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行政情報システムの
抜本的改革の課題と留意点
富士通総研 第一コンサルティング本部
公共コンサルティング事業部 事業部長代理 プリンシパルコンサルタント

榎並利博
えなみ・としひろ 1981(昭和56)年、東京大学文学部考古学科卒、富士通入社、住民情報システム等の開発に従事。96年、富士通総研へ出向。行政経営、電子政府・電子自治体分野を中心にコンサルティング、リサーチ活動を展開。『社会変革する地域市民』など著書多数。



 平成の大合併で、3200余りだった市町村が来年3月末までに1822へと再編されることになった。これは国および地方の財政問題を解消するための一つの布石であり、本格的な改革はこれからが本番だといってよいだろう。
 これまでも自治体は、定数削減、経費節減などの行革やニュー・パブリック・マネジメントの導入によって改革を実行してきた。しかし、地方公務員数がこの10年連続して減少し給与水準もかなり低くなっているものの、一部で職員の厚遇問題が発生するなど従来型構造の問題の根深さが明らかになってきている。ともすれば合併問題で先送りされてきたこれらの課題に、自治体は本格的に取り組まなければならない。
 行政情報システムについても同様なことがいえる。合併した(あるいはこれからする)自治体は住民に不安感を与えないよう合併後業務運用の安定稼動を最優先とするため、業務そのものの見直しを追求するまでに至っていない。合併前の水準を維持するために水ぶくれになっている機能やサービスもあり、情報システムには大きな改善の余地を残している。
 また、合併を選択しなかった自治体においても、合併論議に巻き込まれて情報システムの積極的な見直しや新規事業を見合わせたところが多かったと推測している。行政情報システムも行政改革の流れの中で抜本的な改革を免れ得ず、電子自治体の標準化・共同化や行政情報システムの最適化などによってコストダウンに取り組んでいかなくてはならない。
 ここで注意しなければならないのは、「電子自治体ありき」「標準化・共同化ありき」「オープンシステム化ありき」の風潮に流されないことである。既存の手続を改革せずに市民の視点から乖離した電子申請システムを構築しても誰も利用しない。また、改革の覚悟のない標準化・共同化は議論ばかりに時間を費やし以前と何も変わらない。TCO(総所有コスト)の観点のないオープンシステム化はコストダウンにつながらない。経営資源としての情報システムをいかに経済的・効果的・効率的に構築していくべきか――自治体は行政動向と技術動向をしっかりと把握した戦略を持たなくてはならない。
 最後に、「公共」とは行政が維持管理するものではなく、行政と民間が協働して構築するものという概念への転換が起きつつあることを指摘しておきたい。規制改革・民間開放の推進で地方税徴収が民間に開放されることになった。料金徴収のノウハウやシステムを持つ民間企業に委託すれば、あえて自治体で徴収のためのシステムを維持管理する必要はない。今後はこのようなケースも視野に入れながら、行政情報システムの抜本的改革を行っていく必要がある。



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