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総務省自治行政局地域情報政策室
個人情報の保護に関する条例の制定状況


 本年5月、個人情報保護の基本原則等を確立し、国、地方公共団体、民間事業者を包括する基本法である「個人情報の保護に関する法律」(以下、「基本法」という)および国の行政機関に係る保護法制としての「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(以下、「行政機関法」という)が成立したところである。
 基本法第5条では、〈地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その地方公共団体の区域の特性に応じて、個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する〉とされている。また電子自治体の構築が進むにつれ、地方公共団体が有する個人情報の保護がより重要性を増していること、近年、地方公共団体が有する個人情報の流出事故が相次いでいることなど、各地方公共団体にあっては、地域の実情に応じた個人情報保護対策を図る必要がある。

現在、8割以上が対策を実施

 以下、平成15年度の調査結果を紹介する。
 今年4月1日現在、都道府県および市区町村においては、全3260団体中74.0%(約4分の3)に当たる2413団体が条例を制定しており、制定団体数は前年度と比較して、252団体増加している(11.8%増)。このうち、都道府県、指定都市および特別区においては、すべての団体が条例を制定している。
 なお、この他に個人情報を取り扱う一部事務組合等においても133団体が条例を制定しており、都道府県および市区町村と併せて2546団体が条例を制定している。
 また、条例ではなく、規則や規程等により個人情報保護対策を講じている市町村が415団体あり、先述の条例を制定している2413団体と併せて、全団体数の86.7%に当たる2828団体が何らかの形で個人情報保護対策を講じている。
 条例の対象データの処理範囲として、従来は電子計算機処理に係る個人情報のみを対象としている団体が多かったが、近年は手作業処理(いわゆるマニュアル処理)に係る個人情報も対象とする団体の割合が増加している。
 また、条例で定められている主な規定内容としては、(1)個人情報の収集・記録の規制、(2)利用・提供の規制、(3)維持管理等に関するもの、(4)自己情報の開示・訂正請求等に関するもの、(5)外部委託に関するもの、(6)個人情報処理に係る職員等の責務に関するもの、(7)苦情処理や不服申立手続等の申出等への措置――等がある。


より一層の条例・施策強化を

 近年、高度情報通信社会の急速な進展に伴い、情報通信技術(IT)を活用した行政事務のペーパーレス化、ネットワークを活用した事務処理の効率化が進められる一方で、個人情報の漏洩・不正流出事件が起きるなど、個人情報の取り扱いに対して非常に関心が高まってきているところである。
 このような状況のなか、地方公共団体においては、「基本法」において個人情報保護に関する地方公共団体の責務が定められたこと、「行政機関法」において国の行政機関に係る個人情報保護法制が充実・強化されたことを踏まえ、保有する個人情報に関し、個人情報の処理等に関する条例等の整備、施策の充実等のための措置を講じる必要がある。
 さらに、平成15年6月16日付総行情第91号「地方公共団体における個人情報保護対策について」を参考に、以下の点に留意の上、条例の制定または見直しを行い、地域の実状に応じた適切な個人情報保護対策を実施することが必要である。
 条例の制定または見直しに当たっては、(1)保護の対象となる個人情報の範囲の拡大(マニュアル処理に係る個人情報までを保護対象とすること)、(2)オンライン接続の制限規定(全面禁止から一部制限へ見直すこと)、(3)個人の権利利益への一層の配慮(自己情報の開示・訂正・利用停止等の請求権を規定すること)、(4)救済措置の充実(適切な苦情処理、不服申立て制度等を規定すること)、(5)罰則(個人情報の漏洩等に対する罰則を設けること)、等について留意することが求められる。



関連書籍情報
『漏えい事件Q&Aに学ぶ――個人情報保護と対策』

「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法案)」が成立し、個人情報保護に関する取り組みが活発になっている。こうした動きは、市町村にも広まっているようで、総務省の調査では2828団体、全団体数の86.7%が条例もしくは規則・規程などで個人情報保護対策を講じているという(詳細は本文参照)。
 しかし、残念ながら新聞等でも漏洩事件の報道があとを絶たないのも事実。自治体の例としては、京都府宇治市役所の住民基本台帳データがシステム業者を通じて名簿業者へ流出した事件が有名だ。事件後、宇治市役所に対して損害賠償を請求する訴えが提起され、平成14年7月1日、最高裁は宇治市の上告を棄却、大阪高裁の判決の通り「住民1人あたり1万5000円の賠償金を支払う」よう命じたのである。
弁護士・北岡弘章著
日経BP社 3400円(税別)
 法律施行に向けて、今後はこうした訴訟リスクが高まることも予想され、市町村では十分な対策を取ることが求められるが、こうした問題は単純に規則や規程を制定すれば済むものではない。職員一人ひとりが「なぜ、個人情報を守らなければならないのか」をきちんと理解することが大切だ。
 そうした観点でまとめられたのが『漏えい事件Q&Aに学ぶ――個人情報保護と対策』である。著者はセキュリティ問題を専門とする弁護士・北岡弘章氏。本書はこれまでの判例や事件を題材にしながら、個人情報の取り扱いや漏えいにまつわる法的リスクを取り上げている。
 一般の人にも理解しやすいように難解な法律用語を使用していないため、職員研修などにも最適な一冊といえるだろう。なお、北岡氏のホームページでは関連情報も提供されているので、ぜひ参考にしてほしい。
北岡氏のホームページ(http://www.ne.jp/asahi/lawyer/kitaoka/




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