郵便投票などは対象外)
 電子投票のメリットとしては、即時に開票結果がわかること、コストが削減され職員の負担が軽減されること、疑問票や無効票が出ないこと、などが挙げられます。将来的に自宅の端末から投票ができるようになれば、外出が困難な高齢者や障害者の参政権を保障することもでき、投票率のアップにもつながります。
 電磁記録投票法の施行を受けて、今年6月には、岡山県新見市が市長選および市議選で国内初の電子投票を実施する予定です。その一方で煩雑化する作業に対し、多くの選挙管理委員会事務局の業務は電子化が遅れているのが実情のようで、電子政府時代を迎え、選挙事務においても各種公文書の電子化や不在者投票管理業務のシステム化などを急ぎ進める必要があるでしょう。

選挙システム研究会としての取り組み
鹿沼市選挙管理委員会事務局  事務局長 高柴好夫
 選挙を取り巻く社会情勢は、ここ数年大きく変化し、不在者投票事由の要件緩和をはじめ、投票時間の延長、洋上投票や在外投票の実施など、有権者にとってより投票しやすい環境が整いつつあります。昨年12月には、公職選挙法の改正で地方公共団体における電子投票への取り組みも、具現化の段階に入った状況にあります。
 複雑・多様化する選挙の管理執行の電算化、事務処理の迅速化・効率化を図るため、標準化された使いやすいシステムの開発を目指して、平成13年2月に栃木・茨城・静岡・大阪の4府県の11市町の実務担当者で選挙システム研究会を発足しました。新たな制度に対応可能な選挙システムとして必要な機能全般にわたる検討を重ね、このほど成果品をまとめました。今回、開発されたシステムは、選挙人名簿の管理から不在者投票・当日投票の受付業務支援、さらに選挙管理委員会業務の電子化等の内容を柱として、事務の簡素化を進めつつ、二重投票の防止等正確な事務処理や所要時間の短縮にもつながるものです。
 今後は、自治体業務の電子化が各分野で進むなか、選挙事務もペーパレスの時代に入り、本システムが選挙の管理執行の要として多大な成果を残すことに期待するとともに、導入が余儀なくされるであろう電子投票の一助として、研究会員一同が一層協力しあい、この機を「選挙制度改革元年」と定め、電子自治体への一歩を踏み出し、さらなるシステム開発に邁進していきたいと希望いたします。

地方税の電子申告の動向と展望

 地方税の電子申告システムは、大別すると「納税者システム」「受付システム」「審査システム」で構成されます。
 「納税者システム」は、申告者が自宅等のパソコンを用いて申告書の作成を行い、インターネット経由で受付センターに送信するシステムです。また「受付システム」は、納税者システムから送信された申告データの受付と審査担当部署への配信などを行うシステムです。運用形態としては、全国センターやブロックセンターによる共同利用方式が想定されています。さらに「審査システム」は、受付システムから配信された申告データのチェックや既存の税務システムへのデータの引き渡しなどを行うシステムで、各地方公共団体での単独運用や共同センターによる運用等が想定されています。
 平成13年4月、総務省は地方税の電子化の促進を図るために「地方税電子化推進協議会」を設立。これを受けて、総務省が所管する通信・放送機構(TAO)は、ITベンダーを集めた「地方税電子申告委員会」を設置し、技術的課題の整理・検討を行なっています。ちなみに、TKCも分科会メンバーとして参加しており、協議会としては14年度にシステム開発および実証実験を実施し、地方税電子申告のモデルシステムを地方公共団体へ提示する予定です。
地方税電子申告のシステム・イメージ
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 こうした国の動きと合わせて、地方においても具体的な検討を始めるところが目立ってきました。
 送信相手やデータの原本性の保証など、これから解決すべき課題はあるものの、そうした基盤整備も近く本格的な動きとなりそうなことから、市町村においても今年はこうした動きに注目しながら2003年の実施に向けた庁内準備を進めていく必要があります。

14年度に取り組むべき市町村のアクションプラン

 平成15年度までに電子政府を実現するという国の方針を踏まえ、市町村が今後取り組むべきテーマ、およびスケジュールは以下の通りです。
1.IT施策の動向に関する情報収集および情報の共有化
2.来年8月から交付される住民基本台帳カード(ICカード)を住民サービスへどう活かすのかの調査・検討
3.遅くとも平成14年度中に総合行政ネットワークへの接続参加について方針決定を行う必要があり、これに伴う財政面、運用面、インフラ整備面の検討
4.電子自治体構想の調査・研究。具体的には、(1)電子申請システム、(2)地方税の電子申告システム、(3)電子調達システム(電子入札)、(4)電子投票システム、(5)文書管理システム、(6)その他(インターネット活用、個人認証基盤、e―ラーニング等)、などの調査・研究
地方税電子申告のシステム・イメージ
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電子自治体実現を支援するTKCの取り組み
 平成13年10月、総務省が発表した「電子政府・電子自治体推進プログラム」によれば、これが実現すると自宅、職場、最寄りの施設からインターネット等を使って簡単に国や地方公共団体にアクセスし、さまざまな手続を行うことが可能になる、としています。
 TKCでは、このような新しい行政サービスが円滑にスタートできるよう、主に次のようなテーマについて取り組んでいます。
(1)住民基本台帳ネットワーク…全国210団体への住基ネット対応版『e―TASK住基マスター』の提供とシステム説明会の開催、4月末には第6次システム説明会を開催予定
(2)総合行政ネットワーク(LGWAN)…LGWANの導入に合わせて庁内ネットワークの整備、グループウェア、文書管理システムのご提案
(3)汎用受付システム…電子申請・届出、公共施設案内予約、情報提供システムの研究、開発
(4)地方税の電子申告…地方税の電子申告システムに関する調査・研究、および情報提供
(5)e―TASKシステム…電子申請・届出や地方税の電子申告システムなどと関連する『e―TASKシステム』の連携機能の研究・開発
 今後、市町村における行政情報システムはインターネットを利用した住民サービスや、LGWANを活用したASPサービスなどの出現で大きく変化しようとしています。
 TKCでは、これらの変化に的確に対応できるよう、最新の技術を積極的に取り入れたシステム開発と、どこよりも早くかつ正確な情報発信に努め、電子自治体実現に向けた支援活動を続けてまいります。



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