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特集タイトル


2001年に策定された「e―Japan戦略」も2005年末で目標年次を終了し、電子自治体もいよいよ具体的な成果が問われるようになった。そして新たな年を迎え、今後5年間を見通す「IT新改革戦略―ITによる日本の改革―(案)」も明らかになった。「世界一、便利で効率的な電子政府・電子自治体の実現」へ――地方公共団体の次なる挑戦が、いままた始まろうとしている。



 2006年1月。今後、5年間の新しいIT戦略が策定されようとしています。2001年に策定された「e―Japan戦略」の次を担う戦略です。現段階の案についてご紹介するととともに関連情報を提供させていただきます。今後、2006年1月6日までにいただいたパブリック・コメントの内容を踏まえて、1月中旬のIT戦略本部で最終的な戦略策定がなされる予定です。本稿が、今年、みなさんが初めの一歩を踏み出すきっかけになればと思います。


2001年e―Japan戦略始動

 国のIT政策の基本となる「e―Japan戦略」。これが始動した2001年当時、インターネットの普及など、日本のIT革命への取り組みは諸外国に比べ大きな遅れを取っていました。その遅れが将来取り返しのつかない格差を生み出しかねないという危機意識から、これまで約5年の間、さまざまな制度改革や施策を集中的、継続的に実施してきました。
 「2005年に世界最先端のIT国家となる」ことを目指して策定された「e―Japan戦略」を受け、地域網の開放などの公正競争政策や民間の積極的な新規参入、料金引き下げ努力などがなされました。
 この結果、「高速、超高速インターネットの利用可能環境整備」の目標を早期に達成し、また、通信料金は世界的にも最も安価な水準になるとともに、通信速度も世界トップクラスのサービスを提供するまでになりました。インターネット人口普及率も60%を超え、行政手続のオンライン化の実施、公的個人認証基盤、納税の電子化の運用開始など、ITの利用・活用の面における整備も進めてきました。
 2003年7月には、「e―Japan戦略II」が策定され、これまでに培われた基盤の上で、ITを利用・活用することにより、「元気・安心・感動・便利」社会を目指すとしたうえで、国民に身近で重要な7つの分野(「医療」「食」「生活」「中小企業金融」「知」「就労・労働」「行政サービス」)において先導的にITを利用・活用することによって、社会的に大きな効果が期待できるとされたところです。
 また、2004年2月には「e―Japan戦略II加速化パッケージ」が策定され、2005年の目標達成に向けて政府が重点的に取り組むべき5つの分野(「アジア等IT分野の国際戦略」「セキュリティ(安心・安全)政策の強化」「コンテンツ政策の推進」「IT規制改革の推進」「電子政府・電子自治体の推進」)が示されました。
 この間、2003年8月には、「e―Japan戦略II」に基づき戦略の達成状況を評価する機関として、IT戦略本部に「評価専門調査会」が設置され、事後評価体制の整備が図られました。

2001年e―Japan戦略始動

 「e―Japan戦略」の5年間に、ブロードバンドインフラの整備と利用の広がり、高機能の携帯電話の普及、電子商取引の環境整備とその飛躍的拡大などについて日本は世界最先端を実現しました。また、この過程を通じ、民と官の協力体制やIT戦略の評価体制の確立といったIT化の推進メカニズムの構築にも大きな成果を上げ、日本を、世界最先端に追いつく局面から、21世紀のIT社会の構築において世界を先導する局面へと導きつつあります。日本はインフラ整備においても利用者のレベルにおいても世界最高水準となり、最先端のIT国家となりました。


 一方で、行政サービスや、医療、教育分野等でのIT利用・活用における国民満足度の向上、地域や世代間等での情報活用における格差の是正、セキュリティ対策や防災・災害対策の促進、企業経営におけるITの活用や産業の国際競争力の強化、国際貢献等について、依然として課題が存在しています。


 現在策定中の新しいIT戦略は、大きく3つの基本理念に基づいています。
(1)構造改革による飛躍
 これまでのIT戦略では、まずはIT基盤の確立と機器の普及に力点が置かれていましたが、今後はITの利用・活用の高度化を目指し、そしてさらにITの持つ構造改革力を生かした日本社会の改革という段階へ大きく踏み出していく必要があります。
 21世紀の日本社会が抱える社会的課題は、例えば少子高齢化や環境問題など、少なくありません。こうした課題に対してITを生かして積極的に取り組み、ITの構造改革力で日本社会の改革を推進することが重要です。
(2)利用者・生活者重視
 ITはその先端性ゆえに技術先導になりやすいところがありますが、IT戦略の策定にあたっては利用者・生活者の視点を基本とすることが極めて重要です。ITが利用者にとって、意識して利用するものから空気・水のように意識することのない使いやすさを備えたインフラとなること、すなわちあらゆる分野においてITが利用できることで生活者としての利便性が高まり、効果を実感できることが望ましいと考えられます。


(3)国際競争力強化・国際貢献
 近年、日本はモバイル、電子タグなどユビキタスネット関連技術において国際的に優位に立っています。これら優位性を核としたIT産業と、業務の効率化にとどまらず、新しい付加価値を創造することが可能なIT利用産業による好循環構造を構築し、IT経営の確立などを通じ、従来のキャッチアップ型ではなく世界を先導するとの考え方に立って、日本の産業の国際競争力を維持・強化する必要があります。
 そして、ITの利用・活用の高度化を実現すべくITの製品やサービスを供給する産業が努力することによってIT供給産業での国際競争力の強化をも図る必要があります。ユビキタスネットワーク社会の実現とそれによる国民的課題の解決を日本が世界に先駆けて実行すれば、その成果の世界への発信が大きな国際貢献ともなると考えられます。


 現在、策定中の新しいIT戦略の中から、主として電子自治体関連の記述についてご紹介します。
(1)現状と課題
 「行政手続オンライン化三法」の施行を始めとした基盤整備を進めた結果、国の扱うほとんどの手続においてインターネットによる申請等が可能となっています。その一方で、使い勝手が利用者の視点に立ったものとなっていないなどの理由から、国民・企業等による電子政府の利用は進んでおらず、また、住民サービスに直結する地方公共団体の電子化が十分ではないなど、国民・企業等利用者が利便性・サービスの向上を実感できていません。
 今後は、財政の健全化や行政の簡素化・効率化、国民サービスの向上に向け、ITを最大限活用した業務改革、行政改革が必要となっています。


(2)目標
 行政分野へのITの活用により、国民の利便性の向上と行政運営の簡素化、効率化、高度化及び透明性の向上を図ることとしています。
(1)利便性・サービス向上が実感できる電子行政(電子政府・電子自治体)を実現し、国・地方公共団体に対する申請・届出等手続におけるオンライン利用率を2010年度までに50%以上とします。
(2)各府省における情報システム調達・評価体制を整備するとともに、IT戦略本部に政府全体の情報システムに対する評価体制を整備し、さらなる政府全体の業務・システム最適化を図り、効率的な電子政府を実現します。また、地方公共団体においても同様の体制整備を促進することとします。
(3)国・地方公共団体のシステムについて、利用者利便性の向上に配慮しつつ、信頼性・安全性の確保、セキュリティ高度化を図るとともに、我が国の電子行政化を通じ、先端技術の育成、普及を進めます。
(3)実現に向けた方策(主に電子自治体関連)
(1)国民年金・厚生年金の受給権者の現況確認や不動産登記の申請手続への利用をはじめ、法令に基づいて、「住民基本台帳ネットワークシステムの利用・活用」を促進し、2010年度までに各種行政手続の簡素化を実現します。
 併せて、各府省と地方公共団体を接続するシステムについては、原則として「総合行政ネットワーク(LGWAN)」への統合を進め、標準型・共同型システムの利用を推進します。
(2)公的個人認証に対応した「電子申請システム」を、全都道府県においては2008年度までに、全市町村においては2010年度までに整備します。
(3)国・地方公共団体は、「情報システムのデータ標準化」を推進します。また、転居や転出の際の窓口における「各種行政手続きの一括申請」や、地方公共団体間の「防災等の公共サービスの共同展開」を実現するため、情報システムの連携基盤を開発し、2007年度までに標準化を図るとともに、この標準に基づく地方公共団体のシステム改革を推進します。
(4)国・地方公共団体に対する申請等手続のほか、医療・介護・年金等の公共分野において、「ICカードによる安全で迅速かつ確実なサービス」の提供を推進することとし、導入の在り方などについて2007年夏までに検討を行い、結論を得ます。
(5)2006年度早期に、各府省においては、各府省情報化統括責任者(CIO)の下で、CIO補佐官の支援・助言等を得て、府省内の情報システム企画、開発、運用、評価などの業務について責任を持って統括する体制(プログラム・マネジメント・オフィス/PMO)を整備し、弾力的な執行が可能となる予算計上、戦略的な情報システム調達を行います。
 また、各府省において、情報システムに精通し、業務改革を推進する内部人材の育成を各府省統一的な研修の実施などにより計画的に進めます。さらに、人材育成や共同化の推進等により、地方公共団体の体制整備も促進します。
(6)高度で安全な電子行政の推進に向け、今後開発することが必要と考えられる技術について検討を行い、この検討結果を踏まえ、官民連携により必要な技術開発を推進します。
(4)主な評価指標
(1)申請・届出等におけるオンライン利用率
(2)情報システム関係経費の削減効果、業務処理時間・定員の削減効果
(3)公共サービスにおけるICカードの導入状況と、これを用いた公共サービスの向上の状況


(1)まず、我が身を振り返る
 総務省と財団法人地方自治情報センター(LASDEC)では、2005年12月8日、市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費などの調査について、速報値を公表したところです。各市町村における28の主な情報システムに係る経費について、自団体と類似の人口、産業構造の団体と全国的に比較検証することができます。
 原則として、すべての市町村から回答をいただいています。これまで、ともすれば周辺市町村のみとの情報交換や関連企業からの情報収集のみで自団体の位置づけを図ってきた市町村にとって画期的なデータベースとなっています。
(2)業務改革への一歩
 情報システム改革は、情報担当部署だけではできません。総務省が実施している「自治体EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)事業」を見てもわかるように、埼玉県川口市では岡村幸四郎市長以下すべての部長・課長、業務担当者まで延べ800名が業務分析に参加し、全庁的にシステム改革に取り組んでいます。組織の縦割りを打破し、業務と情報システムの全体最適を実現できるよう、今後総務省が示すガイドラインや参照モデルをぜひご活用ください。
(3)共同化・標準化への一歩
 総務省、LASDECが2003年度から取り組んできた「共同アウトソーシング事業」。モデルシステムがLASDECのプログラムライブラリから無償でダウンロードできます。
 電子申請、財務会計、文書管理などのシステムだけでなく、兵庫県西宮市で阪神淡路大震災に被災した経験を生かした「被災者支援システム」も登録される予定です。このシステムは阪神淡路大震災での被災経験をもとに職員自らが開発したもので、最近の水害時にも利用された実績があります。地震や台風などの災害発生時に、被災者に対して被災者証明や家屋罹災証明を発行したり、義援金や生活支援金給付を管理するといった、自治体職員の業務を支援するシステムです。周辺市町村と共同利用することで経費を大幅に軽減することができます。ぜひご活用ください。

プロフィール
細田 大造(ほそだ だいぞう) 1971(昭和46)年、東京都生まれ。東京大学法学部卒後、自治省(現総務省)入省。大臣官房総務課、財政局財政課、行政局振興課を経て、94年静岡県庁、00年三重県庁へ。04年4月総務省自治政策課の電子自治体推進担当に。04年6月から内閣官房情報通信技術担当室主幹を併任。著書に『ゼロから始める政策立案』『自治体モバイル戦略―ケータイがつなぐ人と地域ユビキタス社会へ向けて』



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