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ユビキタス・ネットワーク時代の電子自治体
明星大学 人文学部教授
大橋有弘
おおはし・ともひろ 1969(昭和44)年、東京大学教育学部卒。行政管理庁、総務庁において主として行政の情報化推進政策に従事。その間、国連ESCAPにおいて、政府情報システムアドバイザーの任に就く。92年総務庁を辞職。現在に至る。専門分野は情報政策。



 平成15年7月に発表された、『e―Japan戦略II』で示された今後の日本のIT国家形成のための基礎として、ユビキタス・ネットワークの構築が強調されている。
 同戦略では、“同時にいたる所にある、遍在する”という“ユビキタス(ubiquitous)”の本来の意味をかなり拡張して使っている。一つには、ブロードバンドの本格的展開や無線インターネットの全国的普及によって、「いつでもどこでも何でもつながる」ユビキタス・ネットワークの形成であり、ニつには、ITにより、これまでにない新たな産業や市場を創り出す「新価値創造」が重要であり、そのために「人と人だけでなく、人とモノ、モノとモノまで遍く繋ぐ」ユビキタス・ネットワークを世界に先駆けて形成することである。
 『e―Japan戦略』において世界最先端のネットワークインフラが構築されたという総括の上に立って、同戦略IIが掲げた「さらに世界に先駆けたユビキタス・ネットワークを構築し、それによって新しい価値を創出する、活力ある日本の礎とする」という構想は雄大である。
 先に策定された『電子政府構築計画』や『電子自治体推進指針』では、このユビキタスという言葉は直接的には使われていない。しかし、考えてみれば上記計画、指針のいずれも、「いつでもどこでも何でもつながる」ネットワーク環境を前提としており、行政側はすでにその方向で行政サービスの利便性向上、質の向上を図ろうとしているのではないか。ユビキタス・サービスを実現しつつあるのが電子政府構築計画にいうワンストップ・サービスであり、特に地方においては、住民基本台帳制度とそれをベースとした住基ネット、公的個人認証であることは間違いない。
 OECDの電子政府フォーラムでは、住民からの申請を待たずに行政側から個々人に“しかるべきサービスを、しかるべき時に提供”する仕組みが必要であるという議論をしているが、日本の住民基本台帳制度がそれをすでに実現している世界に冠たる制度であることを認識している人は少ない。この制度と住基ネット、公的個人認証によってまさにユビキタス・ネットワーク社会実現の道が拓かれたのである。
 世界に先駆けた日本のユビキタス・ネットワーク社会実現に向けた課題として、コンテンツの充実と個人認証の定着がある。両者が密接な関係にあることはいうまでもない。多くの団体において財政が逼迫している状況の中で、戦略的、戦術的な選択的推進が必要とされ、結果として自治体による差が大きく現れざるを得ない。ユビキタス・ネットワーク時代における行政運営の改革、住民サービスの質の向上に関し自治体の姿勢が問われる状況にある。



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