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電子自治体実現へ向けた作業が急ピッチで進められているが、その在り様は従来の行政の「情報化」とは明らかに変わってきた。キーワードは「アウトソーシング」と「共同化」。その行き着く先にあるのが「ASP」だ。“所有”から“利用”へと変わりつつある行政の情報化について考える。



 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部は今年六月、新たに300を超える施策を盛り込んだ『e―Japan重点計画2002』を策定した。計画の柱のひとつである「行政の情報化」では、〈今後は、電子情報を原則とした行政事務・事業の情報化にも本格的に取り組むことが必要〉とされ、このための地方自治体支援として、(1)研修・啓発、アドバイザー派遣等支援機能の充実、(2)ASP等によるシステムの共同運営、都道府県・市区町村一体となったシステム整備の促進―などを行うとしている。
 これは、平成17年という目標年次への中間段階へ差し掛かったとして全面的な見直しが行われたものだが、計画がスタートした当初と比べると自治体の意識もかなり変化しているようだ。
 昨年秋に『地方公共団体行政サービスオンライン化促進協議会(e―自治体協議会)』が実施したアンケート調査(図1)を見ると、電子自治体のシステム構築・運用にあたっては「自庁独自のシステムを自己構築・運用」が18.1%に対して、「自庁独自のシステムをアウトソーシング」が33.1%と最も多く、「複数市町村で共同センターを設置」(13.8%)「既存の共同センターへ参加」(5%)と合わせると「外部に任せたい」とする意見が半数以上を占めたのである。その背景には、(1)厳しい財政事情、(2)専門知識を有する人材の不足、(3)職員の情報リテラシーの問題、などがある。この解決策として注目されるのがASP(ApplicationServiceProvider)というわけだ。

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図1 電子自治体のシステム構築・運用の望ましい形態

いまなぜASPなのか?

 ASPとは、インターネット等を介してアプリケーション等の提供を受けるサービスの総称。その利用形態は、アプリケーションの提供を受ける「アプリケーション・サービス」のほか、庁内のサーバ自体をデータセンターへ預け、その中のアプリケーションやデータを利用する「ハウジング」、サーバを所有せずにセンターのものを使用する「ホスティング」などのサービスがある。
 国内では数年前にもASPが注目された時期があったが、高速回線などインフラが十分整備されていなかった等の理由で普及には至らなかった。ところが、その後インフラ整備が急速に進み、システム導入・運用の失敗に関するリスク回避や、セキュリティ対策向上などの面から再び脚光を浴びることになったものだ。
 『電子自治体の動向に関する調査』(総務省/14年3月実施)によれば、電子自治体実現に向けて「汎用システムの活用」「民間企業へのアウトソーシング」へ取り組んでいるという回答に混じって、わずかながら「ASP活用」を始めた自治体も登場している(図2)
 そのメリットは、(1)インターネットに接続されていれば、全国どこでも同一・同質のサービスを受けることができる、(2)従来の情報システムに比べて、導入・運営維持費が格段に安いこと、(3)法制度改正等によるシステム改修が不要―など。ほかにも、技術革新の激しい現状ではどんなシステムもすぐ陳腐化してしまうが、ASPならばこのリスクからも解放されるのである。
 一方、デメリットは、システムのカスタマイズが困難だということが挙げられる。場合によっては仕事の手順をシステム側に合わせることも必要だ。むろん、カスタマイズは不可能ではないが、「均一のサービスで廉価を実現する」というASPの特性を考えると、あまり現実的な話ではない。

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図2 電子自治体の実現へ向けた地方公共団体におけるコスト削減への取り組み

新たな革袋には新たな酒を……

 ASPは、今後『総合行政ネットワーク(LGWAN)』でもサービスが提供される計画だ。もし、市町村がこれを利用する場合、都道府県単位あるいは複数団体が集まって形成する「共同センター」、または「民間事業者」からサービス提供を受けることになる。市町村では、これらのサービスを必要に応じて使い分けることができるというわけだ。
 ASPが浸透すれば、従来の情報システムの常識はがらりと変わる。極端なことをいえば、市町村には全職員分のネットワークに接続できる端末があれば何も要らないし、サーバの運用・保守、不正アクセス監視、情報保護やバックアップまで、すべてをアウトソーシングしてしまうことも可能だ。
 とはいえ、現状ではASPに向く業務とそうではないものがある
 例えば、1年に1度しか使用しない「統計データベース」であればASPの方が便利。だが、「住民基本台帳システム」や「税務情報システム」などは、個人情報の保護やデータ連携の観点からも、現時点では庁内に設置されたクライアント/サーバの方に軍配が上がる。このため、ASPを導入する場合は、対象業務が仕事の手順など変更できるかどうかも含め、十分な検討が欠かせない。
 さて、電子自治体実現に向けた準備作業は今秋以降いよいよ大詰めを迎える。だが、電子自治体とは、単に紙のサービスをネット型サービスへと切り替えるものではない。本来の目的はあくまでも「行政改革」なのだ。
 かつて日本人は明治維新という大業を成し遂げた。この時、明治政府は旧体制に基づく藩政を壊し、新たに県政を導入したのである。つまり〈新しい革袋には新しい酒を〉というわけだ。新しい時代には古い体制や常識・習慣は通用しない。この点、ASPは今後の行政経営を支える新しい「情報化」の在り方といえるのではないだろうか。




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7月23日、栃木県・宇都宮市において、「総合行政ネットワーク(LGWAN)」全国センター・林克己センター長による講演が開催された。
「電子自治体の実現に向けて」というテーマで行われた講演は、電子申請・届出等の汎用受付システムの実証実験の話なども交えながら、これから市町村が電子自治体実現に向けていかに取り組むべきかについて語られた。当日は定員120名の会場に立ち見が出るほどの盛況ぶりで、今後の行政の情報化に対する関心の高さがうかがえた。




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