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特集タイトル


 いまや市町村における電子自治体構築は、「共同アウトソーシング」のプロセス抜きでは進められない状況である。共同アウトソーシングとは、複数の市町村が電子自治体の実現に向けて業務システムを共同調達し、共同利用することで、相互にコスト削減などのメリットを享受しようとする試みといわれている。


 これまで市町村においては、一部の特定事務について、国(省庁)の指導と助成の下に標準システムの利用が進められたこともあった。しかし、基幹系の業務システムを含め、ほとんどの行政情報システムが独自発展を遂げ、長い時間をかけてカスタマイズが繰り返されてきたのが実情だ。そのため、同じ制度の下に開発された行政情報システムであるにも関わらず、高コスト構造を抱え、市町村間で重複投資を生み、さらにシステムの優劣や開発運用コストに著しい格差をもたらしてきたのである。

指摘される3つの課題

 電子自治体は「住民の利便性向上」「行政事務の効率向上」を目的に、従来の窓口業務に加えて電子的窓口を実現しようとするものである。これが実現すれば、住民票の写しや納税証明書の交付、福祉に係る給付等について、住民はインターネットを経由して24時間どこからでも申請ができるようになる。すでに先行していくつかのサービスを開始している市町村もあるが、本格的な取り組みはこれからといえる。
 電子自治体の実現には、「高額な開発コスト・機器調達コスト」「ITスキルを有する人材の不足」「24時間・365日サービスへの対応」の課題がある。この点、共同アウトソーシングは、これら問題を解決し合理的なシステム調達・運用を実現する手段として期待されている。
 だがその一方で、市町村が共同アウトソーシングへ取り組むには多くの障壁があるのも事実で、市町村の現場からは主に次の3つの課題が指摘されている。
(1)多くの市町村の参加が前提
 共同アウトソーシングは、参加市町村の負担金でシステム調達・運用のコストをまかなうことから、まず負担金ありきの考え方に立つ。多くの市町村の参加を前提としているため、参加が少なければ一団体あたりの負担金は増える計算になる。参加意思があっても確実に予算措置できるか、また、できない場合は他の市町村が応分に負担するのか――場合によっては新たな財政負担となりかねないだけに難しい問題だ。
(2)効果が不透明
 新しい取り組みだけに、「負担金に足るだけの効果がみられるか」「利用者はどれだけいるのか」「標準システムで果たして住民の利便性向上や行政効率向上が図れるのか」という心配もある。一度スタートしてしまうと後戻りできないだけに、負担金ありきのリスクと併せ、意志決定にあたって判断が難しい。
(3)技術革新に追従できるのか
 共同アウトソーシングで調達したシステムは未来永劫利用できるわけではなく、技術革新に合わせた定期的なシステム更新はつきものと認識しなければならない。だが、そのたびに参加市町村の合意形成を図ることができるのか確証がない。
 こうした課題がネックとなっているのか、県域によって共同アウトソーシングへの取り組みにも格差が生じつつあるようだ。そこで、共同アウトソーシングの合理性を生かし、リスク回避を図る方策として注目されているのが「ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)」の利用だ。

ASPは本当に有効なのか

 ASPとは、狭義に捉えればLGWANあるいはVPNなどのネットワークを経由した「アプリケーションサービス」そのものである。その利点としては、次のようなものが挙げられる。
(1)アプリケーションは完成されたものとして提供されることから、開発リスクが低減され、また短期間でシステムを稼働できる
(2)サーバ等の設備投資が不要で、また運用にかかる費用も少額で済むため、極めて低コストで業務システムを利用できる
(3)ハードおよびソフトのバージョンアップなどにかかる作業を軽減できる
 民間企業では、本業に専念するため外部資源を戦略的に活用するのは、ごく自然のことだ。既存の行政事務にとどまらず、「電子申請・届出」などインターネット等を活用した電子行政サービスの提供を同時並行で進めなければならない市町村にとっても、アウトソーシングやASPなどの外部資産を有効活用しない手はない。


 ただ、共同アウトソーシングは、あくまでもシステム調達の手段に過ぎない。その目的とするところは、重複投資を避け低コストで電子自治体の実現を目指すことにある。本質を突き詰めれば、その目的達成にASPが極めて有効な手段であることがご理解いただけるであろう。
 これまで自治体向けのASPはほとんど存在しなかったが、今後はTKCに限らずいろいろな事業者が参入することでサービス内容も一層充実し、地方行政のあらゆる分野で“ASP方式”のシステムが活用されていくことは間違いない。だが、実際にASPを利用しようとすると「セキュリティ面や実務での利用の可否が心配だ」というのが市町村の本音だろう。その場合でも、ASPであればパイロット的に利用して、内容を十分吟味した上で本格導入することもできる。
 ちなみにTKCは、8月2〜3日に開催される「第4回電子政府・電子自治体戦略会議」において、システム展示と導入事例に基づくASPの優位性のプレゼンテーションを行う予定である。そうした機会を通じて、ぜひASPへの理解を深めていただければ幸いである。



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