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ネットもバリアフリーの時代に
富士通株式会社総合デザインセンター・デザインディレクター
高本康明



 総務省が今年9月に発表した「統計からみた我が国の高齢者の姿」によれば、65歳以上の高齢者人口(推計)は昨年より55万人増の2484万人、総人口に占める割合は19.5%に達し、人数・割合ともに過去最高を更新した。このままいくと2014年には25.3%と、国民の4人に1人が高齢者になるという。
 また、同省は平成17年度重点施策において〈2010年に「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークを簡単に利用できるユビキタスネット社会(u―Japan)を実現する〉とも明言している。
 この2つの発表からいえるのは、「今後、高齢者も含めて誰もが簡単にインターネットを利用する社会を目指す」ということだろう。そのような社会にするためには、インターネット上の“バリアフリー”といえる「ウェブアクセシビリティ」が重要なテーマとなる。特に公共性の高い自治体にとっては、今後、アクセシビリティへの取り組みが不可欠となるのではないだろうか。


ウェブアクセシビリティとは

 ウェブアクセシビリティとは、「多様な身体的特性や使用環境の下でウェブを見る人のことを十分に考慮し、多くの人にウェブの情報やサービスを提供できるよう配慮すること」だ。
 いろいろな人がウェブにアクセスする際には、それぞれ異なった困難さを伴う。例えば高齢者にとって、文字の小さいページや複雑な操作が必要なページは利用し難いといえるだろう。また、総務省の実態調査によれば視覚障害者の70%が、ウェブの内容を音声で読み上げてくれる「音声ブラウザ」を使い、新聞社のホームページから各種情報を得ているという事実もある。このような高齢者や視覚障害者の利用状況も考慮したウェブアクセシビリティの改善が必要だろう。
 では、アクセシビリティの高いウェブにするには、どうすればいいのだろうか?
 その問いの答えとして、今年6月に日本工業規格「JIS X8341―3 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス―第3部:ウェブコンテンツ(JIS規格)」が制定された。これは、高齢者や障害のある人が、ウェブコンテンツを利用する際のアクセシビリティを確保・向上するために制作者の配慮事項をまとめた規格である。紙面の都合上、詳細な説明は省くが興味のある方は、日本工業標準調査会のホームページ(www.jisc.go.jp)で、ウェブコンテンツの運営方法などが紹介されているので、のぞいてみてはいかがだろうか。

住民が望み、自治体の目指すHPとは?

 さて、自治体では、ウェブアクセシビリティに取り組まなければならないことは理解していても、現実に実施しているところはまだ少ない。しかし、JIS規格の制定によって、今後は公共性の高いサイトに対する利用者の目が厳しくなることも予想され、アクセシビリティ対応が進む要因になるだろう。
 少ないとはいえ、すでにアクセシビリティの高いホームページに改善している自治体もある。その一つが香川県だ。文字サイズが大きく、行間も広く読みやすい。また、文字色と背景色のコントラストも明瞭で、画像には画像の内容を的確に示す代替情報が付けてある。さらに、コンテンツが明確なグループに分類整理されており、目的の情報を探しやすいなど、多種多様な利用者を想定したものとなっている。

香川県(www.pref.kagawa.jp)

 今後、各自治体がこうしたウェブを構築・維持するためには、人材の育成やサイト運用、診断ツールやCMS(注)の活用の検討が必要となってくるだろう。
 現在、富士通では、ウェブアクセシビリティを高めるため、さまざまな活動に取り組んでいる。その一つとして、ユニバーサルデザインを広く世界に発信し、人類全体の福祉向上に寄与することを理念とする「国際ユニヴァーサルデザイン協議会」に設立当初から参画し、富士通名誉会長・山本卓眞が本協議会の会長を務めている。

富士通(jp.fujitsu.com)

 また、今年2月からソフトウェアツール群「富士通アクセシビリティ・アシスタンス」(design.fujitsu.com/jp/universal/assistance/)をホームページ上で公開し、無償ダウンロードにて提供している。これは、(1)ホームページがJIS規格に従っているか、(2)背景色と文字色が白内障者や色弱者に読みやすい最適な組み合わせか、(3)文字や動画像の色合いをシミュレーション表示して、色弱者にどのように見えているか――を診断する3つのソフトウェアからなる。すでに5万本以上がダウンロードされ、多くの人に利用していただいている。
 住民票や印鑑証明の発行から施設予約サービスなどの行政サービスが、インターネットを利用して行われる社会になりつつある。これらのサービスは、住民に対して平等にできるだけ多くの人が、そのサービスを簡単に受けられるようにしなければならないだろう。そのためには、自治体とIT企業が一体となって協力し、誰もが参加できるIT社会の実現を目指さなければならない。そして、その結果が世界一の高齢者国でありながら、活力ある社会の実現につながることを期待したい。


※注 CMSとは「Content Management System(コンテンツ管理システム)」の略で、ウェブサイトの管理・作成の手間を軽減するために、コンテンツを編集・管理するシステムです。



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