bannerkantou.gif


変革の時代のリーダーシップ
前財団法人東京都公園協会理事・東部支社長
中央大学大学院/聖学院大学・非常勤講師

伊藤章雄
いとう・ゆきお 1941(昭和16)年生まれ、67年、中央大学経済学部国際経済学科卒、68年、東京都庁入庁、企画審議室、総務局などを歴任。(財)東京都公園協会理事・東部支社長を経て、03年より三井住友海上火災保険・顧問。『行政マン リーダーの条件』など著書多数。



 競争、分権、民間原理の渦巻く大転換期である。管理・監督者が、目標達成に向かって驀進する飛びぬけたリーダーシップを発揮すべき時だ。
 権限や知識・経験を中心とする従来型のリーダーシップは、神通力を失った。IT化やグローバル化で、官民を問わず若い世代の知識や情報能力がアップし、リーダーの決定・指導の良し悪しを客観的に判断できるようになった。競争原理と自立精神の浸透で、人々の組織への忠誠心や帰属心も薄れつつある。若者は反対意見を堂々と述べることに躊躇いも遠慮もない。リーダーが鮮やかな判断を示して、はじめて命令を受け入れるのである。
 こういう状況であっても、逃げず、正面から立ち向かうほかないのがリーダーの宿命だ。
 武器はある。「判断力」「情熱」「知恵」「勇気」「カリスマ性」などだ。これらの武器は決してITスキルに負けるものではない。
 リーダーシップを改めて定義すると、「部下の共感と達成意欲を引き出すこと」といえる。判断力や知恵といったリーダーの“武器”による影響・支配力を通して、部下の“共感”や“やる気”を引き出し、その持てる力を“組織目標の完全達成”に寄与させることなのだ。加えて、忘れてならないのは、リーダーの感性である。
 現在、行政活動の「数字化」現象がかなり進んでいる。例えば、道路、公園整備、産業振興、医療・福祉といった分野などで、行政評価制度を通じた「数字」による効果測定が行われている。目標管理や業績評価における「明るい職場づくり」といった、本来、アナログ的なアプローチになじむ項目にも数字が導入されている。言ってみれば効率追求のシンボルともいうべき無機質な数字という砂漠化が、職場を席巻している。いずれ、行政組織のみならず地域社会も数的に処理され、乾いた世界になっていくだろう。
 だからこそ、これからのリーダーシップは「感性」「情念」を豊かにしなければならないのである。人間味に溢れ、何事にも体当たりで臨むリーダーシップでなければ、血の通った行政運営はできない。潤いも怒りもある統率力、指導力が必要だ。これはダニエル・ゴールマンのいう、EQ(心の知能指数)の豊かなリーダー像とほぼ同じである。EQは情念の指数とも言われるが、要するに情熱やカリスマ感覚であり、知的活動のエネルギー源なのである。
 では、その能力を養うためにはどうすればよいのだろうか。
 答えは至って簡単だ。勇気が必要なときは勇気を出す。愛情が必要なときは愛情を出す。情熱が必要なときは情熱を出す――まさに、その実行に尽きるのである。



バックナンバーへ戻るspacer新風トップへ