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徹底したサービス品質の向上で
水道事業の経営革新へ挑む
栃木県宇都宮市上下水道局


宇都宮市
上下水道局DATA
住所 栃木県宇都宮市河原町1-41
電話 028-633-3108
最大給水量 約20万トン
給水人口 約48万人
URL  http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/suidou/


宇都宮市上下水道局
サービスセンター 斎藤 修所長


◆今年2月、松田新田浄水場において、品質管理の国際規格であるISO9001を認証取得されましたね。
斎藤 
はい。宇都宮市上下水道局では現在、市内の上下水道事業と河内町の水道事業を行っており、給水人口は約48万人に達しています。そうした中でISO9001認証取得へ取り組んだのは「お客様重視」の視点で、より一層安全で信頼される水道水の製造を目指したものですが、浄水場が認証を受けるのは珍しく、給水人口25万人以上の水道事業体では全国初、また東日本においては初の認定となりました。鬼怒川などを水源とする宇都宮の水道水は水質が高く、これまでにも市民から「おいしい」と評価されていましたが、この認証取得で水道水の“製造工場”として品質を常に維持・向上させる体制が整ったといえますね。

事業体を取り巻く厳しい経営環境

◆とはいえ水道事業を取り巻く経営環境は、年々厳しくなっているそうですね。
斎藤 
いま全国的に水需要が伸び悩み、市でも水道料金収入は減少傾向にあります。その理由は主に「節水機器の普及」と「地下水ビジネスの影響」です。水を無駄にしない意識が広まるのはいいことですが、一方で地下水ビジネスの拡大により、大量の水を消費するショッピングモールや病院などが「専用水道」へ切り替えているのは大きな脅威ですね。しかし、いくら経営が厳しくても安易に料金を値上げするわけにはいきませんので、現状の料金を維持するために経費の圧縮に取り組んでいるところです。情報システムを見直したのもそうした経営効率化の一環でした。
◆なるほど。従来はどのように処理をされていたのでしょうか。
斎藤 
これまでは、市のホストコンピュータを使って「水道料金オンラインシステム」を運用し、また検針業務用にC/Sシステムを導入してハンディターミナルを使用したデータ処理を行い、それぞれのシステムを連携させていました。しかし、コンビニでの料金収納などお客様サービスの変化に伴いシステム改修が恒常化しており、特に今年4月から口座振替利用者に対し選択制による毎月徴収を開始したのですが、この検討のなかで「システムを改修するよりも再構築をした方が、効率的かつ効果的」との結論を得ました。当時は近隣市町との合併も意識されていたことから、この点でも柔軟に対応できるシステムへの切り替えは必須でしたね。そこで調査検討の結果、「機能的な要求を満たしコストパフォーマンスに優れている」ことで、TASK .NETシステムを選びました。
◆システムの移行によって、業務などはどのように変わりましたか。
斎藤 
従来は、システム担当の職員が市庁舎まで毎日通っており、また、システム運用の面でもこれまではホスト側のスケジュールに従うなど時間的な制約がありました。しかし、いまでは夜間のお客様対応や、休日運用が可能となったことで、土曜日にも稼働する検針業務の支援が提供できるようになりました。そして最も大きな変化は、情報の共有化が進んだことですね。例えば、従来の収納業務では、未収金の対応経過などを紙で管理していたため、担当者でなければ分からない部分もありました。それがいまではシステムですべての対応記録を管理しているので、問い合わせがあった場合に経過を確認しながら誰でも対応できるようになりました。これは職員にとって便利なのはもちろん、お客様を待たせずに的確かつ公平に対応できる点でも大きな効果だと思います。

企業人への意識転換から始まる

◆経費削減の効果はいかがですか。
斎藤 
平成16年度は年度途中のため比較できませんが、15年度と17年度の予算を比べるとトータルで約50%のコストが削減できました。ただ、将来性を考えると、そうした自助努力とは別に収益を確保する努力も必要で、今年から検針票へ企業広告枠を設けるなど新たな挑戦も始めています。とはいえ別の収益事業をやるといっても限界があり、水道水のペットボトル「泉水」も一般販売は難しく、現状ではほとんどPR用ですね(笑)。やはり、水を売って“商売”をしている以上、最も大切なのはお客様へ水道事業への理解を深めていただき、いかに水の需要を開拓していくかでしょう。宇都宮市では、毎年30名の市民に上下水道のモニターになっていただいていますが、これは単に意見を聞くだけではなく、モニターという固定ファンを増やし、クチコミで「安心して飲めるおいしい水」とPRしてもらう効果も狙っています。このほかにも水道施設の1日開放やミネラルウォーターと水道水との飲み比べ、「お届けセミナー」の実施、上下水道の広報誌発行などへ積極的に取り組んでいます。
◆情報システムは今後の事業活動へどう関わるとお考えですか。
斎藤 
いまや業務を行う上で情報システムは不可欠なものですが、今後は業務の効率化だけではなく、お客様へさらに質の高いサービスを提供するための支援システムとして一層の活躍が求められますね。そのためにはシステムの柔軟性、あるいは先進的な技術や技法への適応性に加え、さらに優れたコストパフォーマンスの追求も必要でしょう。その点、新システムはまだ稼働し始めたばかりで、従来のホスト処理と比較すると物足りなさを感じる部分もありますが、さらに有効なシステムとして進化していくことを期待しています。
◆今後のご計画を教えてください。
斎藤 
公営企業として、お客様へ高品質なサービスを提供することと収益性の向上は今後も重要なテーマです。そこで局全体でISO9001の考え方を採り入れて、サービスの品質を維持・向上できる仕組みを構築する計画です。このPDCAサイクルを円滑に運用するためにも、情報システムは欠かせませんね。よく「行政は最大のサービス産業だ」といわれますが、いま宇都宮市全体でもそうした意識は着実に広まっており、なかでも公営企業である私どもは“企業人”としての自覚を持つべきと考えています。例えば、民間企業であればお客様へ「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と声をかけるのは当然ですが、これが慣れないとなかなか難しい…(笑)。そうした些細なことを一つずつ変えていくことで、市役所もまた新たな時代に適応した“地域のサービス拠点”へと進化していくのではないでしょうか。


記者の目
斎藤所長の話をうかがっていると、頻繁に「お客様」とか「サービスの質」という言葉が登場してくる。経営革新をはかる仕組みをつくり、経費削減など自助努力とは別に収益確保の道を探る――その攻めの姿勢に、新しい時代の行政リーダー像を垣間見た気がした。



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