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 「2005年に世界最先端のIT国家となる」ことを目標としたe―Japan戦略も、いよいよ今年が最終年度にあたります。この間、日本ではブロードバンドの急速な普及が進み、いまや全国から安価で高速なインターネット接続が可能となりました。そうした社会環境の変化とともに、地方公共団体においても「住民の利便性向上」と「行政事務の効率化」を目指す電子自治体構築に向けた環境が整備されてきました。
 そして、平成17年秋。先進的な団体では相次いで「電子入札・調達」「電子申請」「公共施設案内・予約」など高度ネットワーク社会に対応した“ノンストップサービス”の提供を始めています。

来年度中に、56%がサービス実施

  『日経パソコン』(平成17年7月25日号)のe都市ランキング調査を見ると、すでに全体の25.6%の市町村が何らかの電子申請サービスを「開始済み」で、今年度中には8.9%の市町村が新たにサービスを開始すると回答しています。これに「18年度から実施予定」を含めると56.1%となり、19年3月には半数以上の市町村で電子申請サービスが実現する見通しとなりました。
 参考までに、1年前に総務省が実施した「地方公共団体における行政情報化の推進状況調査」(47都道府県・特別区を含む3123市町村/平成16年4月1日現在)では、「開始済み」または「18年度までに実施する」としたところは38.7%でした。2つの調査を単純に比較するのは難しいものの、わずか1年余りの間で急速に意識が高まった様子がうかがえます。
 背景には、共同アウトソーシング事業の進展とともに、最大の課題であった市町村合併に伴うシステム統合作業が一段落したことで、市町村の関心が本格的な電子自治体構築へとシフトしたものと考えられ、今後、各種手続のオンライン化が加速度的に進むと予想されます。
 一方で、電子申請サービスを開始しても、期待したほど利用件数が伸びない例も少なくありません。原因としては、(1)公的個人認証が伴う電子申請では、住基カードや電子署名の取得、ICカードリーダの増設など事前準備が煩雑、(2)電子申請を利用しても公文書の受け取りや手数料の支払いのために窓口へ行かなければならない、などが挙げられています。
 とはいえ、同じ条件下で順調に利用者数を増やす市町村があるのも事実で、不調の根本原因には「住民不在の電子化」――つまり、従来の“紙による申請・手続”を電子化しただけで、“利用者ニーズ”を置き忘れていたことがある、との反省が地方公共団体の間で広まっています。

利用されるサービスとは?

 住民にとって「電子申請」のメリットとは、従来の窓口に加えて携帯電話やパソコンからも申請できるようになるといった“申請手段の選択肢”が増えることにあります。
 そうした反省点を踏まえて、最近では住民が利用しやすい、利用件数が見込める申請・手続業務からサービスを開始し、段階的に住民の潜在ニーズを喚起していこうとする市町村が目立ってきました。
 例えば、栃木県鹿沼市では平成16年9月1日から「公共施設案内・予約サービス」を開始していますが、実施にあたっては住民のメリットを最重視し、最初からすべての施設を対象としたほか、住民個々のライフスタイルに合わせて最も便利な申請方法が選べるよう携帯電話などにも対応しました。また、広報活動にも積極的に取り組み、NHKニュースがこれを紹介したことで市外からも注目され、サービス開始後1週間で2000件のアクセス数を記録。以後も順調に利用者を増やしています。
 また、本号8ページでご紹介した沖縄県那覇市も、住民側からサービスを発想した典型的な例といえるでしょう。「電子申請・届出」では、電子化が検討される470種類の手続きから29へ絞り込んでサービスを開始しました。特に人間ドックの申込みは潜在ニーズとぴたりと合致したようで、利用件数が一挙に増加。さらに9月には実施要望が多かった公共施設案内・予約もスタートします。
 こうしてみると電子申請サービスを開始する場合は、携帯電話への対応など、より多くの住民に利用してもらえるような利用環境の整備が必須条件といえ、その上で以下の3段階でサービスを展開していくのが効果的と考えられます。
【第1段階】粗大ごみの回収やボランティア申込みなど、名前と連絡先(電話番号やメールアドレス等)で手続きが完結するもの
【第2段階】公共施設の利用申請や講座申込みなど、リピーターが期待されるもの
【第3段階】電子署名を利用した申請・手続への対応、利用手続数の拡大

数年後には大きなサービス格差も

さて、19年春には半数以上の市町村で電子申請が始まる一方、残りの44%は「実施予定なし」としており、このままいくと数年後には住む場所によって行政サービスの質や住民の利便性に大きな格差が生じることになります。電子窓口への対応に伴い、業務量やITコストの増加なども懸念されますが、いつまでも様子見というわけにはいきません。
 この点、コストや手間の負荷が少なく、段階的に取り組めるということで注目されているのが、ASP方式のシステムです。実際に当社が提供する「TKC行政ASP/電子申請・届出システム」を見ても、すでに来春までに20団体での利用が予定されており、都道府県単位で推進する共同アウトソーシング事業においても、ASPに着目して実証実験を計画・検討するところが増えてきました。
 厳しい財政事情のなか、いかに手間とコストをかけずに、住民にメリットのある電子申請サービスを短期間で実現するか――これからが市町村の“知恵の絞りどころ”といえそうです。



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