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特集2-1タイトル


DATA
構成団体 堀之内町、小出町、湯之谷村、広神村、守門村、入広瀬村
合併予定日 16年11月
合併形態 対等合併
新市名称 魚沼市
面積 946.93平方キロメートル
人口 4万5386名(平成12年国勢調査)
URL http://www7.ocn.ne.jp/~kitauo/


地方行政が転換期を迎え、市町村には今後の地域経営の在り方が問われている。そんななか、合併で自立した地域づくりを目指すところも増えてきた。そうしたところでは、どんな未来予想図を描いているのか。北魚沼6か町村の取り組みを紹介する。


◆北魚沼地域では、現在、合併を手段として、新たなまち創りに取り組んでおられます。北魚沼6か町村合併協議会の発足にいたる経緯を教えてください。
中川 
この一帯は日本有数の豪雪地帯で、山林・原野が面積の75.3%を占めるなど豊かな自然に恵まれたところです。しかし、近年では過疎化と急速な少子高齢化が進み、平成12年の国勢調査では20年前の人口と比較して3000人減少しました。また、高齢化率は現在24.9%という状況で、このままでは地域の経済活力が低下する一方で医療福祉などの財政負担はますます上昇し、いずれ町村機能の維持が困難となります。こうしたことから平成12年に堀之内町、小出町、湯之谷村、広神村、守門村、入広瀬村による「北魚沼郡町村合併促進協議会」を発足し、14年3月に『合併ビジョンうおぬま進化論』を策定しました。この策定にあたっては、108名の住民代表で構成される「合併ビジョン策定検討委員会」を設置し、6つの分科会で合併後のまちの姿について検討を重ねました。こうした活動を経て、同年7月に「北魚沼6か町村合併協議会」を立ち上げ、16年11月の「魚沼市」誕生を目指して協議を続けています。
◆具体的にはどのような活動を行っているのでしょうか。
中川 
協議会には、それぞれの首長および議会代表、住民、学識経験者など45名が参加し、事務局スタッフ17名がこの活動をサポートしています。6町村では、これまでにも小出郷広域事務組合において、ごみ処理や介護保険などを広域で実施してきましたが、協議会では従来6町村が個別に行ってきた業務の現状調査を行い、およそ1600項目について一元化を進めました。この7月にはほぼすべての議論を終え、8月26日に合併調印式を行う予定です。また、協議の流れは6町村の係長クラスが集まった「専門部会」で原案を作成し、その上部組織にあたる「主管課長会議」「幹事会」「首長会議」を経て合併協議会で協議・確認し、最終的にこれを関係町村の議会において廃置分合の議決を行う、という具合になっています。このほか案件ごとに小委員会も設置しました。

国の制度を利用した「まち興し」

◆合併協議において留意されている点は何ですか。
中川 
合併は“する”ことが目的ではなく、地域社会の将来像を見据えたまちづくりを考える機会――つまり、国の制度を利用した“まち興し”だと考えています。確かに、高齢化や財政の硬直化など課題はありますが、一方で北魚沼地域は豊かな自然と東京から新幹線で1時間ちょっとという立地条件に恵まれています。この地域が誇る自然と文化を売りに“東京の奥座敷”として観光産業が本格化すれば、県内外から交流人口の増加が期待され、地域の自立も夢ではありません。そのため「地方自治」の原点に戻り、北魚沼地域にあった仕組みや制度を考え直そうという意識で取り組んでいます。また、もうひとつ重視しているのが住民との協働です。いま、行政はサービス産業として職員の意欲と能力向上が求められていますが、同時に住民も行政への依存体質を改めなければならないと思います。その点、合併協議は“住民自治”転換へのいいチャンスといえ、行政は住民へ合併の是非を問うだけではなく、住民と一緒になって未来のまちづくりを考えていく姿勢が不可欠といえるのではないでしょうか。
◆それが「合併ビジョン策定検討委員会」設置につながったわけですね。
中川 
そうですね。「合併ビジョン策定検討委員会」では住民自らが未来のまちのビジョン形成を行いました。その理念と成果は、「まちづくり委員会」設置構想として『新市建設計画』にも反映されています。とはいえ、初めからスムーズに協働関係を築けたわけではありません。最初の頃は行政への不満や批判が飛び交い、会合へ参加した職員たちは身の置き所がない思いもしました(笑)。それが、会合を重ねるごとに旧来の行政区域や行政・住民という立場の垣根が取り払われ、相互理解も深まり、新しいまちをどうするか建設的な議論へと展開していきました。
◆住民との協働事例は、全国的に見てもまだ少ないようですね。
中川 
北魚沼地域の場合、96年に完成した音楽ホール「小出郷文化会館」が今回の布石になったといえるでしょう。これも6町村の広域事業です。公共ホールは各地にありますが、小出郷文化会館は館長も民間の方で、住民が主体となって運営されている全国でも珍しい施設です。ここでは世界的アーティストのコンサートが行われるとともに、そうした著名な音楽家が地域の子どもたちへ音楽の楽しさを教えるといった事業も展開しており、芸術文化の発信地として地域へしっかり根付いています。この成果は北魚沼の自慢のひとつですね。このホールも当初は行政主導で計画が進められていたのですが、それに対して住民からいろいろな意見が出され、結果的にそれに行政が応えたことで住民の行政に対する不信感が払拭されていき、住民と行政双方に意識改革を促すきっかけとなりました。これは今後の地域経営を考える上で、いい経験でしたね。

合併は単なる通過点でしかない

◆住民には合併への不安感もあると思いますが、協議会では、そうした声に対してどのような対応策を考えておられるのでしょうか。
中川 
「役場が遠くなる」「中心市街地以外は寂れる」などといった住民の不安を解消するため、新市では「分庁舎方式」を採用することにしています。これは本来、ひとつの庁舎にある部署を機能別に旧庁舎へ分散させるもので、住民と直接接する窓口業務はすべての庁舎に配置することでサービスや住民の利便性の低下を防ぐことが可能です。このため、どの庁舎でも同一の品質でサービスを受けることができるよう、現在、事務マニュアルの作成にも取り組んでいます。また、旧庁舎の活用には住民サービスの観点からだけではなく、財政面でのメリットもあります。新市の職員は800名ですが、いずれは同じ人口規模の小千谷市や十日町並みに減ることが予想され、大きな庁舎を造っても無駄になってしまいますからね。ただ、この分庁舎方式を効率的に運営するためには情報の共有化が不可欠で、すでに広域で取り組んでいる「情報基盤整備事業」などと歩調を合わせながら各種事務処理システムの統合・再構築を進めているところです。
◆なるほど。
中川 
こうしたハード面の整備に加えソフト面からは、新たに複数の町内、集落の連合組織やコミュニティ協議会の設立を考えています。これまでにも町内会など地域のコミュニティはありましたが、例えば、元気な高齢者が介護を要する高齢者を支えたり、棚田を維持するために住民同士が助け合うなど、地域の課題に対応できるだけのパワーはありません。そこで、これを機にコミュニティを小学校の学区単位ぐらいへ拡大して、住民自らが地域計画の策定から実行までを担い、それを行政が支援するような仕組みを模索していこうと考えています。
◆北魚沼地域では、合併協議を契機として、行政と住民との関係がこれまでの垂直的な関係から水平的な関係へと大きく様変わりしつつあるわけですね。
中川 
合併する・しないは地域によってその判断が分かれるところですが、合併するかどうかに関わらず、いずれの自治体でも住民が未来に夢を持てるようなシナリオを描くことは必要です。新市建設計画の検討段階でいろいろな自治体を視察しましたが、「いいまちだなぁ」と思うところは決してほかの真似はしていませんね。なぜならば、歴史的背景も住んでいる人も違うわけで、自分たちの地域に愛着を持った人たちがいちから創造していくことが重要なのだと思います。そのためには当然時間もかかります。実は北魚沼郡は新潟県の合併重点支援地区第一号だったのですが、ほかの地域にどんどん先を越されてしまいました(笑)。最初の頃は「もっと早くできないのか」とお叱りを受けたり、「そこまで細かい議論は不要ではないか」といった意見もありましたが、時間に追われて合併を進めても決していい結果にはなりません。我われはマイペースで協議を進めてきましたが、このプロセスは決して無駄ではなかったと感じています。市町村合併は最終目標ではなく通過点に過ぎず、そこから新しい北魚沼のまちづくりが始まるのですからね。


取材でも登場した「小出郷文化会館」は、まさに北魚沼版プロジェクトXといえる。行政の建設計画に住民が異議を訴え、何度も対立しながら最終的には行政と住民が一緒になって音楽ホールを立ち上げていく、そのサクセスストーリーを綴ったのが『小出郷文化会館物語』(小林真理・小出郷の記録編集委員会編著/水曜社)。これからの地域経営の在り方の参考となるだけではなく、物語としても十分面白い一冊だ。
2000円(税別)



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