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市町村は地域福祉全体の
グランドデザインを描け
毎日新聞編集委員
渋川智明



 厚生労働省は2000年の社会福祉法の改正で、2003年からの市町村地域福祉計画に関する規定を盛り込んだ。ポイントは、(1)福祉サービスの適切な利用、(2)社会福祉を目的とした事業の健全な発達、(3)住民の参加――の3つ。これからの取り組みで、いくつかの問題点や課題を指摘したい。
 地域福祉計画は、実施段階に入っている。しかし、まだ事実上、手つかずの自治体も多い。
 1つは、法律に計画策定の義務規定がないため、緊迫感が薄い。すでに独自の福祉計画を計画中か、策定した自治体もある。既存の計画を地域福祉計画にも生かすことはできるが、結果的に計画がダブることになる。そのほか2003年度に介護保険の保険料見直しが実施され、介護保険事業計画策定の時期と、事務事業が重なったことも影響している。
 厚生労働省は6月19日、市町村職員を対象とするセミナーで、参加市区町村の概況をまとめた。その中にも「高齢者、障害者、児童といった個別具体的な計画についてはイメージがわきやすいが、地域福祉という概念的なものについては、計画しづらい」「市町村合併を控えており、現時点では未着手」「地域住民、福祉関係者、行政各部門のとらえ方に格差がある」などの意見が目立つ。
 これまでの行政のワク組みにとらわれず、住民参加を含めた新たな試みを実行するのは難しい。行政担当者にも戸惑いはあろう。
 しかし地域福祉計画が掲げている理念には注目すべきところも多い。
 例えば、市区町村社会福祉協議会は地域福祉を推進する中心的な団体として位置づけられている。これまでの行政の補完的な役割から、介護保険の実施に伴い、事業者として組織の変革が進められている。地域ボランティア、NPO法人などとの連携を深め、行政と住民をつなぐコーディネーターとしての役割が求められている。行政も積極的に支援して欲しい。
 また特別養護老人ホームなど社会福祉法人の役割も見直す必要がある。高齢者だけでなく、障害者、児童福祉に対する専門的な知識や技術を持っている。情報の積極的な開示を始めとして、地域にもっと開かれた施設として活用されなければならない。
 市町村のなかには、国からの計画押しつけ、と受け止めるところもある。国のタテ割り行政に沿って、バラバラにいろんな計画策定が論じられている側面も、否定できない。しかし地域福祉計画を丸ごと、外部団体やシンク・タンクに委託するようなことがあっては、自らの地域福祉を見つめ直す機会を失うことになろう。先進的市町村では、地域住民、福祉・保健・医療関係者が参加した地域福祉計画策定委員会が設立され、計画の目標や手順が真剣に議論されている。
 問題は計画を策定するかどうかではなく、地域事情に則し、住民のための地域福祉をいかに確立するか、ということであろう。



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