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7.13 新潟・福島豪雨の教訓
自治体の危機管理対策を考える
※本原稿は10月1日に中之島町殿へ取材した内容をもとに構成しました。



 平成16年7月13日、新潟県中之島町を流れる刈谷田川が決壊。濁流は近くの妙栄寺をなぎ倒し、がれきと化した柱材や墓石、鐘などが付近の住宅を次々と襲い、役場を含む一帯は瞬く間に冠水した。
 この水害による中之島町の被害は死者3名、全壊家屋56戸、半壊335戸、床上浸水99戸、床下浸水1000戸余り。亡くなった3名はいずれも高齢者で、被災直後、マスコミ各社は避難勧告から決壊までが十数分だったことを指摘し行政のミスと報じたが、そこには気象異変という視点が欠けている。事実、13日当日の新潟県上空には梅雨前線が停滞し、上流の栃尾市では、1日で2か月分の降水量にあたる421ミリの集中豪雨に見舞われていた。
 中之島町でも刈谷田川の決壊に備えて災害対策本部を設置し、当日朝から危険か所に消防団員を配備するなど警戒態勢をとっていた。午前中、対岸の見附市側では川の水が時折堤防を越える「越水」が起きていたが、町側の堤防に何ら異常はなかったという。だが、正午を過ぎて状況は一変。水位が急激に上昇し、警戒水域に達した時点で避難勧告を発令したが、結果的に堤防は短時間で決壊した。しかも現場はかつて一度も破堤したことのない場所で、近年になって“百年確率”に基づき改修工事が施されていたのである。
 当時、対策本部で陣頭指揮にあたった佐々木保男助役は、「高齢者の速やかな避難誘導など災害対策は整備していたが、想定以上の自然の威力を前に為すすべもなかった」と悔しさを露わにする。

異常気象は他人事ではない

 今回の水害から、地方自治体が教訓とすべき点は多い。実際、中之島町には数多くの地方自治体が視察に訪れているという。そこで決まって質問されるのが、「避難勧告のタイミングと情報伝達の方法、そして災害弱者対策」(佐々木助役)だ。
 避難勧告の時期について、水位観測システムの不備を指摘する専門家もいるが、これは単なる手段の話に過ぎない。すでに自治体では地域特性に合わせた災害対策をたてていると思われるが、今年の日本列島は記録的な猛暑や局地的な集中豪雨、史上最多の10個の台風上陸など気象異変が相次ぎ、現状と合わなくなっているのである。また、特に阪神・淡路大震災後は大地震を強く意識した対策となってはいないだろうか。自治体の危機管理体制が問われているいま、大切なのは異常気象を他人事ととらえず、これを想定して現状の情報収集体制から避難基準、災害復旧まで対策全体を見直すことだ。
 なかで最も重要な課題が、「確実で迅速な情報伝達の方法」(佐々木助役)だろう。激しい雨という気象状況で、窓を閉ざした家の中にいる住民へ広報車の声やサイレン音が確実に届くとは限らない。間違いなく情報を伝達するには全戸に防災無線を設置するのがベストだが、莫大な費用がかかる。すぐにでも取り組める対策として、佐々木助役は「地域ごとの自主防災組織を設置してもらうこと」だという。そして「ここと連携して避難訓練を行うなど今後は行政と住民、地域が一緒になって災害対策を考える必要がある」と話す。

災害弱者をどう守るか

 災害弱者対策は阪神・淡路大震災の直後から指摘されてきた問題だ。
 今回被災した中之島町では、高齢化率が2割を超えており、お年寄りの独居・夫婦世帯も多い。そこで町では日頃から民生委員を通じて高齢世帯の状況を把握し、自治会や民政委員を通じた災害時の緊急連絡体制や災害弱者の援護対策を整備していたが、濁流が一気に押し寄せる状況ではまったく機能しなかったという。
 その点では、ひと口に災害弱者といってもいろいろなケースがあり、「机上のプランではなく、あらゆる場面を想定した避難誘導の方法などきめ細かな対策の整備が必要」といえる。だが、行政側だけの視点では分からないことも多い。対策の実効性を高めるためには、災害弱者を含めた住民や地域、関係機関にも検討作業へ加わってもらうなどしてニーズを汲み上げ、逆に意識浸透を図ることが不可欠といえるだろう。
 また、もしも災害が起きた場合、災害弱者の救援や復旧支援において消防や警察、社会福祉協議会、ボランティアなど複数の関係者といかに円滑に連携できるか、自治体のコーディネート力も問われている。この点、中之島町では、被災後即座に専門家の指導でボランティアセンターを立ち上げ、ここを窓口として町内外から集まった延べ2万人のボランティアたちが各家庭の泥の排出にあたるなど災害弱者を支援したという。そうした各方面との連携方法なども平時から検討しておくべき事項だろう。
 さらに円滑な救援活動や復旧支援を行うためには、即座に災害弱者の状況を把握することが重要だが、今回のように役場自体が被災した場合、コンピュータシステムが壊滅状態となり行政情報がまったく活用できなくなる畏れもある。
 幸い中之島町ではサーバを2階に設置していたため被災を免れ、行政情報を被災状況や安否確認に利用するとともに、臨時庁舎までの交通手段が確保された4日後には住民票や印鑑証明のほか、洪水で流された国民保健証の発行を開始できた。庁舎スペース等の問題があるとはいえ、安全な場所へサーバを移す程度ならば、どこの自治体でもさほど困難な話ではないだろう。
 また、電子自治体への取り組みという点では、物理的な対策とともにインターネット・データセンター等を活用したデータバックアップなども検討すべき課題といえる。
 「地域住民の生命と財産を守ることは行政の基本だ。改めて今回の水害を検証し、原点に立ち戻って防災対策を見直すことが我々の責務」と佐々木助役はいう。大震災の脅威と頻発する気象異変――自然災害はいつどこに襲いかかるか分からない。自治体の災害対策は、まさに“備えあれば憂いなし”の一言に尽きるのである。



10月23日、新潟県中越地震が発生し、中之島町を含め多くの市町村が被災されました。被災地域の皆さまには、社員一同心からお見舞い申し上げます。



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