bannerkantou.gif


自治体版市場化テストで官民協業推進を
市場化テスト推進協議会会長
専修大学教授 商学博士

櫻井通晴
さくらい・みちはる 1971(昭和46)年、早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了、79年教授。BSCに関する訳著のほか『管理会計』『間接費の管理』など著書多数。日本の管理会計研究における第一人者で、『地方自治体の2007年問題』など行政経営の効率化に関する研究も手がける。



 地方の財政事情が厳しいことは、改めていうまでもないだろう。限られた財源を住民サービスのために効果的に活用することは自治体にとって非常に大切なことだ。
 市場化テスト推進協議会は昨年4月より活動を開始したが、発足の契機の一つは2003年度に経済産業省において開催された「行政サービスの外部委託に関するビジネスプラン研究会」にある。研究会では、地方自治体の行政サービスを対象に、その質と効率性の向上を実現するため「ABC(活動基準原価計算)」を活用したコスト分析と、自治体内部での業務改善および民間によるビジネスプラン策定を実施し、官民協働のあり方を検討した。私自身、座長として関わり、最終受益者たる住民のためにこそ、より良い官民協働の実現が求められるという方向性の下で全体の取りまとめを行った。
 そもそも市場化テストとは官と民が対等な立場で競争し、官よりも民の方が低コストで優れたサービスが提供できるのであれば公共サービスを民へ移管し、住民へより優れたサービスを低コストで提供しようという仕組みである。優れたサービスの提供という前提の下ではコストを中心に、官と民が中立の立場で公正な競争を行うことになる。この制度は、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなど多くの先進諸外国で成功裏に実施されてきた。単に民間委託や民営化を行おうとするものではなく、競争入札を通じて行政サービスの価格と品質を重視しているところに特徴がある。
 4、5年ほど前に実施した社会経済生産性本部の「公共施設事業評価検討委員会」での検討では、保育所事業の官民コスト比較で自治体によって違いはあるものの、民間に委託すればコストは50%以下になり、しかも保護者による満足度調査でも官による場合と有意な差は見られなかった。その後の保育園民営化の動きをみれば、市場化テストが高品質で低コストのサービス提供にいかに重要であったかが理解できよう。
 市場化テストではコストの算定が欠かせないため、原価計算の知識がなくても結果が出せる原価算定のツールが必要となる。そのコスト算定と比較・分析のために用いられてきたのがABCだ。これを活用するには使い勝手の良いソフトウェアが不可欠だが、わが国でも数年前にようやく本格的なパッケージ・ソフトが開発されたのに加え、一昨年には公共専用の簡易ソフトも完成した。今後、市場化テストはこれらのツールに支えられながら広く普及するものと期待されている。その有効性は、経済産業省「行政サービスの外部委託に関するビジネスプラン研究会」報告書でも実証されているので、関心のある方はご参照いただきたい。



バックナンバーへ戻るspacer新風トップへ