bannertrendnews.gif



「ICカード事業」求められる独自性



 今年中に約4000万枚が普及するといわれる『ICカード』。大容量・高セキュリティという特徴を生かして、1枚のカードに複数の機能を持たせることができるものだ。プログラム制御で、本人と行政の担当者のみが知るべき情報、金融・医療など特定の機関が使用できる情報…など管理方法を設定することもできる。とはいえ、ICチップには接触型・非接触型などいくつかの種類があり、これがカードごとに用途に応じて採用されているため、持ち歩くカードが1枚になるのはまだ先の話。1枚のカードに複数のICチップを組み込む研究もされているが、重要な情報を一か所にまとめてしまうのも、防犯などの面から議論の分かれるところだろう。
 平成15年8月には、住民基本台帳カード(住基カード)の発行もスタートする。空き領域は条例を制定すれば市町村が独自に利用してよいことになっているが、手間もコストもかかるだけに様子をうかがっているところも多いようだ。そんななか、住基カードの発行を待たず、ICカードによる独自の行政サービスを開始した市町村もある。
 経済産業省の『ICカードの普及等によるIT装備都市研究事業』により、現在、21の自治体・地域でさまざまなICカードが発行されている。その用途は住民票の取得、公共施設予約、バスのチケットなどだが、なかでも個性的なのが神奈川県大和市の例だ。

tr07_01
コンテンツの充実したLOVESのホームページと大和市民カード

地域に根ざすカードをめざして

 大和市では、ICカードのなかに住民票・印鑑証明などの行政サービスの機能に加えて、地域通貨『LOVES(ラブス)』の機能を組み込んでいる。『LOVES』とはLOcal Value Exchange System(地域価値交換システム)の略。現在9万人が参加し、市内の商店などに約1100台のカードリーダーがあるという。
 地域通貨はここ数年増加傾向にあるが、利用が少なく事業が形骸化していたり、サークル単位の小規模なものも多い。なぜ大和市では地域通貨の機能を採用したのだろうか。
 大和市情報政策課の八若孝課長補佐は、「地域に元気を取り戻すことが目的です。大和市は特に、仕事や買い物を横浜市や川崎市でする住民が多く、大型スーパーなども進出してきているため、地域商店街を活性化させる対策を必要としていました。また、ボランティアの謝礼など“お金ではちょっと…”という場合でも気軽に使え、人の交流や物のリサイクルに効果的と考えたものです」と語る。
 商店街では「買い物袋持参の方に50ラブさしあげます」など店独自のサービスを実施。また、市のホームページにある市民電子会議室では『LOVES』の利便性の向上をめざし、市役所の職員を含めた活発な議論が行われている。さらに、大和市では操作説明や普及促進のイベントをNPOへ委託するなど、文字どおり“まちぐるみ”で事業を展開しているわけだ。「行政だけが動こうとしてもだめなんです。コンテンツの充実やカードリーダーの普及など土台作りをしたうえで、住民を巻き込んでいかなければ」(八若氏)
 せっかくのICカードも、流行や多機能化だけを追いかけると、住民本位の行政サービスからはほど遠いものとなってしまう。ICカードはサービスを提供する道具に過ぎない。大切なのは地域の住民にとって必要とされるサービスは何なのか見つめなおすことだ。大和市のように住民の心を動かし、事業運営への積極的な参加を得ることができれば、それは未来の地域づくりへの確かな一歩となる。十分な検討と準備が必要とされるところだ。



バックナンバーへ戻るspacer新風トップへ