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 2月2日より、名古屋国税局管内の4県(静岡・愛知・岐阜・三重)において、所得税と個人消費税の電子申告がスタートした。開始初日、一部トラブルはあったものの本格的な“インターネット利用による電子申請・手続”の稼働としては、まずは順調な滑り出しだったといえるだろう。
 名古屋国税局によれば、1月13日現在の「電子申告・納税等開始(変更等)届出書」提出件数は、4968件(個人4656件、法人312件)だという。このすべてが電子申告を行うとは限らないが、その後の増加分を考えると最終的な電子申告の件数は約5000件と推測されている。ちなみに、TKC全国会の会員では、名古屋国税局管内に関与先企業がある会計事務所のうち、200事務所を通じて、1000件を超える電子申告が行われる見通しだ。

国税の電子申告の仕組み

 国税の「電子申告」の開始により、申告書などを税務署へ持参・郵送によって提出する従来の“書面による申告”に加え“電子データによる申告”が可能となり、また納税についても「電子納税」が行えるようになった。
 その利点としては、(1)申告書の送付や申告処理が迅速化され、還付までの時間が短縮される、(2)申告内容がチェックされることから計算ミスが減少する、(3)課税当局にとっては申告書等の郵送費の節約、申告書に係る入力事務の手間が省ける、(4)納税者にとっては税務署へ出向く時間を節約できる――が挙げられる。
 国税庁では、これまでにも平成10年に税務署へタッチパネル式の「申告書作成システム」を設置し、また平成15年にはホームページに「所得税の確定申告書作成コーナー」を設け、インターネットを経由して自宅等のパソコンで確定申告書の作成ができるようにするなど、着々と電子化を進めてきた。そして今年スタートしたのが電子申告というわけだ。
 この電子申告の仕組みは、納税者や納税者から依頼を受けた税理士(税理士法人)が、国税の「電子申告(e―Tax)ソフト」とインターネットを使用して、申告データの作成や国税庁の受付システムとの間でデータ送受信を行うというものだ。「e―Taxソフト」は、納税地を所管する税務署へ「電子申告・納税等開始(変更等)届出書」を提出すれば、入手することができる。
 だが、納税者や税理士の多くはすでに何らかの財務会計システムやソフトを利用していることから、国税庁では電子申告開始にあたって「e―Taxソフト」の仕様をホームページで公開し、ソフト開発会社がこれに準拠した電子申告対応システムを提供できるようにした。

指摘された市町村の準備不足

 ところで、納税者は電子申告をどう受け止めているのだろうか。平成13年4月に国税庁が実施した「電子申告実験に関するアンケート調査」を見ると、電子申告が導入された場合に「利用する」あるいは「場合によって利用する」と回答した人は95%にも上る。
 また、今年2月2日、TKC全国会会員を通じて電子申告を行った納税者へ話を聞くと、まだ利点を実感するにはいたっていないと前置きしながらも、「申告ということでは書類も電子データも変わらない。だが、いずれ電子申請・手続が当たり前になるのだから、いまのうちから慣れておこうと考えた」(浜松市・小売業)と語っている。
 さらに、TKC全国会会員のなかには「毎年、確定申告を行う550件のうち、350件が電子申告の予定」(浜松市・税理士)というところもあり、ここでは関与先企業がいつでも電子申告へ来られるよう事務所の一角に専用コーナーを設置したほどだ。
 こうしてみると、多くの納税者は電子申告を単なる“物珍しさ”だけではなく、前向きな“変化”としてとらえていると考えられ、「今後、地方税がスタートすれば、企業を中心に電子申告は加速度的に広まる」(名古屋市・税理士)ことも予測されている。

「受信通知」第1号は9時4分44秒
 2月2日、名古屋国税局管内に関与先企業を持つTKC全国会会員が「TKC電子申告システム(e―Taxシリーズ)」を利用し電子申告を行った。電子申告第1号となったのは名古屋市の会計事務所で、「受信通知」に記された時間は9時4分44秒だった。
 2日現在で、電子申告を予定しているTKC全国会会員は70事務所。「今後、実施予定」の会員を加えると、最終的には名古屋国税局管内において200事務所を通じて、1000件を超える電子申告が行われる見通しだ。
 初日に電子申告を行った会計事務所では、限られた時間に加え「カードリーダーの到着が遅れた」「納税者の電子証明書が間に合わなかった」などもあって、準備作業はかなり大変だったようだが、それだけに実際、電子申告を行った感想を聞くと、みなさん異口同音に「拍子抜けするほど簡単だった」と話す。
 「国税の電子申告へ率先して取り組み、これを成功させることは税理士の責務だ。税理士がきっかけを作り、それが納税者の間に広まって、地方税が本格化する2010年頃には電子申告がかなりの割合を占めるだろう」と推測する税理士も多く、電子申告の推進機運は全国的な拡まりを見せ始めている。

 だが、そうした納税者の意識と行政側の意識とでは、現状では、かなりの温度差があるのではないだろうか。国税の電子申告でも、税理士や納税者からは「市町村の職員が制度を理解していない」「対応人員が少ない」など行政の準備不足を指摘する声が数多く聞かれ、なかには「29日に公的個人認証サービスを受けにいったところ、そんなものはやっていないといわれた」などという話もあった。
 スタート直後だけに制度やシステムに不慣れな点があるのは仕方がないにしろ、こうしたことから「電子申告を見送った事業者もある」(浜松市・税理士)のは、住民サービスの観点からも今後の行政運営に課題を残したといえる。同じ時期に住基カード虚偽申請事件の報道もあったが、市町村ではこれらを反省点として今後のサービスに活かしていかなければならない。
 そしてもうひとつの見逃せない変化が、電子申告をきっかけに納税者が「市町村間のサービス格差」をはっきり認識し始めたことだ。こうした納税者の意識変化は、今後の地方行政へ少なからず影響を与えることになる。電子申告や公的個人認証サービスなどは、業務変更や新たな処理の発生が伴うだけに、対応する行政の苦労は並大抵のものではない。だが住民側の意識は思った以上に早い速度で進化している。これに柔軟に対応し、新しい時代、新しい制度に応える体制を急ぎ整える必要がありそうだ。


 地方税の電子申告は、平成17年1月、大阪府をはじめとする6団体(岐阜県・大阪府・兵庫県・和歌山県・岡山県・佐賀県)からの導入が予定されている。まずは法人2税(法人事業税、法人住民税、法人市町村民税)と固定資産税(償却資産)を対象に電子申告をスタートし、以降、運用実績を積み上げながら対象自治体と税目を拡大していく方向だ。
 具体的に地方税の電子申告の検討が始まったのは平成13年3月からで、総務省の導きで設立された「地方税電子化推進協議会」において、2年間にわたり制度上の基本的課題について研究・検討がなされた。
 また、技術面では「通信・放送機構」(総務省の認可法人)が標準モデルシステムの仕様書をまとめ、これをもとに平成14年10月に納税者や税理士約150名の参加の下、岡山県、岡山市、邑久町、神奈川県、横須賀市において、納税者システムの操作性や納税者の負担を評価するための実証実験も行われている。このシステムの概要については、その後、各自治体へも周知された。さらに平成15年8月には、電子申告の導入推進母体として「地方税電子化協議会」も設立され、今後はその参加団体によって実施に向けた準備が進められることになっている。

電子申告を実現する3つのシステム

 さて、地方税電子申告システムは、(1)納税者が申告データを作成したり、これをポータルセンターへ送信する機能を持つ「納税者システム」、(2)申告データを受け付け、署名検証や形式チェックを行った後、受付結果を納税者へ返信する機能を持つポータルセンター側の「受付システム」、(3)申告データの内容チェックと申告データの原本管理を行う、自治体向けの「審査システム」――の3つのシステムから成り立っている。


 地方税の場合、国税とは違って同一の税目について複数の自治体に申告を行うケースもあるが、電子申告システムではそうした場合でも、1か所のポータルセンターへ接続するだけで、目的の自治体へ申告データが送信されるようになっている。これら3つのシステムはそれぞれネットワークでつながっており、最終的に申告データは、審査システムから既存の税務システムへ連携されることになる。
 では、各自治体では今後どんなシステム対応が必要になるのだろうか。
 「地方税電子化協議会設立準備委員会」のシステム概要書によると〈審査システムのサーバ設置と運営・管理および既存税務システムの改修は個々の自治体がそれぞれの契約で行う〉とされている。これは国税の電子申告では国税庁が主体となってシステム構築・運営・管理を行っているのに対し、地方税の場合、全国3300の自治体が運営主体となっているためだ。これにより自治体では今後、審査システムの構築と既存税務システムの見直しへ取り組むこととなる。

地方税電子申告のセキュリティ対策
 地方税電子申告は、不特定多数の人がアクセスするインターネットを利用して申告データのやりとりが行われる。この申告データは、各自治体が管理する既存税務システムに連携されるため、機密性の高い情報を管理するサーバをハッカーや第三者の盗み見、改ざんから保護しなければならない。
 また、申告者本人や送信データの真正性の検証も必要だ。これについては、(1)ID(利用者識別番号)、パスワードによる利用者認証、(2)認証局が発行する電子証明書による本人特定、(3)盗み見、改ざんを防ぐための電子署名によるデータの暗号化、(4)地方税電子申告システム全体の安全性を保つためのファイアウォールの設置、などセキュリティ確保のためのさまざまな対策が施されることになる。
 さらに運用面においては、(1)受付サーバ、審査サーバに対するアクセス状況の把握や稼働状態の監視、(2)コンピュータウイルス対策、(3)システム利用状況の記録などが行われる。
 なお、セキュリティに関しては、技術面での対策もさることながら、申告事務に携わる担当者のセキュリティに対する意識の向上や対策への組織ぐるみでの取り組みが重要だ。
 総務省においてもセキュリティ確保を電子自治体構築の最優先課題に掲げ、平成13年にセキュリティポリシーのガイドラインを示すとともに、自治体に対して早期のセキュリティポリシー策定を要請している。

今後のシステム対応は?

 審査システムの構築にあたっては、既存税務システムとのシームレスな連携に加えて、庁内全体を視野に入れた「万全なセキュリティ対策」も考えなければならない。
 また、既存税務システムでは膨大かつさまざまなデータを取り扱っており、これらがすべて網羅されて初めて課税事務が進むことから、通信の仕組みや税務データの処理プロセスを十分考慮した上でのシステム構築も欠かせない。
 一方、既存の税務システムについても、単純に申告データを受け止めればいいということではなく、業務改革の視点から思い切った見直しが必要だ。特に電子申告においては、納税者システムと課税処理を行う既存税務システムの整合性が大変重要で、また、審査システムと既存税務システムはあたかも一つのモジュールとして運用できるような構造が望ましい。このため、メインフレームをベースとした「レガシーシステム」では、より構造が複雑となり、そうした自治体ではこれを機にオープン系システムへの切り替えも検討すべきだろう。
 さらに、こうしたシステムの構築・改修には、市町村にとってITスキルを持った専門要員の確保が必要であると同時に、大きなコスト負担を強いられることになる。事務事業のコスト削減は電子自治体構築の狙いでもあるため、パッケージソフトの活用のほか、アウトソーシングによる対応も選択肢のひとつとして考えたいところだ。


 いずれにしろ、今後は各自治体でそれぞれの実情に応じてシステム整備を進めることになる。そのためには国や関係機関からの情報収集も欠かせないが、TKCでは平成16年度当初課税処理が収束する夏以降、システム検討会やセミナーを通じて、地方税電子申告システム構築に関する情報発信を行う予定であり、ぜひご期待いただきたい。


 電子申告とともに今後の税務行政へ影響を与えるのが「コンビニ収納」の開始だ。地方自治施行令158条の改正により、これが可能となった。
 週末や夜間でも支払いができるコンビニエンスストア(以下コンビニ)を“納付窓口”とすることで、住民サービス向上を図るとともに滞納を少しでも減らそうと、導入を検討する自治体は少なくないが、必要な準備や課題などについては意外と知られていない。
 実施に向けて、まず市町村では以下のような準備作業が必要となる。
(1)収納代行会社との契約(5〜6か月前)
 市町村がコンビニ各社と直接契約する方法もあるが、一般的なのはコンビニの窓口となるコンビニ収納代行会社(以下収納代行会社)と契約する方法だ。ただ、収納代行会社によって、月間の基本料金、納付書枚数ごとの手数料、取扱店舗数などが異なる。この点、都市銀行や地方銀行、信販会社が収納代行を請け負っていることもあるため、まずは市町村の指定金融機関に問い合わせるのが有効だ。
(2)納付書読み取りテスト(3〜4か月前)
 本稼働にあたり、コンビニ本部で納付書のバーコード読み取りテストを行うことから、そのための納付書を事前に収納代行会社へ送付する手配が必要だ。この結果如何によっては、コンビニ収納の稼働時期がズレ込むこともあるので、入念な事前準備が求められる。
(3)収納データの受信テスト(2か月前)
 収納代行会社のサーバーへ接続できるかどうかのテストを行う。すでに金融機関と口座引き落としデータを伝送処理で実施している場合は、ソフトのみをインストールすれば済む場合もあるため、収納代行会社への事前確認が必要だ。また、この時期には、テストデータによる市町村収納システムの検証も欠かせない。

「コンビニ収納」実施への留意点

 また、これらの準備作業と併行して、解決しておかなければならない課題もある。主なものとしては、「コンビニ用納付書の印刷にプリンターが対応しているか」「収納事務に必要な情報をコンビニ用バーコードへどう格納するか」「コンビニ用帳票仕様は従来の金融機関などとは異なるがこれをどうするか」「収納日と入金日の事務処理がコンビニと金融機関等とでは異なるがこれをどうするか」の4点が挙げられる。
 まず、プリンターの問題だが、現在、コンビニ収納で一般的に使用されているのは、納付書へバーコード(JANコード)を4か所印字する方法だが、平成18年7月にこれが廃止され、EAN―128コードへ統一されることが決まっている。このため、流通システム開発センターが提示したバーコードの標準仕様でも、これを採用しているが、印字するには300dpi以上の解像度が必要で、既存のプリンターでは出力できないこともある。
 また、2点目については、コンビニ用バーコードの場合、委託者(市町村)が使用できる桁数は21桁で、そのうち委託者情報の5桁を差し引くと16桁しか残らないことになる。ここへ消込処理を行うための「KEY情報(税目、課税年度、通知書番号等)」をどう格納するか、あらかじめ考えておく必要がある。
 さらに、「コンビニ用帳票の仕様は従来の金融機関などとは異なる」という問題もある。具体的には、現在、市町村の窓口や指定金融機関、郵便局などで使用できる納付書は、左から「通知書兼領収書」「納付書」「納入済通知書」という具合に三連様式となっているが、コンビニ収納の場合、店員の誤作業を防ぐ配慮から、左から「納入済通知書」「納付書」「通知書兼領収書」と、まったく逆になっているのだ。そのためコンビニ収納を実施する場合は、指定金融機関への確認と、様式によっては郵便局(貯金事務センター)への確認が欠かせない。
 そして直接、業務へ影響するのが「収納日と入金日の事務手続きがコンビニ納付と金融機関納付では異なる」ということだろう。金融機関から送付される納付書の収納金データは「確定」されたものであり、送金日と市町村への入金日が同日となる。これに対し、コンビニ収納では、まず前日の払込情報が「仮(速報)データ」として伝送される。その後、コンビニ本部で精査された「確定データ」が約5営業日後に伝送され、市町村の口座へ入金されるのはさらに5〜10日後となる。このように収納受付から入金までの間にタイムラグがあることから、催告書の発送や納税証明書の交付など、最新の納付情報を反映しなければならない場合の対応を考えておく必要がある。

東京と愛知では4月から実施

 さて、新聞報道によれば、大手コンビニ各社が再び出店攻勢に乗り出した。その総店舗数は17年春には2万4900店に達し、郵便局(15年末時点で2万4738局)をしのぐようになるという。
 こうしたコンビニ各社の動きと合わせるかのように、東京都などが今年4月から自動車税をコンビニで払えるようにすることを明らかにしている。今後、コンビニ収納への対応・検討を始める市町村は着実に増えることが予想されるが、そうしたところでは、ここで紹介した点に注意しながら準備を進めていただきたい。
 ちなみに、TKCの「e―TASK税務情報マスター」では、今年4月よりコンビニ収納に対応した新機能を順次提供する予定となっている。



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