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2005年における生活の情報化



 新聞報道などでは、あまり話題とならなかったが、昨年12月に経済産業省の「IT from the Home研究会」(委員長=羽鳥光俊国立情報学研究所教授)が報告書をまとめた。この研究会は、官と民が一緒となり「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの実現で、人々の生活がどう変化するか」を考えたもの。最終的には、ITを利用した新しい生活関連サービス事業の創造・育成を図るのが狙いだ。
 報告書によれば、2005年には〈自分の居場所や行動パターン、嗜好、買い物のパターン、病歴、プロフィールなどの個人情報が各種サービス・プロバイダーの間をシームレスに流通し、日常生活の随所で情報サポートを少ない労力で受け取ることができるようになる〉という。この基本には、現在のようにパソコンの電源を入れて、インターネットへアクセスする…のではなく、身の回りの家電や電話、自動販売機のなかの“コンピュータ”がネットワークで接続され、これをいつでもどこでも活用できるという考え方がある。
 また、今回の報告書では、行政の未来像についても予測している。時間や地理的制約に影響されることなくサービスを受けられ、引っ越しなどに伴う各種手続きが一度で済む。行政への住民参加も活発となって、〈ボランティアの市民が議事進行役となり、住民同士が自治体の電子会議室でゴミ問題について意見交換〉を行い、その結果、〈地域コミュニティが充実し、在宅介護で悩む住民へのアドバイスや要介護者の話し相手を住民が担うようになる〉というものだ。

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(総務庁「ユビキタスネットワーク技術の将来展望に関する調査研究会」資料から抜粋)

ユビキタス時代の到来

 平成14年1月8日付の日本経済新聞によれば、〈国内におけるブロードバンド通信に加入する世帯数は今年中に900万世帯に達する見通し〉で、報告書の描く社会もあながち夢物語ではない。コンピュータが空気のような存在となる日も間近なのだ。
 こうした家電や電話機、道端の自動販売機にいたるまで、ありとあらゆるものがネットワークでつながることを「ユビキタス・コンピューティング」という。ユビキタスとは、ラテン語で「(神は)いたるところに存在する」という意味。産業界では、新たなビジネス市場として注目されており、これが実現すれば高齢者や身体に障害がある人でも平等にネットワーク社会のメリットを享受できるようになることから、市町村にとっても無関係な話ではない。
 昨年11月には、総務省が「ユビキタスネットワーク技術の将来展望に関する調査研究会」を発足し、今年5月までに具体的な研究開発計画を策定するとしている。
 こうした動きに対応して、ユビキタス社会における住民サービスや地域づくりを見据えた情報化計画を打ち出す市町村も出てきた。 “いつでも・だれでも・どこでも”ITを活用できるユビキタス社会の実現までには、まだ技術や制度面で課題が山積している。だが、技術的課題はすでに実現可能の域に達しており、法制度についても順次整備が進められることだろう。
 生活者に最も身近な行政である市町村は、現在の情報化推進の“照準”を単なる電子自治体の構築にとどめず、その先に広がる「生活者の視点に立ったネットワーク社会」の構築へと定める必要がありそうだ。



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