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どうすれば「ローカルIT革命」を
実現できるのか
兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授
中野雅至
なかの・まさし 1964(昭和39)年生まれ。88年同志社大学卒、大和郡山市役所入所。90年労働省入省、94〜96年米国留学。その後、新潟県総合政策部情報政策課長、厚生労働省大臣官房国際化課長補佐等を経て、04年より現職。『ローカルIT革命と地方自治体』『はめられた公務員』など著書多数。



 いま、地方自治体のIT政策は「踊り場」にある。地域全体の情報化を図る地域情報化政策は、情報ハイウェイというインフラ構築をほぼ終えたいま、それをどう有効活用するのか、それを離れてどう地域の情報化を促進するのかという課題を抱えている。一方、行政情報化もインフラを整備し終えたものの、電子申請や住基カードの利用は思ったほど進んでいない。このような官側の停滞の一方で、ITベンチャー企業がプロ野球の球団買収に乗り出すなど、民間部門でのIT活用が相当進展していることが一層明確になった。
 このギャップが地方自治体のIT政策の“踊り場観”を一層強くしていると思われるが、どうすればこれを解消できるのだろうか。ここはもう一度原点に返って、「住民のニーズがどこにあるのか」を把握することが何よりも必要だと考える。地域の情報化を進めるにしても、行政の情報化を進めるにしても、住民のニーズを的確に把握できてこそ地域独自のIT革命(=ローカルIT革命)を実現できる。では、具体的にどのような政策を実施すればいいのか。行政情報化、地域情報化のそれぞれについて提言しよう。
 まず、行政情報化の分野であるが、どういう電子申請が求められているのか、どういう情報の提供が求められているのかを的確に把握しよう。自治体は1年計画ですべての地域を自分達の足で回る。記述式のアンケートを配布し、住民のニーズをこまめに把握する。意外にも電子申請などよりも、HPの充実が求められている可能性が高いかもしれない。あるいは、複数の自治体が行っているように電子会議室で出された意見を政策へ現実に結びつけていくことが求められているのかもしれない。
 次に、地域情報化の分野であるが、生活・福祉分野は行政主導のネットワークではなくIT化を進めるNPOに対する支援、NPOへのIT活用に関する知識供与を行う。産業分野では「すべての地域がIT産業を誘致できるわけではない。ましてIT産業の集積が実現するわけではない」ことをまず自覚すべきだ。その上で、IT産業の振興に不向きな地域は、近隣の都市部でIT産業が集積する地域に「相乗り投資」することも考えるべきだ。また、地域の魅力を高めるためには何よりも人材資源の開発が最重要であることを認識し、官民協調のIT人材の育成に努める必要がある。
 踊り場にあるとはいえ、地域のIT政策が持つ潜在能力は依然として高い。上手く政策展開すれば、地域を確実に変えていく力がある。その意味では地道に投資効果を求める分野だ。1年後の効果を求めるのではなく、政策評価のスパンを長めにとって取り組みたい分野である。



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