bannerkantou.gif


市町村の個人情報保護策は万全に
日本経済新聞社編集委員
中西晴史



 住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が8月25日から二次稼働した。当面の課題は市町村がどれだけ個人情報保護に万全の策を講じることができるかだ。
 住基ネットの安全性論議の中で次のような議論を時々聞く。「だれでも他人の住民票をとれるから、住基ネットになって住所、氏名など6情報が仮に漏えいしてもそもそも問題は少ない」「ハッカーなどと騒ぐが、半分公開されているような情報でもあり、侵入しても意味がなく、杞憂としか言いようもない」。
 住民票の交付は現在確かに難しくはない。申請に当たって、窓口で申請者の身元など厳重に確認されることは少ない。また、ハッカーも住基ネットよりもっとおカネもうけになりそうなところを狙うだろうというわけだ。ただ、これらの議論は二次稼働で全国市町村がネットワーク化されることの意味への認識不足が感じられる。
 これまではA町にいながらにして、B町の知人の正確な住所を知ることはできなかったのに対して、これからは可能になる。極端な例をあげれば、A町職員がストーカーや配偶者暴力(ドメスティック・バイオレンス)の当事者だった場合、遠方のB町居住の相手(もしくは相手の親族、親友ら)の正確な住所を知ることも可能になる。
 成人式用の呉服を売ろうとする人が20歳になるA、B両町の女性のリストを手に入れるために、親しいC町職員の協力を求めることも予想できないわけではない。
 これらのケースは無論、職員が応じるのは禁じられている。罰則や個人情報保護条例で抑止することは当然であり、条例のない市町村は早急に制定する必要がある。
 住基ネットの端末などへの管理も厳重にして、だれがアクセスしたかの記録(ログ)の保存と開示のルールを明確にする必要もある。だれがさわったかがわかれば、不適正な利用への抑止になる。無論、ネットをつないだまま、席を立つといった行為も禁止事項だ。
 また、住基ネットの安全策以前の問題として、既存の庁内情報システム(庁内LAN)の管理がずさんだと、せっかく、住基ネットへの管理が万全としても、市町村間の信頼性が低下する。庁内LANのアクセス・ログの開示体制も必要だ。
 住基ネットで情報漏えい等の事故が起きた時、国、県、市町村のどこが責任を負うのか、ややあいまいな点がある。一応、国(地方自治情報センター)、都道府県間の情報管理は国が安全に責任を負うが、市町村間のネットワークについては自治事務でもあり、市町村の一義的な責任とされる。
 A町の住民の情報がA町から漏えいした場合は責任が簡単だが、そうでないケースでも住民は当然、A町の責任を問うだろう。全国の市町村が信頼しあえるような体制の構築には職員研修、専門家の育成など地道な努力も欠かせない。



バックナンバーへ戻るspacer新風トップへ