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これからの自治体像を問う
―政策官庁への飛躍がポイント―
中央大学経済学部教授
佐々木信夫
ささき・のぶお 1948(昭和23)年生まれ、早稲田大大学院修了。東京都庁を経て、94年中央大学教授。法学博士。専門は行政学、地方自治論。『自治体の改革設計』(ぎょうせい)、『市町村合併』(ちくま新書)、『東京都政』(岩波新書)など著書多数。NHK地域放送文化賞、日本都市学会賞受賞。



 地方自治体に、待ったなしの改革が次々と押し寄せている。長期停滞を破る地域再生策、少子高齢化を活かす地域活性化策、分権改革を迎え撃つ新体制づくり、財政危機を克服する行財政改革、ITなど技術革新への対応と、洪水のように改革要請が強い。明治、昭和に次ぐ3度目の市町村合併も正念場にきた。これをピンチではなく、チャンスと受け止める戦略的発想が必要で、いずれも主体的な改革態度が求められる。
 それには従来の国依存の“待ちの改革”では何も生まれない。さいわい2000年4月から自治事務が7割に拡大し、3割自治体から7割自治体になった。自治体は裁量権が拡大し、もはや事業官庁ではない。「政策官庁」として、地域の公共空間を形成する地方政府への期待感が強い。
 それには、第一に自治体の首長は有権者との契約「マニフェスト(政策綱領)」を必ず守ることだ。従来の選挙公約は単なる選挙向け。もはやそれは通用しない。これからは選挙契約の時代。契約履行の中間結果を公表し、4年間の実績表を提示すべきだ。その採点は有権者が行う。「任期」とはひとつの仕事の単位。だらだらと任期を重ねるのではなく、長くとも3期12年。その間に首長は結果を出す仕事ぶりが求められる。
 第二は議会が変わることだ。従来のチェック機関的な議会ではダメ。分権下の地方議会は立法機関であるべきだ。首長と対等な政治機関として、政策内容を総点検し、自ら条例を提案し、予算の修正も試みるべきだ。現行制度は議会に予算提出権を認めていない。しかし議会として、もうひとつの予算案を作成してみる勇気はないか。全予算を編成してみて初めて自治体の全貌がわかる。そうした政策議会が今後の理想である。
 第三に職員は役人根性を捨てることだ。首長のスタッフとして、本来の「官僚」役割、つまり政策の立案や執行に腕を振るうプロであるべきだ。能力主義を徹底し、経験者採用を増やし、無能力な者は退場を迫る。さらに事業官庁から政策官庁への脱皮には、(1)政策部門の充実、(2)幹部クラスへの執行役員制導入、(3)政策マン育成へ人的投資の強化、(4)政策全体を評価し修正する、スクラップアンドビルドな戦略的発想が必要だ。
 住民はどうすれば「お任せ民主主義」「観客民主主義」から脱皮できるか。参画と協働の責務をどう果たせるか、ガバナンス(協治)時代にふさわしい主体的な自己改革が求められる。それには直接参加の政策投票制の活用や、IT利用の政策提案、政策討論の活発化が必要となろう。
 ともかく、地方分権は自治体が生まれ変わる最大のチャンスである。市町村合併も然りだ。今後はこのチャンスを生かせる自治体だけが生き残っていく時代なのである。



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